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市では、平成23年度から、誰もが地域で安心して暮らせる地域づくりをめざし、判断能力が不十分な人の生活を支える「市民後見人」の養成・活動支援に取り組んでいます。
近年では、超高齢社会などの影響から「成年後見制度」の利用が年々増加しており、今後も増加が見込まれています。
今号では、「成年後見制度」について、そして成年後見制度の担い手「市民後見人」の活動について、座談会形式で生の声を交えながら紹介します。
問合せ 福祉政策課地域福祉推進担当電話:072-423-9467ファクス:072-423-8686
「最近、物忘れがひどくて同じものを何度も買ったり、キャッシュカードの暗証番号を忘れたり…お金の管理やいろいろな手続きに自信がない」「普段のお金の管理は自分でできるが、契約や市役所の手続きは難しいから手伝ってほしい」「子どもに障害があり、私たち親が亡くなった後のことが心配」…。こんなときは「成年後見制度」が利用できます。
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分で、自分自身で契約などの法律行為や財産管理を行うことが難しい場合に本人の状態に合わせて、家庭裁判所から選任された成年後見人などが援助をする制度です。成年後見人は、本人の意思を尊重しながら生活状況や心身の状況などを考慮し、本人に代わり福祉サービスの利用などの契約や財産管理を行うことで、本人の生活や財産を守ります。
成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つの制度があり、既に判断能力が不十分な人が利用する法定後見制度は、その判断能力の度合いにより、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれます。まだ判断能力が十分あるうちに将来に備えておくのが任意後見制度です
成年後見人などには、本人の配偶者、子、孫などの親族から選任される「親族後見人」、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職から選任される「専門職後見人」、そして、所定の養成講座を受け、成年後見制度に関する一定の知識や技術、姿勢を身につけた人から選任される「市民後見人」がいます。
市民後見人の活動内容は、財産管理や身上保護(本人宅への定期訪問、介護サービスなどの契約・変更に係る手続きなど、本人が安心して生活できる環境を整えること)で、地域福祉活動として無報酬の後見活動に取り組んでいます。担当する被後見人は1人で、活動期間は基本的に被後見人が亡くなるまで続きます。日々の活動が円滑に行えるよう、市や社会福祉協議会、専門家(弁護士や司法書士、社会福祉士など)が連携し、サポートしています。
市では、成年後見制度利用促進計画に基づき、成年後見制度を必要とする人が安心して制度を利用できるよう、地域で支える体制を構築する地域連携ネットワークの中核機関として「岸和田市成年後見センター」を令和4年4月に開設し、岸和田市社会福祉協議会に委託して事業を実施しています。
制度の仕組みや利用手続きに関する相談、申し立てに関するアドバイスなど、気軽にお問い合わせください。
問合せ 岸和田市成年後見センター(野田町1丁目 opsol福祉総合センター内)電話:072-439-8241ファクス:072-431-1500
現在活動中、そして活動を終えられた市民後見人の皆さんから、市民後見人になろうと思ったきっかけや後見活動について話していただきました。
菖蒲直美さん
令和5年5月から活動開始。
濱谷泰文さん
平成29年11月から活動中。
辻栄子さん
仕事をしながら昨年4月まで約6年間活動。
辻 職場の異動で福祉関係の部署に配属になったんです。福祉関係は初めてで、もっと勉強して知識を得たいと思っていた時に、広報紙に市民後見人養成講座の案内が載っていて応募しました。
濱谷 サラリーマンを60歳で定年退職後、障害者施設でアルバイトをしました。母親と二人暮らしの知的障害者と接する中で「もしお母さんが亡くなったら、この子はどうなるんやろう」と心配になりました。そんな時に市民後見人のことを知り、これなら自分でもできるんじゃないかと養成講座を受けたのがきっかけです。
菖蒲 私は介護老人保健施設や障害者施設の生活支援員をしています。働いている中で市民後見人養成講座の案内を見て、そんなに離れた世界ではなかったので、自然な形で「受けてみよう」となりました。
濱谷 私が担当している人は、自分から話すタイプではないので、話を繋ぐのが大変です。はい・いいえで答えられる質問ではなく「何がしたい?」「何が食べたい?」と本人の言葉が聞けるような質問の仕方をするよう心掛けています。
辻 私が担当した人は、高齢の無口な男性で、まず顔を覚えてもらうことから始めました。どうしたらコミュニケーションがとれるのか、本人のやってほしいことを聞き出せるのか、日々必死でしたが、だんだんコミュニケーションがとれてきて、私や家族のことまで気遣ってくれるように。身内に近い存在になれたと感じて嬉しかったですね。
濱谷 「無報酬で活動できるエネルギーはどこからくるのか」とよく聞かれますが、青少年指導員や民生委員の経験から、ボランティアには何の抵抗もありません。ボランティアの方がざっくばらんに被後見人と会えますし、ど素人ですから(笑)。日々勉強させてもらっています。
辻・菖蒲 本当にこちらがお金を払わないといけないくらい(笑)。これでお金をいただいたらできません、プレッシャーになります(笑)。同じ目線で対等にお話できるのがいいんです。
濱谷 講座で学ぶのは、福祉・介護・認知症など生活に役立つことばかり。自分も認知症になるかもしれないし、家族や周りの人がなるかもしれない。今、知人が認知症になり、自らの経験が役立っているのを実感しています。後見人をしているおかげで、今すべきこともわかるし、今後どうなっていくのかも想像がつきます。将来、必ず役に立ちますよ。
辻 被後見人が亡くなるまで活動を続けることに自信がなく、一歩を踏み出せない人がたくさんいると思いますが、体調不良になったら交代もできます。大阪府社会福祉協議会、岸和田市社会福祉協議会もしっかりサポートしてくれます。言えるのは「やってよかった」の一言です。仕事をしながら、限られた時間で忙しい時もありましたが、被後見人さんにはパワーをいただきました。
菖蒲 今日、書類を家庭裁判所に出してきたんですが、書類は大阪府社会福祉協議会、岸和田市社会福祉協議会がチェックしてくれますし、心強い専門相談もあります。私も「これは私がしてはいけない」とか「これはしてあげてもいい」などの判断を見直しながら一歩ずつ進んでいこうと思います。
濱谷 私のような高齢者が元気に毎日を送る秘訣は「今日も行くところがある」「今日も用事がある」こと。自転車で活動するのも自分の健康管理になっていて、被後見人さんには感謝しています(笑)。
受任者功労表彰式にて表彰を受ける辻さん
定期開催される専門相談(右奥 菖蒲さん)
元気に自転車で活動する濱谷さん
皆さん、笑顔が輝いています
社会福祉士
小尾智恵子さん
私たちのような所謂専門職後見人も、定期的に被後見人宅を訪問するよう心掛けていますが、なかなか頻繁には会えません。その点、市民後見人は週に1回と頻繁に会っているからこそ、親族に近い関わりで信頼関係が築けます。市民後見人にしかできない活動で、その人の生活を支える重要な役割を担ってくれていると思います。成年後見制度は、市民後見人あっての制度。「やってよかった」と思ってもらえるように、社会福祉士の立場で、身上保護などきめ細やかにサポートします。
大阪府社会福祉協議会
権利擁護推進室長
堤添隆弘さん
弁護士や司法書士、社会福祉士が常に活動に関わっています。専門家によるサポートは、市民後見人の皆さんにとって非常に頼りがいがあると思います。実際、後見人経験者の専門家の助言は説得力がありますし、皆さん「よくわかる、安心する」と仰っています。
手厚いサポートで支えますので、安心して後見活動に取り組んでほしいと思います。
岸和田市社会福祉協議会
事務局次長
大川浩平さん
制度を必要とする人が年々増える中、後見制度の支え手として、また、地域福祉活動の担い手としても、市民後見人は貴重な存在です。皆さん、身近な地域住民の立場で、丁寧にきめ細やかに活動されていて、それがまさに市民後見人の強みです。
被後見人に寄り添い、楽しみながら後見活動している市民後見人を見ていると、そういう人をきっちりサポートし、また新たな市民後見人を育成して活動できるように繋げていくことが私たちの役目だな、と感じています。
「市民後見人養成講座」(9月~翌2月開催)を受講するための事前説明会です。市民後見人に興味のある人、市民後見人の活動報告を聞いてみたい人は、ぜひ参加してください。
日時 6月29日(土曜日)午前10時~正午
場所 opsol福祉総合センター(野田町1丁目)
問合せ 大阪府社会福祉協議会権利擁護推進室 電話:06-6764-7760