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あなたや家族が「がん」になったときのことを考えたことはありますか。
今号では、市立岸和田市民病院のがん治療と、患者と家族のための「からだ」と「こころ」のケアやサポートについて、がん患者の声を交えて紹介します。
問合 医療マネジメント課 電話:072-445-1000(代表) ファクス:072-441-8820
市立岸和田市民病院
「もしも、がんになったら…」と、考えたことはありますか。日本人の2人に1人が、一生のうち一度はがんになると言われています。がんは、誰でもかかる可能性がある身近な病気です。だからこそがんについて知り、備えることが大切です。
市立岸和田市民病院では、がんに関する情報や最良の治療を提供するため、日々がん診療に取り組んでいます。安心して検査が受けられるように、各分野の専門医が常勤し、最新機器を備えています。がんになった時、困った時、気軽にご相談ください。
市立岸和田市民病院は国指定の「地域がん診療連携拠点病院」に指定されています。地域の医療機関と連携し、がんの専門的医療の提供や、診療に関する相談などに応じ、必要な情報を提供しています。
また、「がんゲノム医療連携病院」にも指定されており、「がんゲノム医療拠点病院」である近畿大学病院と連携し、泉州地域におけるがんゲノム医療の充実を目指しています。
日本に多い8大がん(大腸がん、肺がん、胃がん、乳がん、前立腺がん、肝がん、胆道がん、膵臓がん)に対する手術治療を行える体制を整えるほか、脳腫瘍や口の中のがん、顔や首のがん、泌尿器のがん、婦人科のがん、皮膚のがん、血液のがんなど、全身各部位のがんの治療を行える、泉州地域では数少ない病院のひとつです。2022年には、最新鋭の内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチXi」を導入し、従来不可能とされていた繊細で緻密な手術が可能となりました。
ダヴィンチXiの手術の様子
ダヴィンチXiを遠隔操作する様子
手術や投薬、放射線などの身体への直接的治療だけではなく、がん告知による精神的ショックや、抗がん剤治療による副作用のつらさを緩和することも、治療継続のために重要です。
緩和ケアは「からだ」と「こころ」のつらさを和らげる医療です。がんの診断時から開始し、治療中や治療終了後、終末期を通じて行われる医療と考えられています。患者と家族の考え方やライフスタイルを尊重し、対話しながら「からだ」と「こころ」の苦痛症状の緩和を優先するケアと治療を提供しています。
また院内には、がん相談支援センターを設置しています。がんに関する症状や治療、薬剤、検査、介護、検診、医療費の支払いなどの様々な悩みや疑問にお答えします。相談は匿名でも可能で、費用は無料です。ご自身や家族のがんに関する悩みを気軽にご相談ください。
2019年には、「信頼性の高い情報を見極め、患者と家族を支援する力」が認められ、国立がん研究センターから、「認定がん相談支援センター」に指定されました。さらに質の高い相談支援を行えるよう、日々取り組んでいます。
患者と家族を中心に、主治医・看護職・他の医療職などが職種の垣根を超えて連携し、状況に応じた医療を提供します。その結果、疾病の早期発見・早期回復・重症化予防など、医療や生活の質の向上などの効果をもたらしています。
自分自身や家族のがんについて疑問や困りごとがあれば、がん相談支援センターにご相談ください。チーム医療の強みを生かし、病院全体でサポートします。
チーム医療イメージ図
腫瘍内科部長 尾崎智博
がんは遺伝子の異常で起こる病気です。がんゲノム医療は「がん遺伝子パネル検査」とよばれる検査でがん組織を調べ、一人一人の遺伝子の変化に応じた治療を行う医療です。保険診療で行うことができ、標準治療※がない、または終了した場合などに行われます。当院では年間50~60人が検査を受けています。検査の結果、効果が期待できる薬があれば、臨床試験などでその薬の使用を検討します。
今は限られた病院でしか検査できませんが、実施病院が増えてデータが蓄積していけば、新薬の開発につながると思います。
※標準治療…科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる「最良の治療」であることが示され、多くの患者に行われることが推奨される治療。
放射線治療科部長 小倉昌和
放射線治療は身体への負担が少ないのが特徴です。一回当たりの治療時間は15分~1時間程度で、照射時の痛みはなく、レントゲンを撮っているような感覚です。病状によっては通院治療を受けることも可能で、個人のライフスタイルを保ったまま治療ができます。
当院は、ミリ単位の調整や形状に合わせて照射する高精度な技術を持ち合わせています。また、今後は最新装置を導入予定で、治療時間の短縮が見込まれることから、より負担の少ない治療が可能となります。
質の高い治療を、地域の皆さまに安全・確実に提供できるよう、今後も日々努力していきます。
放射線治療装置
緩和ケアセンター長/緩和ケア内科部長 川島正裕
緩和ケアでは、「からだ」や「こころ」のつらさを和らげるお手伝いをします。「治療をあきらめた時から行うもの」とイメージされがちですが、そうではありません。治療の早い段階から緩和ケアを始めた方が効果的と言われています。相談しやすい環境と雰囲気づくりが大切で、医師だけではなく看護師との相談も可能です。また、患者さんだけではなく、ご家族にも提供します。
患者さんとご家族の気持ちを第一に考え、つらいことだけではなく、大切にしたいこと、叶えたいことを共有するために、まずはお話しください。より良い生活を送るためのお手伝いをします。
緩和ケア病棟 食堂・談話室
緩和ケア病棟 個室
緩和ケア病棟へのお礼の手紙
がん相談支援センター医療ソーシャルワーカー 咲花彩
がん相談は無料で、当院がかかりつけでなくても利用でき、秘密は厳守します。治療や費用、仕事、生活全般のことまで「がん」に関するどんなことでも相談できます。対面や電話、電子メールなどで対応が可能です。患者さんからは、主治医には聞きづらいこと、職場などへの伝え方など、ご家族からは、どのように患者さんを支えるかなど、多くの相談が寄せられます。院内外の専門部署と連携・協力し、お答えしています。疑問が解決するだけでなく「話すことで気持ちの整理ができて楽になった」という方もいます。
「がんになっても自分らしく暮らせる」その手助けとなるような相談支援を心掛けています。
がん相談支援センター窓口
がん相談支援センター相談員
相談の様子
昨年の10月から主治医の勧めもあって、緩和ケアを受けています。「緩和ケア=余命が長くないのでは…」というイメージを持っていましたが、実際受けてみるとそうではなく、気持ちがすごく楽になりました。患者に寄り添ってくれるので話しやすく、家族には話しにくいことも、先生には話すことができます。また、痛みの緩和についても相談しています。
病気は大変で不安なこともありますが、がんのことをわかっている先生が話を聞いてくれて、私の思いを一緒に考え、共感してくれることがすごくありがたいです。
ホームページで「がん相談支援センター」のことを知り、今年の2月に初めて相談しました。これまで対面と電話、合わせて6回程相談しています。検査の結果に疑問があり相談したときは、主治医にすぐ確認をしてくれて、不安を解消することができました。次回の診察まで疑問を抱えたまま過ごすのではなく、不安をすぐに解消できたことで穏やかに過ごすことができました。
がん相談支援センターは、病気に対する治療を行うわけではありませんが、話を聞いてくれて「人生のフォローをしてくれる」そんな存在だと思います。
相談はこちら 電話:072-445-1000(代表)
※「がん相談」とお伝えください。
がんセンター長 横見瀬裕保(市立岸和田市民病院長)
2人に1人はがんになると言われている時代に、実際にがんになったとき「どうしたらいいのか」「どこに行けばいいのか」などの不安を解消するため、今年5月、ホームページ上の組織である「がんセンター」を開設しました。ここを訪れると、がんに関する情報を一括で知ることができます。
がんセンターは病院のものではなく、患者さんのためのものです。利用される方の意見を聞き、今後さらにわかりやすく、便利になるよう育てていきます。