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平成28年度工事監査の結果(岸和田市立新福祉総合センター新築工事)

記事ID:[[open_page_id]] 更新日:2017年3月14日掲載

第1 監査の対象

岸和田市立新福祉総合センター新築工事

予算所管部課  保健福祉部福祉政策課

契約担当部課  総務部契約検査課

工事担当部課  建設部建築住宅課

第2 監査実施日

平成29年2月8日(水曜日)

第3 監査の方法

平成28年度に施工している工事のうち、設計金額が2,000万円以上の中から内容等を勘案のうえ、監査対象を抽出し、設計図書、関係図書等の書類調査と現場調査を関係職員立会いのもと説明聴取を受け実施した。

なお、監査の実施にあたっては、専門的な知識を必要とするため、公益社団法人大阪技術振興協会に工事技術調査業務を委託し、派遣された技術士による工事技術調査結果報告を参考に、総合的に判断する方法で実施した。

第4 工事の概要

1  工事場所 

岸和田市野田町地内

2 工事請負業者

岩田地崎・矢野特定建設工事共同企業体

3 設計委託業者

株式会社梓設計大阪支社

4 工事請負金額

2,037,960,000円(設計金額 2,254,862,880円)

5 落札率(工事請負金額/設計金額)

90.38%

6 工事期間

平成28年3月4日から平成29年6月30日まで

7 工事監督員

建築住宅課職員

8 工事の内容

(1) 規模 

敷地面積  17,414.02平方メートル

建築面積  2,826.82平方メートル

延べ面積  7,170.03平方メートル

(2) 所要室等 

職員室、遊戯室、保育室、作業療法・理学療法訓練室、保護者控室、集団言語放課後対策室、作業室、ST室、処置室、診察室、医務室、静養室、調理室、管理室、事務室、所長室、相談室、活動室、市民活動サポートセンター、視聴覚情報・図書室、録音室、研修室、浴場、浴場脱衣室、アリーナ更衣室、アリーナシャワー室、医務室、屋内運動場、大会議室、娯楽室、講座室、調理室、和室、交流室、会議室、諸芸室、工作室、就労指導相談室ほか

駐車台数82台、身体障害者用4台

(3) 構造 

鉄骨造及び鉄筋コンクリート造 地上3階建、一部地上4階建

9 工事進捗状況

実施出来高 53%(平成29年2月8日現在)

第5 監査結果

当工事は、地域の福祉の総合的な拠点として計画された高齢者や障害者、障害児が利用する複合施設の新築工事である。

技術士による書類調査及び現場調査に立ち会って確認をしたところ、書類調査では、設計図書、工事請負契約、建設計画全般、施工監理及び施工管理について、総括的に良好であると判断した。

現場調査では、技術士から品質事項として注意や提言があった防水・漏水対策等については、十分に考慮して工事を進められたい。

なお、監査当日における工事の進捗状況は、鉄骨製作の遅れにより、予定出来高に比して低い状況にあったので、今後、工事を進めるにあたり、工事関係者等との十分な連絡調整・確認を行い、市民の期待する施設として工事の完成に向けて努力されたい。

第6 調査の内容

技術士による工事技術調査結果報告書の主な内容は、以下のとおりである。

1 施設の建設計画について

既存の岸和田市立福祉総合センターは、昭和48年に開設されたもので約40年使用されており老朽化が著しく、建替えは喫緊の課題となっていた。平成22年度に行った福祉総合センター敷地活用に向けた予備調査で、センターの建替えと敷地活用を一体的に行うことが困難であることが報告されたことにより、平成24年度にセンターの建替えを当地で実施すること、併せてファシリティーマネジメントの考え方により、障害児通園施設や勤労者・障害者教養文化体育施設も当地へ移転・統合し複合施設として建設することを庁内で決定している。

これを受けて、平成25年度に基本計画を策定、平成26年度からは国土交通省の補助採択を得て基本設計及び実施設計に着手、平成27年12月実施設計図書の完成により、平成28年3月に着工している。

なお、工事費用は、老人福祉施設に対する国土交通省の補助金が50%(約6億3千万円)、地方債として公共施設最適化事業債が残りの90%、その他大阪府の貸付金を利用している。

施設の計画としては、利用対象者である高齢者、障害者など既存の施設の利用状況をもとに、1日の利用者数を400人、年間12万人と想定している。岸和田市の人口はほぼ横ばいである。他の自治体の施設として、堺市立健康福祉プラザ等を参考にしたとのことである。

2 書類調査について

(1) 設計図書、特記仕様書等に関して

ア 構造計画について

基本的に鉄骨造3階建のラーメン構造であり、南テラス棟においても1階がRCラーメン構造、2、3階部分は柱・壁をRCとし、屋根をグローブジョイントによる平面トラスとするものであり、構造計画としては一般的なものである。

イ 杭について

当地域ではN値50以上の支持層となる5m以上連続する砂礫層が深さ50m以内に存在しないため節杭を用いて摩擦力にも期待した支持力を得ている。

ウ 耐震設計について

保有水平耐力を計算する手法であるルート3により、公共施設でのII類となる重要度係数1.25を満足する設計としている。

エ 環境設計について

C A S B E E(建築環境総合性能評価システム)では、中間値となるBランクとすることが一般的であるが、本施設では建材一体型太陽光発電システム、雨水利用等によりAランクを取得している。

オ シックハウス対策について

計画通知時の仕上げ表により建築材料を確認しているほか、使用材も材料承認にあたりカタログ等により性能、化学物質、アスベストの有無を確認していく予定という。V O C(揮発性有機化合物)についても工事完了後に居室14室の測定を予定している。

カ 設計図面の意匠図、構造図、特記仕様書とも必要枚数、記載内容とも問題なく、詳細についても質疑回答や打ち合わせ記録の照合により問題はないと判断した。

(2) 積算等に関して

ア 数量積算者は委託設計者の株式会社梓設計大阪支社であった。

イ 積算の基準は下記の通りであることを確認した。

建築積算研究会制定「建築数量積算基準・同解説」【平成23年版】

ウ 値入れは委託設計事務所が行い、建築住宅課担当者が見直しをしていた。単価や分掛は市販の刊行物により、市の担当者による見直しを行っている。上記での資料に単価が記述されていないものについては業者見積りをとり、最低のものに低減率をかけたものを採用しているとのことであった。

建物延べ面積に対する単位面積当たりの単価は、同種物件実施事例との比較検討の結果では、堺市立健康福祉プラザで約30万円/平方メートル(延べ面積約18,000平方メートル)、株式会社梓設計での他の事例で約32万円/平方メートルのものがあるということである。

当施設では約29万円/平方メートルであり、機械設備工事、電気設備工事、昇降機設備工事、外構工事を含めたものとしては、建物用途、仕上げのグレードなどを考慮しても妥当なところと思われる。

(3) 入札及び契約関係等に関して

ア 入札参加業者の見積り期間について

平成27年11月24日(設計図書配布日)の翌日から、平成28年1月12日(入札日)の前日までの48日間(うち土日祝17日間)であった。

イ 質疑状況及び落札者について

質疑は4社から13件出されていた。なお、入札では5社が応札し、岩田地崎・矢野特定建設工事共同企業体が落札者となった。

ウ 監理技術者と主任技術者の資格について

監理技術者資格者証、一級建築士の免許証の写しを確認した。

エ C O R I N S(工事実績情報提供システム)の提出について

写しが保管され、適正であることを確認した。

オ 前払金保証及び工事の履行保証について

前払金保証については、東日本建設業保証株式会社の保証証券を、履行保証については、三井住友海上火災保険株式会社の保証証券を確認した。

カ 建設業退職金共済について

工事請負者が建設業退職金共済の証紙を購入しており、領収書を確認した。

キ 設計変更について

設計変更はその都度書面で確認されており、変更契約を行う予定とのことである。

(4) 施工管理・品質管理・施工監理等に関して

ア 施工計画書について

総合施工・仮設計画書、各種工事に関する個別施工計画書が作成されていた。基礎工事について、当工事で採用されている節杭の支持力確認方法に関する計画書について質問したところ、建築センター認定証、カタログ、実績、立会い記録や写真も整備されていた。

その他の計画書も、内容確認及び審査済の手続きは適正に行われていた。

施工計画書のデジタルデータの利用が行われる結果、特有の施工管理上の個別具体的な注意点が特記されない傾向があるが、当工事において、仮設計画図などに具体的な受電電力や使用機械の記入を行うなど、固有の具体的な確認事項や注意事項の表現がなされていた。

イ 使用材料について

躯体工事使用材料及び仕上げ工事材料の確認は、カタログ試験成績表等により行うほか、完了した躯体工事、鉄骨工事における納品書、証明書の確認も適正に行われていた。

ウ 実施工程表について

実施工程表にはクリティカルパスは表示されていなかった。当工事では実質的に鉄骨工事がクリティカルであるところ、鉄骨の納期が遅れてしまったために現場の工程を詳細に管理しなければならない。

ただし、仕上げ材などの外注製作物の作図、承認、製作の期間は工程表に表示されているので、予定通りに搬入取付けが行われれば、最終工期に間に合うと思われる。

予定出来高に達していない点について、屋根工事、外装工事で雨天による遅延が心配されるが、工期は6月30日までであり、工期内完成は可能と思われる。

エ 建設副産物の扱いについて

「運搬収集・中間処理・最終処分」の契約、再生資源利用計画書の作成、マニフェストの整備もされており、適切であると判断した。

オ 施工体系図について

適切に掲示されていた。

カ 工事監理・監督について

工事監理は建築住宅課の直営により行われ、監理業務分掌区分は、委託設計事務所による建築工事、機械設備工事、電気設備工事で明確に区分されていた。

共通仕様書は、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「公共建築工事標準仕様書 平成25年版」としていた。

施工業者から、月間工程表及び週間工程表などの提出を受け、工程監理を行っていた。工程会議として、毎週木曜日13時30分から各施工業者、工事関係者、市担当者が出席した工程会議が行われ、議事録も整備されていた。毎月最終木曜日は総合定例会議とし、月末には監理受託者の株式会社梓設計の担当者が押印した監理業務報告書が提出されているのを確認した。

施工業者への指示書・連絡書、試験・検査などの段階確認の立会い記録・写真などもこれまで良好に保管・整備されている。

キ 特記仕様書に記述されている個別の工種工事の監理について

(ア) 仮設工事

官庁提出書類を確認したが問題はなかった。労働安全衛生法第88条第1項の届出は、支保工、足場、工事用エレベータの設置届が滞りなく提出されていた。総合仮設計画図において、進入路、仮囲い、仮設建物、足場、揚重設備、仮設電気の引き込み、給排水の計画なども不足なく記述されていた。建物位置、設計GLの確認状況の写真を確認したが、問題はなかった。

(イ) 土工事

掘削土は、阪南2区公共処分地に場外搬出するものであった。掘削深さは2.5m程度で、山留め工事については、オープンカットであり当工事での該当はない。土壌調査も実施しており問題はないということである。

(ウ) 地業工事

既成コンクリート節杭を利用し、先端支持力及び摩擦力により上部荷重を支持するものであるが、支持力確認方法は認定書による手順に従い電流計、掘削地層を確認することが主になっており、施工計画書、報告書、帳票、立会確認記録、写真も適正に整備されていた。

一般に、支持杭であっても中間での摩擦力が大きく影響するので、支持力は保持されるであろうが、心配であるならば載荷試験を実施するのが確実であろう。

立会い記録、確認状況から杭工事に問題はないと判断する。

(エ) 鉄筋工事

鉄筋材料証明書、入荷札及びロールマーク確認写真より材料が適正であることを確認した。

圧接作業者の技量証明書、圧接部の超音波探傷試験及び抜き取り試験結果より圧接部の品質が適正であることをコンクリート打込み前に確認していた。

配筋検査は、施工業者、担当者、配筋検査の検査員の3段階の検査(トリプルチェック)が行われ、検査記録・写真ともに整備されていた。

柱、梁断面での最小鉄筋比について質問したが、主筋の0.8%、せん断補強筋の0.2%はともに問題はなかった。

(オ) コンクリート工事

配合報告書と設計図書を照合し、適正であることを確認した。設計基準強度と調合強度との補正値における、強度割り増しS値の扱いについて、適切に管理されていた。単位水量は185kg/立法メートル以下であった。生コンの試験書類及び立会い記録写真、打ち込み状況の写真、強度試験結果などは適正に保管整備されていた。圧縮強度は全て満足していた。試験結果については整理中である。

豆板補修の記録・写真もあった。是正方法は、監理指針によりなされたとのことである。QC手法によるPDCAのサイクルを考慮し、発生位置、状況、補修や再発防止などの是正・改善を記録することにより、品質が向上していくという意味で、記録に残し予防処置を施すことは大切である。

(カ) 鉄骨工事

鉄骨製作工場の能力・グレードについて質問したところ、柱はHグレード(国土交通大臣認定 TFBH-120264)の福栄鉄工株式会社、梁はMグレード(国土交通大臣認定 TFBM-161972)の有限会社ミコワテックの認定証が確認できた。南テラス棟屋根の平面トラス鉄骨は太陽工業株式会社のグローブジョイントを用いたもので、特許により日本で数社のみが施工する工法であり、認定は問題とならない。

工場での品質管理記録や製作時の品質管理記録、工場製品検査記録も整理されていた。ダイヤフラムの使用材料のSN490Cのトレーサビリティーについて、納品書、ミルシート、材料検収写真を整理しておくことを提言した。

アンカーボルト埋め込み(ハイベース工法)に関する施工記録、ベース下モルタルの施工精度確認もなされていた。鋼材、ボルトなどのミルシートも整理されていた。

高力ボルト接合部の摩擦係数について、接合面での発錆状況が確認できる記録(所要の摩擦係数があること)を整理することを提言した。

材料確認、工場製作、現場組立・接合、耐火被覆などについて大きな問題はなかった。

(キ) A L Cパネル、押出成形セメント板工事

A L Cパネルは、室内エレベータシャフトの壁に乾式ロッキング工法が採用されている。押出成形セメント板は、縦張りECP・ニューセーフティー工法であり、地震時層間変位1/200に対応しているとのことであった。押出成形セメント板の目地には2成分系変性シリコンシールが採用されており、一般的なもので問題はない。

(ク) 防水工事

屋上アスファルト防水においては、工事施工前に

(a) 下地コンクリートで勾配がとれていて、水溜りができないか

(b)  漏水は平場ではなく、ドレイン(排水口)廻りや立ち上がりの端部などから発生することが多いため、下地が防水をしやすい状態になっているか

(c) コンクリート下地で、適切な勾配とドレインの打込みが適切ならば、防水前でもほとんど雨漏りがしないため、そのようなコンクリートとなっているか

を検査確認することが大切である。

当工事では、今後、屋上防水を施工し、押えコンクリートの施工も予定されているが、上記(a)~(c)に注意し、防水施工後水張り試験を行ってドレイン周りの漏水がないことを確認しておくことを提言した。

アスファルト防水、ウレタン防水ともに10年の保証書が提出されるとのことである。

(ケ) 石工事

調査時点では、施工されておらず、特に確認する事項はない。

(コ) タイル工事

調査時点では、施工されておらず、特に確認する事項はない。

(サ) 木工事

調査時点では、施工されておらず、特に確認する事項はない。

(シ) 屋根・外壁及び樋工事

南テラス棟屋根端部では谷樋が設計されているが、大雨のときにあふれて漏水することはないか、夏季の高温による線膨張により、両端の固定及び伸縮継手がないことにより湾曲しないかを質問した。いずれも、今後の施工にかかることであり、施工図において検討するということであった。

(ス) 金属工事

屋外となる部位の天井下地を外部仕様とし、室内でも天井高さが高いところや天井ふところが大きくなるような箇所での地震時の崩壊や落下防止対策が施されているということであった。

屋外での手摺や笠木などで温度差による膨張収縮について質問したが、谷樋と同様に伸縮継手が必要ないかを検討することを提言した。

(セ) 左官工事

書類調査上での特筆事項はない。

(ソ) 建具工事

外部に面する建具についての耐風圧性、気密性、水密性の確認はできていた。重量シャッターでの障害物感知装置の取り付け、開き戸でのドアクローザー、引き戸での引き残しなど、はさまれ事故防止対策を施していた。

(タ) カーテンウォール工事

東西面に、アルミ木複合カーテンウォールが設計されている。地震時の変形、ガラスの破損対策について、層間変位1/200に対応しているということであった。結露についても質問したが、詳細施工図で結露防止を検討しているということである。

(チ) 塗装工事

V O C放散量が少ないF☆☆☆☆の塗料を選定していた。塗料は屋外のプレハブの施錠できる物置に保管予定であり、シンナーの使用後は、持ち帰りとしており防犯、V O C対策とも問題はない。

(ツ) 内装工事

内装材・接着剤について、VOC放散量が少ないF☆☆☆☆のものを選定し、納入時及び出荷証明で確認予定とのことであった。

使用材料審査時にカタログにより、アスベストが使用されていないことの確認を予定しているということであった。

床材でのスリップ事故防止のために防滑性がある材料使用が必要な箇所については、廊下、階段、調理室としているとのことであった。

(テ) その他

天井が高い箇所などの照明器具の球替えが困難となる箇所については、取替期間が10年程度のLED照明器具を使用することで球替え間隔を長くとれるので足場を組むとしても費用的に有利であるとのことであった。

機械設備、電気設備の各工事についての建築工事との関連部分の調整は毎週実施する工程会議で調整を行い記録していた。天井、壁、床などでの点検用開口も調整しているとのことである。

3 現場調査について

行程表による1月末の予定出来高の約62%に対して、実施出来高は47.6%で、2月8日の調査日での出来高は53%であった。これは鉄骨製作の遅れが原因ということである。

6月30日までの工期が心配されるところであるが、工程表によれば、内装工事が5月末で概ね完了する予定であるので、屋根、外装工事を予定通りに行い、足場を撤去するうえで、外注製作物の手配漏れや納期遅れがないことを確認していくこと、隠蔽部の設備工事が予定通り進捗していることの確認などの工程管理が重要である。

現場は、鉄骨工事、躯体コンクリート工事が完了し、南テラス棟屋根を施工中、外壁押出成形セメント板の施工、内部LGS間仕切り下地、耐火被覆、設備スプリンクラー配管の施工などが行われている。鉄骨造建築物特有の煩雑な仕上げ工事が今後始まるので、材料搬入取り込みの計画が重要になってくる。

現場の通路整備や、整理整頓状況は良好であり、日々の安全書類は整備されており、施工体系図の掲示、安全掲示板や朝礼広場も整備されていた。現場での技術調査では以下の事項について提言を行った。

(1) 品質事項

ア 入り口から場内の作業道路は鉄板を敷設しているが、鉄板相互に隙間や段差があると、車両通行時に鉄板の端部が跳ねることや、通行者の足が挟まるなどの思わぬ災害となることがあるので、隙間などに注意が必要であること。

イ クローラクレーンにより揚重をしているが、キャタピラーがあるから任意に移動できるというような計画はせずに、クレーンはなるべく移動させない計画とし、移動のときは計画的にその日の作業開始前や終了後に行うこと。

ウ 防水下地について、屋上庭園部でドレインの位置が溝の底よりも高い箇所があり、防水施工前に溝底に水たまりができるようになっている。前述したようにドレインは溝部の水下よりも低い位置に打ち込まれるべきであるので是正すること。また、バルコニー部でのドレイン打込み状況も水がたまるような状況であるので、是正すること。

エ 防水立ち上がり及び端部の下地について、バルコニー部では鉄骨柱に防水立ち上りを施工することとなっているが、防水層上端部に下地での突起がなく、上部での水切りができないおさまりであるので、検討すること。ほかにも開口部周りや階段出入口などの防水端末、立ち上がりなどの仕舞を検討して施工にかかること。

オ 南テラス棟と他の建屋の境界間でEXP.J(エキスパンションジョイント)が設計されている。RC構造と鉄骨造とで地震時の挙動が異なるのでこのように設計したと思われるが、南テラス棟外壁に控えを設けて金属板を取り付けて上部目地にシールをするおさまりのため、シールが切れた場合にはかなり高い確率で漏水する。また、金物端部からの雨水吹上も心配されるところである。この部位の漏水対策は特に入念に検討し、工事中はもちろんのこと、竣工後も経過観察すること。

カ 屋上設備工事取り合いについて、パラペット立ち上がり部に座板つき鞘管をボルト止めして電線を貫通させているが、このような部位こそ特に注意すべきであること。設備配管立ち上がり小屋からの配管貫通部で漏水することもよくあるので注意が必要であること。

キ 室内3階でのLGS下地を鉄骨に取り付ける際に、耐火被覆岩綿を削り落としている部分の補修、1階など南テラス棟で、室内側コンクリート壁に断熱材発砲ウレタン吹き付けを行った部分での窓額縁取り合いのダメ吹きなど、細かい後施工工事を発生させると後工程が煩雑となり、忘れた結果思わぬトラブルのもととなることもあるので、特に注意が必要であること。

ク 1階入口周りで室内床コンクリートの止めが外部に出ている箇所は、舗装下地に問題はないか、鉄骨柱脚部の錆止塗装をしていない部分での床コンクリートの高さが低くなっているため露出している箇所など、仕上げ下地をチェックすることが必要であること。

(2) 安全設備ほか

ア 場内の安全設備は現在のところ問題はない。今後足場上での作業や屋根上での作業が発生するが、墜落防止や落下物、飛散物には注意が必要であること。

イ 公道に面した入り口にも鉄板を敷設しているので、これも隙間などに注意し、通行人などの第三者がつまずくことなどがないように管理すること。

4 結び

大阪府南部中核の自治体である岸和田市で、既存の老朽化した福祉総合センターを複合施設に建て替える計画であり、建設地も南海本線岸和田駅東側に徒歩数分という立地であり、住民の期待も大きいものと思われる。

今回の技術調査では、鉄骨工事の遅れにより、工期の心配の声をきいたが、工期そのものよりも、無理をすることにより雨漏りが発生する建築物とならないことを重点的に調査した。

建築物は、地震に対して安全であることはもちろん、雨が漏らないこと、建具の建付けに問題がないこと、給排水、電気設備、空調が機能することが必要である。

注意点や提言を述べたのは少なくとも上記の最低限度の性能を確保した建物となり、市民の大切な財産が形成されることを願ううえからである。

今後、かなり忙しい工事となるが、無理、無駄、ムラを排除し、良い建物となることを心から願うものである。


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