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平成29年度行政監査の結果
第1 監査の対象
1 テーマ
防災備蓄品等の管理状況について
2 対象事務
平成28年度事務事業(平成28年4月1日から平成29年3月31日まで)
3 対象部課
危機管理部危機管理課
第2 監査の目的
平成23年3月11日に発生した東日本大震災、平成28年4月14日に発生した熊本地震及び同年10月21日に発生した鳥取県中部地震等により、多くの住民が長期にわたる避難所生活を余儀なくされている。
災害対策について住民の行政への期待感が高まる中、行政はあらゆる想定のもと対策を講じていくことが求められている。防災備蓄品等についてもその対策の一つであり、行政は、災害時における市民の生活を守るため、備蓄品を計画的に整備し、定期的な点検により適切な管理を行い、災害時に備える必要がある。
本市においても、平成27年4月に「岸和田市備蓄計画」を策定し、その中で、公的備蓄の考え方、食料及び生活必需品等の備蓄やその目標量、分散型備蓄倉庫の整備、備蓄品の配送体制等が明記されている。そこで、防災備蓄品等の管理について、その状況を把握するとともに、対象部課における事務の執行が適正かつ効率的に行われているか等について検証し、もって、適正な行政執行の確保と防災力の強化に資することを目的とする。
第3 監査の着眼点
1 防災倉庫は適切に管理されているか。
(1) 鍵の管理は適正か。
(2) 施設の管理は適切に行われているか。
2 備蓄品は適切に管理されているか。
(1) 備蓄・調達計画を定めているか。
(2) 計画に基づき、備蓄品目、備蓄数量が整備されているか。
(3) 備蓄品の機能・品質は確保されているか。
(4) 備蓄食料品の賞味期限は守られているか。
(5) 備蓄食料品の賞味期限を迎えるまでに、市民への防災意識啓発のために使用する等、計画的な管理がなされているか。
(6) 数量管理は適切に行われているか。実査記録は残されているか。
第4 監査の主な実施内容
対象部課から「岸和田市備蓄計画」、平成30年1月5日現在の「災害対策用物資備蓄状況」等の提出を受け、市内に設置している備蓄倉庫11箇所に保管されている品目、数量について、平成30年1月11日及び12日に現地倉庫で実査を行うとともに、第3に記載した着眼点に基づき、証憑突合、帳簿突合、計算突合、質問、閲覧により監査を実施した。
第5 監査の実施場所及び日程
1 調査期間
平成29年12月11日から平成30年1月23日まで
2 監査実施日及び実施場所
監査 | 実施日 | 実施場所(備蓄倉庫) |
現地調査 | 平成30年1月11日 | 岸和田市立春木中学校 岸和田市立保健センター 宮の池倉庫 NTT東岸和田ビル |
平成30年1月12日 | 岸和田市立城東小学校 岸和田市立八木小学校 岸和田市立八木北小学校 岸和田市立桜台中学校 岸和田市立太田小学校 NTT岸和田ビル 岸和田市役所別館 | |
本監査 | 平成30年1月23日 | 監査委員室 |
第6 防災備蓄品等の概要
1 岸和田市備蓄計画について
(1) 計画の策定について
平成23年3月11日に発生した東日本大震災での被害の大きさを踏まえ、本市では、「岸和田市地域防災計画」の見直しを行い、上町断層帯地震を最大の被害想定として平成27年4月に「岸和田市備蓄計画」を策定している。この計画の中で、市の役割として、自助・共助の考え方に基づく市民(家庭・地域)の備蓄による物資の確保についての普及・啓発活動を行うとともに災害発生時に備えた補完的かつ広域的な備蓄・調達体制づくりを行うこととしている。なお、市が行う公的備蓄については、重要物資の備蓄目標量を定め、保存年限等を考慮した計画的な整備を図るとともに、初動期に備蓄物資をより効率的に運搬、配布できるよう分散型備蓄を行っている。
一方で、平成26年1月に大阪府によって公表された南海トラフ巨大地震の被害想定は、上町断層帯地震を大きく上回る広域かつ甚大なものであり、これを受け、大阪府は同年3月に「大阪府地域防災計画」の修正を行うとともに、「新・大阪府地震防災アクションプラン」を策定し、その中で「食糧や燃料等の備蓄及び集配体制の強化」を府民の命を守る重点アクションとして位置づけている。
大阪府と府内市町村は、平成27年5月に「大阪府域救援物資対策協議会」を設置し、同年12月に南海トラフ巨大地震をはじめとした大規模災害時に必要な救援物資の品目や量を定めた「大規模災害時における救援物資に関する今後の備蓄方針について」(以下「備蓄方針」という。)を策定している。備蓄方針の中で、大阪府及び府内市町村の役割分担については、その基本を1対1と定めている。本市においては、上町断層帯地震を最も大きな被害が想定される災害として設定し、備蓄方針に基づき備蓄目標量の見直しを行っている。その結果、備蓄目標量は大きく増加し、現在その整備を行っている状況である。
(2) 備蓄物資の必要算出根拠となる避難所避難者数
想定災害 | 想定被災者数 | 想定避難所避難者数 | 南海トラフ巨大地震による 想定避難所避難者数 |
上町断層帯地震 | 98,411人 | 28,540人 | 22,034人 |
※大阪府域救援物資対策協議会「大規模災害時における救援物資に関する今後の備蓄方針について」平成27年12月
(3) 公的備蓄の品目及び目標量について
本市における備蓄品目は、備蓄方針により、食料(アルファ化米、クラッカーなど)、高齢者用食、粉ミルク、哺乳ビン、毛布、乳児・幼児用おむつ、大人用おむつ、生理用品、簡易トイレ、マスク、トイレットペーパーの11品目としている。
また、備蓄目標量については、備蓄方針に基づき、本市の備蓄に対応する期間を、南海トラフ巨大地震については、発災後3日間、上町断層帯地震等の直下型地震は発災後1日間とし、食料、高齢者用食、粉ミルク、乳児・幼児用おむつ、大人用おむつ、生理用品、マスク、トイレットペーパーについては、必要数量の多い南海トラフ巨大地震の対応期間に応じた備蓄を目標としている。物資の必要数量は、想定避難所避難者数から算出し、大阪府と分担し、整備することとしている。
本市の備蓄品目(11品目)の目標量は次表のとおりである。
備蓄品目 | 備蓄目標量 |
食料(アルファ化米、クラッカー、ビスコ) | 113,036食 |
高齢者用食 | 5,950食 |
粉ミルク | 48,123g |
哺乳ビン | 320本 |
毛布 | 28,540枚 |
乳児・幼児用おむつ | 6,611枚 |
大人用おむつ | 1,323枚 |
生理用品 | 6,445枚 |
簡易トイレ | 286基 |
マスク | 595枚 |
トイレットペーパー | 247,884m |
2 備蓄倉庫について
(1) 備蓄倉庫の設置状況について
本市においては、現在、岸和田市役所別館を含む市の施設9箇所と民間施設2箇所に備蓄倉庫を設置している。また、分散型備蓄の拡充のため、中学校区単位で1箇所の備蓄倉庫の設置を順次進めている。さらに平成30年度には、建替えにより備蓄品を一時撤去していた岸和田市立福祉総合センターにも配置する予定である。
また、民間施設のNTT岸和田ビル及びNTT東岸和田ビルについては、施設の一部を災害対策のため、無償で使用する内容の協定を所有者と締結し、食料、生活必需品等の集中備蓄倉庫として、分散備蓄倉庫の補充機能を担っている。
平成30年1月5日現在の備蓄倉庫は、次表のとおりである。以下、備蓄倉庫の名称について、学校及び岸和田市立保健センターは、「岸和田市立」を省略し、岸和田市役所別館は、「市役所別館」と表記する。
備蓄倉庫 | 所在地 | 部屋等 | 面積 |
市役所別館 | 岸城町7番1号 | 地下1階階段室倉庫 | 約12平方メートル |
宮の池倉庫 | 別所町102番地の1 | 警察署裏宮の池公園敷地内 | 約25平方メートル |
保健センター | 別所町3丁目12番1号 | 3階会議室奥メンテ室 | 約10平方メートル |
NTT岸和田ビル | 南町17番1号 | 3階更衣室跡 | 123.83平方メートル |
3階理髪室跡 | 21.17平方メートル | ||
4階倉庫跡 | 39.13平方メートル | ||
NTT東岸和田ビル | 流木町147番地 | 3階事務室跡 | 54.38平方メートル |
3階予備室跡 | 68.04平方メートル | ||
4階更衣室跡 | 56.27平方メートル | ||
太田小学校 | 畑町3丁目12番1号 | 職員室横階段上る2階倉庫 | 33.92平方メートル |
城東小学校 | 三田町146番地 | 3棟3階非常用倉庫 | 66.32平方メートル |
八木小学校 | 大町3丁目22番1号 | 体育館横トイレ奥倉庫 | 56.10平方メートル |
八木北小学校 | 下池田町3丁目6番4号 | 体育館内更衣室/シャワー室 | 約23平方メートル |
春木中学校 | 松風町10番65号 | 体育館内管理室/更衣室 | 約10平方メートル |
桜台中学校 | 下松町1255番地 | 体育館西側更衣室 | 約5平方メートル |
備蓄倉庫の使用に関する協定は次表のとおりである。
協定締結日 | 協定名称 | 協定相手方 | 協定の概要 |
平成23年1月17日 | 災害時及び災害に備えた施設の使用に関する協定 | 西日本電信電話株式会社 大阪南支店 | 災害対策業務の実施についての使用場所の提供 |
(2) 備蓄状況について
本市における平成30年1月5日現在の各倉庫の備蓄状況は、次表のとおりである。
品名 | 市役所別館 | 宮の池倉庫 | 保健センター | NTT岸和田ビル | NTT東岸和田ビル | 太田 小学校 | 城東小学校 | 八木 小学校 | 八木北小学校 | 春木 中学校 | 桜台中学校 | 合計 | 備蓄目標量 |
アルファ化米 | 4,200 | 5,200 | 1,800 | 1,800 | 13,000 | 113,036食 | |||||||
アルファ化米(アレルギー対応) | 1,000 | 5,000 | 6,000 | ||||||||||
クラッカー | 4,170 | 1,890 | 1,120 | 7,180 | |||||||||
ビスコ | 4,560 | 4,560 | |||||||||||
高齢者用食 | 1,700 | 1,700 | 5,950食 | ||||||||||
ヒートレスカレー | 2,010 | 2,010 | - | ||||||||||
粉ミルク | 48,800 | 48,800 | 48,123g | ||||||||||
哺乳ビン | 34 | 300 | 334 | 320本 | |||||||||
毛布 | 3,057 | 1,700 | 1,000 | 680 | 278 | 300 | 200 | 210 | 7,425 | 28,540枚 | |||
ひざ掛け毛布 | 100 | 1,400 | 1,500 | - | |||||||||
タオル | 431 | 431 | - | ||||||||||
傘 | 232 | 232 | - | ||||||||||
大人用おむつM | 330 | 330 | 1,323枚 | ||||||||||
大人用おむつL | 54 | 196 | 250 | ||||||||||
乳児・幼児用おむつM | 114 | 126 | 1,260 | 1,500 | 6,611枚 | ||||||||
乳児・幼児用おむつL | 1,080 | 1,080 | |||||||||||
生理用品 | 60 | 900 | 21,600 | 22,560 | 6,445枚 | ||||||||
日用品セット | 9 | 600 | 1,800 | 600 | 3,009 | - | |||||||
歯ブラシ | 5,000 | 5,000 | - | ||||||||||
ウォーターバック | 8,800 | 5,200 | 1,600 | 3,200 | 18,800 | - | |||||||
ウェットティッシュ | 1,993 | 1,993 | - | ||||||||||
メガホン | 24 | 30 | 54 | - | |||||||||
懐中電灯 | 119 | 180 | 299 | - | |||||||||
ロウソク・マッチ | 1 | 1,696 | 1,200 | 2,897 | - | ||||||||
簡易トイレ | 12 | 314 | 140 | 466 | 286基 | ||||||||
マスク(大人用L) | 300 | 300 | 595枚 | ||||||||||
マスク(大人用M) | 300 | 300 | |||||||||||
マスク(子供用) | 200,000 | 200,000 | - | ||||||||||
トイレットペーパー | 0 | 247,884m | |||||||||||
弾性ストッキングM | 16 | 16 | - | ||||||||||
弾性ストッキングS | 20 | 20 | - |
備蓄11品目のうち、粉ミルク、哺乳ビン、生理用品、簡易トイレ、マスクの5品目については、備蓄目標量を達成しているが、食料(アルファ化米、クラッカー、ビスコ)、高齢者用食、毛布、大人用おむつ、乳児・幼児用おむつ、トイレットペーパーの6品目については、備蓄目標量に達していない。今後、アルファ化米等の食料及び高齢者用食を優先的に購入し、平成32年度までの目標量達成を目指している。備蓄11品目以外のものについては、寄附を受けたものや備蓄方針が策定される前から保管しているもの等である。なお、備蓄品名に飲料水の記載がないが、別途上下水道局において、必要量をアルミ製ボトル缶等で保管している。
3 備蓄品の整備及び管理について
(1) 備蓄品の購入状況について
平成28年度の備蓄品の購入については、粉ミルク39,200g(うちアレルギー対応1,600g)、クラッカー3,010食分、アルファ化米7,000食分(うちアレルギー対応1,000食分)、高齢者用食850食分で、予算執行額は246万5,930円である。予算の関係から、食料、高齢者用食、粉ミルク以外の物資については、購入できず、備蓄が進んでいない状態である。また、平成32年度までに目標量を達成するためには、優先的に購入している食料(アルファ化米、クラッカー、ビスコ)、高齢者用食についても約3年間で、8万食以上の整備が必要となる。購入だけでは整備が困難であるが、流通在庫備蓄(流通段階にある物資を災害時に備蓄品として活用するもの)として、いずみの農業協同組合と玄米9トン(約6万2千食分)を災害用備蓄米とする協定を締結しているため、残りの約2万食分を平成32年度までに購入することで備蓄目標量を達成する予定である。食料、高齢者用食以外の備蓄品については、特に毛布、トイレットペーパーが目標量に比べ備蓄が少ない状態である。
(2) 流通在庫備蓄について
大規模災害時には、被災者救援や支援物資受入れなどにより災害対策体制に混乱が生じるおそれがある。事前に物資の提供等について事業者と協定を締結することは、災害時に迅速に支援を要請することができるという観点から非常に重要である。本市においても食料等物資の供給協力に関する協定や、飲料水の提供に関する協定、燃料供給等に関する協定、ダンボール製品の調達に関する協定を締結している。また、物流についても、備蓄品や支援物資が円滑に被災者へ搬送されるように物資の緊急輸送に関する協定を締結している。
本市における備蓄物資に係る関係機関との協定は次表のとおりである。
協定締結日 | 協定名称 | 協定相手方 | 協定の概要 |
平成20年2月1日 平成29年12月15日改定 | 災害時における食料等物資の供給協力に関する協定 | いずみの農業協同組合 | 災害用備蓄米の備蓄、精米の供給協力 |
平成22年5月1日 | 災害時における物品の供給協力に関する協定書 | 大阪いずみ市民生活協同組合 | 災害時における食料品・生活必需品の調達及び輸送 |
平成22年11月8日 | 災害時におけるLPガス等の供給協力に関する協定書 | 一般社団法人 大阪府LPガス協会 岸和田支部 | 災害時におけるLPガス等の優先供給協力 |
平成23年11月30日 | 災害時における食糧等物資の供給協力に関する協定書 | イオンリテール株式会社 西近畿カンパニー | 災害時における食料品・生活必需品の調達及び輸送 |
平成24年9月27日 | 災害時等における燃料供給等に関する協定書 | 大阪府石油商業組合 阪南支部 岸和田地区会 | 災害時におけるガソリン、軽油、灯油等の供給 |
平成25年6月7日 | 災害発生時におけるダンボール製品の調達に関する協定書 | Jパックス株式会社 セッツカートン株式会社 | 災害時におけるダンボール製簡易ベッドなどダンボール製品の調達 |
平成27年4月23日 | 災害時における物資の緊急輸送に関する協定書 | 一般社団法人 大阪府トラック協会 泉州支部 | 災害時の物資の緊急輸送 |
平成27年10月1日 | 災害時等における物資の供給協力等に関する協定書 | DCMダイキ株式会社 | 災害時における物資の供給 |
平成27年12月4日 | 災害時における飲料水の提供に関する協定書 | 株式会社 伊藤園 | 災害時における飲料水の提供 |
平成28年8月8日 | 災害時等における燃料供給等に関する協定書 | ヒラオカ石油株式会社 | 災害時におけるガソリン・軽油・灯油・A重油等の供給 |
(3) 備蓄品の利用・活用状況について
ア 災害時の避難所での利用
平成28年度においては、幸い避難勧告及び避難指示を発令した災害はなく、避難所等への備蓄品の搬出はなかった。
イ 災害地域への物資の提供
平成28年4月14日に発生した熊本地震の被災地に向け、高石市以南の8市4町が合同で飲料水や紙おむつ、生理用品を中心とした援助物資を4月19日に搬送しており、本市は、生理用品21,600個、乳児・幼児用おむつMサイズ756個、乳児・幼児用おむつLサイズ1,080個を提供している。また、5月16日には、堺市以南の9市4町が合同で紙おむつやトイレットペーパー、生理用品、ゴミ袋等を搬送しており、本市は、歯ブラシ5,000本を提供する等、時間の経過とともに変化する被災地に必要な物資を提供している。
ウ 備蓄品の賞味期限等の管理
食料等を購入し、備蓄する際には、賞味期限に留意し、アルファ化米は賞味期限が約7年後のものを、クラッカーは約5年後のものを購入している。粉ミルクについては、賞味期限が約1年半と短いため、短期的な買い替えとなる。備蓄品については、大量の廃棄とならないよう、購入と利用・活用について計画的に管理する必要から、平成28年度は、賞味期限が近づいたクラッカー約1万5,000食のうち約8,000食を自主防災組織の避難訓練や市主催の出前講座等の際に参加した市民に配布し、非常食への理解を深めるために活用している。また、平成28年度に購入した粉ミルクは、今年度、保育所等へ提供する等の方法により有効活用がなされている。
第7 現地調査の概要
現在設置されている11箇所の備蓄倉庫について、現地において調査を行った。
1 備蓄倉庫の管理について
(1) 鍵の管理について
すべての備蓄倉庫において、出入口の扉が施錠されていた。倉庫の鍵は、施設管理課のほか、危機管理課でも7箇所については保管していたが、保健センター、八木北小学校、春木中学校、桜台中学校の4箇所については、保管していなかった。保健センターについては、24時間の人的警備が行われているため、危機管理課では保管せず、残りの3箇所については、最近備蓄を開始したため、今後作成し保管する予定である。
(2) 備蓄品リストについて
すべての備蓄倉庫において、倉庫のわかりやすい場所に備蓄品リスト(品目・数量)が備えられていなかった。また、八木小学校については、以前の担当課である高齢障害福祉課(現在の「福祉政策課」)で作成された備蓄台帳が備えられていたが、使用した形跡がなかった。
(3) 通路の確保について
すべての備蓄倉庫において、建物の出入口から備蓄品を保管している部屋の出入口までの通路が確保されていた。
(4) 出入口付近の通行の障害となるものについて
市役所別館、保健センター、春木中学校、桜台中学校において、備蓄倉庫の出入口付近に備蓄品以外の物品が置かれていた。
(5) 停電時の懐中電灯等の備えについて
すべての備蓄倉庫において、懐中電灯が備えられていなかった。
(6) 備蓄品以外の物品について
市役所別館、宮の池倉庫、保健センター、NTT東岸和田ビル、太田小学校、城東小学校、八木小学校、春木中学校、桜台中学校において、備蓄倉庫内に備蓄品以外の物品が置かれていた。
そのうち、宮の池倉庫、太田小学校、城東小学校、八木小学校の4箇所については、備蓄品とそれ以外の物品の保管スペースを分けて、備蓄品の取り出しに支障がないように整理されていた。
一方、市役所別館については、狭いスペースに備蓄品以外の物品が大量に置かれており、備蓄品と区別し難い状況であった。また、備蓄品以外の物品が出入口付近に置かれており、備蓄品はその奥に保管されていた。
保健センターについては、備蓄品とそれ以外の物品の保管スペースは分けられていたが、備蓄品以外の物品が出入口付近に置かれていた。
NTT東岸和田ビルについては、備蓄品の前に備蓄品以外の物品が大量に置かれていた。
春木中学校については、備蓄品を2つの部屋に分けて保管していたが、どちらの部屋も備蓄品以外の物品が出入口付近に置かれていた。そのうちの1つの部屋では、備蓄品が部屋の奥に保管され、出入口からは見えなかった。出入口付近の床にも備蓄品以外の物品が置かれていたため、通行の障害になっていた。
桜台中学校については、備蓄品以外の物品が出入口付近に置かれており、備蓄品とそれ以外の物品の保管スペースを分けるために部屋の中をシートで区切っていたが、備蓄品は部屋の奥に保管されており、出入口からは見えなかった。
(7) 施設の状況について
宮の池倉庫において、外壁にひび割れしている箇所があり、倉庫の内側には、そのひび割れにより雨水が入り込んだとみられる箇所もあった。
2 備蓄品の管理について
(1) 備蓄品の数量について
危機管理課から提出された平成30年1月5日現在の「災害対策用物資備蓄状況」と現物との数量確認を行ったところ、NTT岸和田ビル、城東小学校において、合致していないものがあった。
(2) 備蓄品の整理について
ほとんどの備蓄品は、品名が記載された箱に梱包されて、種類ごとに整理されていたが、市役所別館、保健センター、NTT岸和田ビル、NTT東岸和田ビルにおいて、品名が記載されていないものがあった。また、市役所別館、保健センターにおいて、異なる種類の備蓄品が積み重ねられていた。
(3) 備蓄食料品の管理について
すべての備蓄倉庫において、備蓄品が梱包されている箱等に賞味期限が記載されており、賞味期限が過ぎているものはなかった。
(4) 備蓄品の出庫、入庫の記録について
危機管理課から提出された「災害対策用物資備蓄状況」において、備蓄倉庫ごとの備蓄品目、備蓄数量が記録されていた。また、備蓄品を購入した場合や他の倉庫に移動した場合等に、出庫、入庫のわかる記録が作成されていた。なお、備蓄倉庫においては、出庫、入庫について記録したものは備えられていなかった。
第8 監査の結果
防災備蓄品等の管理状況について、第3に記載した監査の着眼点に基づき調査した結果、備蓄倉庫及び備蓄品は、おおむね適正に管理されているものと認められたが、一部、指摘事項が認められた。
指摘事項については、是正・改善の必要があるため、適切な措置を講じられたい。なお、措置を講じたときは、遅滞なく通知されたい。
指摘事項及び注意を要する事項と判断した基準は、次のとおりである。
指摘事項 (1) 市に損害を与えている、又は損害を与える恐れがあるもの (2) 収入確保に適切な措置を要するもの (3) 予算を目的外に支出しているもの (4) 不必要な予算執行をしているもの又は損害を生じているもの (5) 法令や条例、通達等に違反しているもの (6) 契約や協定等に反しているもの (7) 機関の意思決定が適切になされていないもの (8) 書類の隠匿や改ざんその他の故意による違反行為があるもの (9) 重大な過失又は著しい怠慢によって誤りを生じているもの (10) 正確性、経済性、効率性又は有効性の観点から改善を要するもの (11) 前回、指摘事項又は注意を要する事項とした事項のうち、是正・改善されていないもの (12) その他、不当又は適正を欠く事項で指摘が適当であると認められるもの |
注意を要する事項 (1) 不当又は違法ではないが適切でないもの (2) 執行機関等に改善・検討などを促し、又は注意を喚起することが必要と認められるもの (3) 上記の指摘事項以外で、金額、手続、処理、方法等から見て比較的軽微な誤りと認められるもの |
1 指摘事項
備蓄倉庫の現地調査において、NTT岸和田ビル、城東小学校で保管されている備蓄品について、提出資料による備蓄数量と合致していないものがあった。(判断基準 (10))
第9 意見
本市においては、平成29年10月22日の台風21号の影響により、東葛城地域及び山滝地域において避難指示(緊急)が発令され、100人を超える市民が避難する甚大な被害が発生した。また、上町断層帯地震や南海トラフを震源地とする大規模な地震の発生も危惧されている。地震や台風等の自然災害が発生した場合、発生直後における食料や生活必需品を確保することは、災害時の市民の最低限の生活を確保するために極めて重要な行政の役割である。
11箇所の備蓄倉庫について現地調査を行った結果、大半が専用倉庫ではなく、施設の一部を借用し、備蓄品を保管している状態であった。場所の確保が非常に困難である状況において、所管部課である危機管理部危機管理課の前向きな取組みにより、分散型備蓄の拡充を行っていることが見てとれた。しかし、学校では体育館等の一部を借用していることにより、倉庫の表示がされていないもの、倉庫に備蓄品以外の物品が置かれ整理がされていないもの、倉庫の出入口付近に通行の妨げになるものが置かれている等の状況がみられた。これらは、災害時の搬出に支障をきたすおそれがある。備蓄倉庫としての場所の確保については、所管部課だけでなく、教育委員会をはじめ関係各課と連携しながら対応していく必要がある。
また、1箇所ではあるが、倉庫の外壁にひび割れが確認された。賞味期限を考慮して備蓄品を購入したとしても、保管場所に問題があればその品質は確保されない。備蓄倉庫について、所管部課は、常にその状態を把握し、必要に応じて修繕を依頼する等、施設管理課との連携も必要である。
備蓄倉庫内については、備蓄品リストや配置図を備え、備蓄品には品名を記載し、品目ごとに整理し保管する等の工夫により、倉庫内のどこに何があるかを一目瞭然にしておくことが必要ではないかと思われる。備蓄倉庫の管理については、倉庫がどのように整理されていれば、誰でもすぐに搬出できるのかを考慮したうえで、管理マニュアルを作成し、それに基づき倉庫内を整理することで、市内の全倉庫を一定の基準で管理することができると思われる。この行政監査をきっかけとし、管理マニュアルの作成についての検討を望む。
現在、目標量を達成するため、備蓄品の整備を進めている状況であるが、食料品については、賞味期限があるため、一定の周期で入れ替えを行う必要がある。賞味期限が近づいた食料について、本市では、地域防災コミュニティ等の団体が行う訓練の際に啓発として提供する等、有効活用が図られているが、今後、備蓄数の増加に伴い、大量の廃棄とならないよう計画的な購入と利用・活用についての管理が更に重要となる。災害時には、行政による「公助」だけでなく、市民自らが災害に備える「自助」、地域による「共助」も重要である。市としても「自助」、「共助」を促すべく、積極的な啓発が必要である。今後も、地域と連携した取組みに努められたい。
今回の行政監査において、備蓄品及び備蓄倉庫の状況等について調査を行ったが、その中で、所管部課が、他の地域で発生した地震等の被害を検証し、大阪府と連携しながら、本市において想定される災害の被害やその対応などを絶えず見直し、本市の防災機能の強化に尽力する姿がみられた。しかし、現時点で備蓄品に関しては、その見直しが計画に反映されていない。平成27年4月に策定した「岸和田市備蓄計画」の見直しを早期に行い、公的備蓄の考え方及び本市の備蓄状況について、積極的に市民へ情報発信するとともに、家庭内備蓄の重要性についての普及啓発にも努められたい。
いつ発生するのかが予測できない災害に備え、備蓄品を適切に整備・保管することは、容易ではないと思われる。しかし、予測できないからこそ危機感を持ち、早急にその体制を整備しなければならない。災害時において、備蓄品は、市民の命をつなぎ、生活を守るものである。大規模な災害の発生が危惧される中、備蓄品を目標量まで早急に整備すること、備蓄倉庫としての場所を確保すること及び備蓄倉庫としての機能が果たせるよう適切に管理することは、本市において喫緊の課題である。所管部課が中心となり、庁内でその重要性を共通認識とし、関係各課が連携して早急にこの課題に取り組むことにより、災害発生時に市民が安心できる盤石な備えを一刻も早く整備されたい。この監査結果がその一助となることを願うものである。