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平成25年度工事監査の結果((仮称)久米田地区市民センター新築工事・(仮称)岸和田中部地区市民センター新築工事)
第1 監査の対象
(仮称)久米田地区市民センター新築工事(建築)
(仮称)岸和田中部地区市民センター新築工事(建築)
第2 監査実施日
平成25年8月8日(木曜日)
第3 監査の方法
平成24年度に施工した工事のうち、契約金額が1,000万円以上の中から内容等を勘案のうえ、監査対象を抽出し、設計図書、関係図書等の書類監査と現場監査を関係職員立会いのもと説明聴取を受け実施した。
なお、技術的、専門的立場から公益社団法人大阪技術振興協会に工事技術調査を依頼し、技術士の派遣を得て実施した。
第4 監査の結果
1 (仮称)久米田地区市民センター新築工事の概要
(1) 工事場所
岸和田市池尻町地内
(2) 工事請負業者
矢野建設株式会社本店
(3) 設計委託業者
株式会社石本建築事務所
(4) 工事請負金額
490,350,000円(設計金額 499,867,200円)
(5) 落札率(工事請負金額/設計金額)
98.1%
(6) 工事期間
平成24年9月5日から平成25年10月31日まで
(7) 工事監督員
建築住宅課 西塚研二
(8) 工事の内容
ア 規模
敷地面積 3,499.92平方メートル
建築面積 2,099.08平方メートル
延べ床面積 3,008.39平方メートル
イ 用途
集会室、図書館、事務室、会議室、多目的室、実習室、和室
ウ 構造
鉄筋コンクリート造2階建
(9) 工事進捗状況
計画出来高 75% 実施出来高 73%(平成25年8月8日現在)
2 監査結果及び調査内容
(1) 施設概要及び工事目的について
岸和田市ではかねてから市民センター建設の構想があり、市域3地区に順次建設してきたが、今回は残る2地区である久米田地区と中部地区に建設するものである。
久米田地区においても、市民自治の確立に向けて、市民の自主的な活動を積極的に支援しつつ、行政・市民・事業者の協働によるまちづくりを推進していくために、地域コミュニティーの活性化、ならびに地域住民の生涯学習活動が行える場、地域防災拠点として整備する。
主要用途は、以下の3つである。
ア サービスセンター:住民票発行などの市役所分庁機能
イ 地域交流 :公民館的なコミュニティーセンター
ウ 図書館 :岸和田市のセンター図書館の分館機能
利用対象者については、地区の人口や年齢構成、現在の公民館の年間利用者数47,053人、60才以上が80%を占めることを設計では考慮しているとのことである。市民センターは全年齢を対象としているが、図書館については久米田地区では大人向けと子ども向けとの比率を6対4と予定していた。運営していく上では現状より5%利用者数が増加することを目標としている。なお、最近10年間の人口構成は一定していて、大きな変動はなく、今後も変動は見込んでいないとのことである。
(2) 工事概要について
工事について設計図に従って説明がなされた。上記の条件により、設計プロポーザルにより施設レイアウトが決定され、防災拠点としての機能、障害者に配慮した設計、耐震性、ランニングコストの削減などを工夫している。具体的にはテラスや集会室などの避難者収容スペースや自家発電設備、マンホールトイレ、受水槽での緊急遮断弁を取り付けた飲料水の確保、アイドラゴン設置、災害備蓄品倉庫の設置などによる災害時避難拠点施設とすることや、重要度係数1.25による耐震設計及び集会室での耐震天井の採用、身障者トイレやオストメイト設備のほか「大阪府福祉のまちづくり条例」に基づいた設計を行い、LED照明やトイレの自動水栓の採用などで節電・節水対策を行うなどである。
LCC(ライフサイクルコスト:以下同じ)については想定をしていないが、予算の中で維持保全する方針としている。
(3) 設計図書、特記仕様書等に関して
基本設計の前提として、現状の利用者の年次変化や居住地域の統計、図書館蔵書の選定などの運営方針と施設・設備の関連についても調査が行われていた。吹き抜け空間や、外部ガラス窓などからの空調負荷についても床下をダクトにしたり、天井の低い位置からの空調吹き出しとするなどの工夫をしていた。非常用発電設備も最低限の電力を3日間確保しているとのことであった。
一昨年の東日本大震災でも経験した津波の危険性について、大阪府指導による津波高さ6.8mの想定に対して、当施設敷地はO.P.(大阪湾最低潮位:以下同じ)+23m以上であるので、問題ないとのことであった。
シックハウス対策については、計画通知時の仕上表により建築材料を確認しているほか、使用材もF☆☆☆☆(ホルムアルデヒドを発散する等級で最少段階:以下同じ)であることを施工中も監督職員により確認していた。換気もすべて24時間換気とし、VOC(揮発性有機化合物:以下同じ)についても内装工事完了後引渡し前に測定を予定している。接着剤についても、屋外の仮設倉庫での保管を予定しているとのことであった。
厚生労働省の指針や文部科学省の基準による物質数とは特記仕様書での5物質が一致していないが、今後特記仕様書での内容について確認していくことを提言した。
設計図面の意匠図、構造図、特記仕様書とも必要枚数、記載内容とも問題なく、詳細についても質疑回答や打ち合わせ記録の照合により問題はないと判断した。
(4) 積算等に関して
ア 数量積算者は、設計者の株式会社石本建築事務所であった。
イ 積算の基準は、下記のとおりであることを確認した。
建築積算研究会制定「建築数量積算基準・同解説」(平成22年版)
ウ 値入れは委託設計事務所が行い、建築住宅課担当者が見直しをしていた。単価や分掛は、公共建築工事積算基準及び市販の刊行物である「建築コスト情報」、「施工単価資料」、「建設物価」、「積算資料」によっていた。上記での資料に単価が記述されていないものについては業者見積書をとり、最低のものに低減率をかけたものを採用しているとのことであった。
上記の調査により、積算について問題はないと判断した。
(5) 入札、契約関係等に関して
以下の事項について質問調査を行った。
ア 入札参加業者の見積り期間
平成24年7月27日から平成24年8月9日までの14日間(うち土日4日間)
イ 質疑状況及び件数
質疑は2社から8件出されていた。なお、入札では市内AB1、AB2クラスの8社が応札し、AB2クラスの矢野建設株式会社本店が落札者となった。
ウ 監理技術者と主任技術者の資格
監理技術者資格者証、1級建築施工管理技士の免状の写しを確認した。
エ CORINS(工事カルテ:以下同じ)の提出
写しが保管され、適正であることを確認した。
オ 前払金保証
前払金の請求はなく、前払金保証は行っていない。
カ 工事の履行保証
共栄火災海上保険株式会社による公共工事履行保証証券を確認した。
キ 設計変更
設計変更はそのつど書面で確認されており、打ち合わせ議事録にも確認されていた。
上記により、入札、契約に関する問題はないと判断した。
(6) 施工管理・品質管理・施工監理等に関して
ア 施工計画書について
総合仮設計画書、各種工事に関する個別施工計画書が作成されていた。
内容確認及び審査済の手続きは、適正に行われていた。
最近の傾向として、施工計画書のデジタルデータの利用が行われる結果、当該工事に特有の施工管理上のポイントとなる事項や注意点が記載されていない。
当工事では外装でコンクリート化粧打放しが採用されているので、コンクリート工事について調査したが、上記の傾向が若干見られたので、標準仕様書及び監理指針などを参考に施工計画書への記述を求めていくことを提言した。
イ 使用材料について
躯体工事使用材料及び仕上げ工事材料の確認は、使用資材審査願により適正に行われていた。
ウ 実施工程表について
施工者作成のネットワーク工程表に、コンクリート打ち込みなどのイベントの日を記入しており、実施日との差異を照合することにより工程を管理していた。クリティカルパスは表現されていなかったが、このときまでのクリティカルパスとなるのは躯体コンクリート工事であるので問題はない。外注製作物の承認工程も別途作成されていた。
エ 建設副産物の扱いについて
運搬収集・中間処理・最終処分の契約書の写し、再生資源利用計画書の作成がされていた。マニフェストも整備されており、適切であると判断した。
オ 建設業退職金共済組合への加入について
元請業者が建設業退職金共済の証紙を購入した領収書を確認した。
カ 施工体系図について
適切に掲示されていた。
キ 工事監理・監督について
工事監理は建築住宅課の直営により行われ、監理業務分掌区分は、建築工事、設備工事で明確に区分されていた。
共通仕様書は、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「公共建築工事標準仕様書 平成22年版」、監理指針は、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「建築工事監理指針 平成22年版」としていた。
施工業者から、月間工程表及び週間工程表などの提出を受け、工程監理を行っていた。工事打合せ会として、毎週1回定時に各施工業者、工事関係者、市担当者が出席した工程会議が行われ、議事録も整備されていた。
施工業者への指示書・連絡書、試験・検査などの段階確認の立会い記録・写真などが良好に保管・整備されているのを確認した。
ク 特記仕様書に記述されている個別の工種工事の監理について(書類調査)
(ア) 仮設
官庁提出書類(労働安全衛生法第88条第2項など)を確認したが、問題はなかった。
建物位置、設計Glの確認状況の写真を確認したが、問題はなかった。
総合仮設計画図が作成されていたが、工事用電力の引き込み容量、仮設給水の水道管径が記入されていなかったので記入すること、建物位置決めにおける境界点との実測距離を確認記録しておくことを提言した。
(イ) 土
掘削土は場外搬出であり、埋め戻しは掘削土を使用するものであった。埋め戻し土の転圧状況の写真を確認したが、問題はなかった。
山留め工事については、該当はない。
土壌調査の有無については、田圃であった土地であるからほとんど問題はないということであったが、そのような土地からでも砒素が基準値以上に検出される事例もあるので、今後検討することを提言した。
(ウ) 地業
杭工事専門業者の杭工事施工報告書及び写真より、支持層の確認を適正に行っていたと判断した。
(エ) 鉄筋
鉄筋材料証明書、入荷札及びロールマーク記録写真より材料が適正であることを確認した。
圧接作業者の技量証明書、圧接部の超音波探傷報告書より圧接部の品質が適正であると判断した。
配筋検査は、施工者の自主検査後、監理者検査がなされ、検査記録・写真ともに整備されていた。
柱、梁断面での最小鉄筋比については、主筋の0.8%、せん断補強筋の0.2%を断面より確認しておくことを提言した。
(オ) コンクリート
配合報告書と設計図書を照合し、適正であることを確認した。設計基準強度と調合強度との補正値における強度割り増しS値の扱いについて、適切に管理されていた。単位水量は化粧打ち放しであり、すべて175kg/㎥以下であった。生コンの試験書類及び立会い記録写真、打ち込み状況の写真、強度試験結果などは適正に保管整備されていた。圧縮強度はすべて満足していた。
ジャンカ補修の記録・写真もあり、適切に管理がなされていた。
(カ) 鉄骨
集会室屋根、1階ラウンジ丸柱などに鉄骨構造が採用されている。アンカーボルトの埋め込み、材料確認、工場製作、現場組立・接合、耐火被覆などについては問題はなかった。
錆止め塗装の膜厚については、塗料使用量を空缶により確認しているとのことであるが、塗装面積の計算書からの塗料必要量を確認し、それに対する実使用量を写 真で確認しておくことを提言した。
(キ) ALC(軽量気泡コンクリート:以下同じ)パネル、押し出し成形セメント板など
今回の技術調査では、特に述べる事項はない。
(ク) 防水
材料の確認方法について、納品書、入材及び使用後の風袋の記録写真も整備するとともに、使用数量を把握するために、部位別の所要数量と使用数量を表にしておくことを提言した。
屋上アスファルト防水についても、特にドレイン廻りからの漏水が多いことを考慮した水張り試験方法について、排水口をゴムまりで塞いでの試験を予定しているとのことである。
アスファルト防水、ウレタン防水ともに10年の保証書が提出されるとのことである。
シーリングの接着性試験成績書も提出されていた。
(ケ) 石
今回の技術調査では、特に述べる事項はない。
(コ) タイル
今回の技術調査では、該当はない。
(サ) 木工事
木材現場搬入時に含水率の測定及び目視検査を行い記録している。根太など木材が土間コンクリートに直接あたるところの防腐・防虫剤の塗布は未施工の部位であるので、見え隠れとなる部分の塗装を確認記録しておくことを提言した。
(シ) 屋根及び樋
屋根はアスファルト防水の上の押さえコンクリートはない。交流テラス屋根部と東面の窓脚部の水仕舞については、窓下に150mmのコンクリート立ち上がりを設けて防水層を立上げ、水切金物で端部を押えることにしており、問題はないと判断した。
最近の気候温暖化に対して縦樋の排水能力は、降雨量が180mm/hでも問題ないことを確認しているとのことであった。
(ス) 金属
地震での天井落下事故については、集会室天井の耐震天井について、野縁と野縁受けをビス止めして従来一般的であったクリップ止めにしていないということであった。
(セ) 左官
書類調査上での特記事項はない。
(ソ) 建具工事
外部に面する建具についての耐風圧性、気密性、水密性の確認はできていた。重量シャッターには、障害物感知装置がつけられていた。
防火区画や排煙区画となる部分でのドアの隠蔽部の施工記録については、鉄筋コンクリート壁に取り付くものなので、基本的に問題はないということであった。
(タ) カーテンウォール
今回の技術調査では、該当はない。
(チ) 塗装
VOC放散量が少ない、F☆☆☆☆の塗料を選定する予定である。塗料・シンナーの保管状況は、屋外に専用倉庫の設置を予定しており問題はない。
使用量のデータについても、部位別使用量の表と、風袋の記録を提言した。
(ツ) 内装工事
内装材・接着剤について、VOC放散量が少ないF☆☆☆☆のものを選定し、納入時及び出荷証明で確認予定とのことであった。
使用材料審査時にカタログにより、アスベストが使用されていないことを確認しているということであった。
床材でのスリップ事故防止については、エントランスホール、図書ラウンジ、階段、ホワイエ、廊下で検討しているとのことであった。
(テ) その他
照明器具の球替えが困難となる箇所については、吹き抜け部の照明器具の取替えには足場を組むか、高所作業車が必要になるとのことであったが、LED器具を用いており、耐用年数が長いためメンテナンス間隔を長くとれるので費用的には心配はないとのことであった。点検口も適宜配置しているとのことであった。
別途工事である機械設備、電気設備、備品設置の各工事について、建築工事との関連部分の調整は毎週実施する工程会議で調整を行い、記録していた。
(7) 現場調査における所見(施工状況、安全対策等)
ア 書類事項
屋上防水工事完了、外装塗装工事を実施中であり、外部足場は存置していた。
1、2階とも、間仕切りLGS工事、金属製建具の取り付け、天井内設備工事を行っており、1階では壁ボード貼りは8割程度完了、天井ボード貼り実施中であった。
特定建設作業の届け、日々の安全書類は整備されており、施工体系図の掲示、安全掲示板や朝礼広場も整備されていた。
労働安全衛生法第88条により労働基準監督署に届ける、足場、支保工の届出も行われていた。
現場での技術調査では以下の事項について提言を行った。
イ 品質事項
(ア) テラスの軒天井内で、ルーフドレイン打ち込み位置からたて樋の位置まで横引き管により接続している。この場合にはルーフドレインからのたて管と横引き管のエルボー(直角曲がり)部に掃除口を設けねばならないが、軒天井の当該箇所には掃除用の天井点検口が必要となるので忘れずに確認することを提言した。また、水張り試験の際に、ドレインのパイプをゴムまりなどで閉鎖する方法で、ルーフドレイン廻りの防水層端部からの漏水がないかを確認することを提言した。
(イ) 2階屋上テラス部で、排水溝の中にルーフドレインを打ち込んでいる部位で、ドレインの皿端部が溝立ち上がりに接している部分があった。アスファルト防水においては、ドレイン廻りは扇形に切断加工したアスファルトルーフィングを貼り付ける必要があるので、監理指針ではドレイン皿端部から立ち上がりまでは100mm程度の空きをとるように指導しているので、この部分の防水下地を是正することを提言した。
(ウ)2階テラス屋上手摺の基礎が立ち上がり、アスファルト露出防水層が立ち上がっているが、手摺を取り付けるための手摺脚部アンカープレートが防水層を貫通するので、この部分の施工に注意するとともに、雨漏り防止の点で供用後の点検もすることを提言した。
(エ)外装打ち放しコンクリートに水性フッ素樹脂塗装仕上げの部分では、型枠フォームタイのコーンを化粧で見せるようにしているが、一部で割付上修正するところがあったので、仕上げに注意し、足場撤去前の確認を提言した。
(オ)室内各部屋で、天井ふところが大きいために耐震補強が必要な部位がないかを目視したが、特になかった。
(カ)金属製建具周囲のモルタル充填や、外装タイル下地で左官工事によるモルタル塗りのため、左官のコネ場を設置していたが、モルタル配合時の富配合、貧配合の使い分けや、防水材の添加などの配合表を表示し、左官工に注意喚起することを提言した。(下塗りでは接着力を確保するために、セメント量が多くなる富配合、上塗りでは接着力は下塗りほど必要とされない代わりに、収縮ひび割れを防ぐ目的で貧配合とすることが、仕様書に規定されている。)
ウ 安全設備他
内部に吹き抜けとなる部屋や天井が高い部屋があるが、室内の踊り場、バルコニーなどで手摺が未施工であり、入隅などで足場との空きが大きくなる箇所が出来やすく、壁面仕上げのために落下養生棚を撤去する場合もあるので、墜落事故がないように入念に点検指導することを提言した。
(8) 結び
内外装とも工程上のピークを迎えているが、品質、費用、工程、安全、環境(QCDSE)のバランスは、非常に大切であり、特に工期が足りなくなると思わぬ品質事故や安全事故を招くことがある。竣工後日数を経てから、不具合が発生した場合には、発注者、請負者、使用者ともに不快な思いをすることになるので、手順毎の工程内検査を確実に行うことにより、無事竣工されることを望む。
3 (仮称)岸和田中部地区市民センター新築工事の概要
(1) 工事場所
岸和田市下松町地内
(2) 工事請負業者
岩出建設株式会社
(3) 設計委託業者
株式会社安井建築設計事務所
(4) 工事請負金額
524,790,000円(設計金額 559,737,150円)
(5) 落札率(工事請負金額/設計金額)
93.8%
(6) 工事期間
平成24年9月5日から平成25年10月31日まで
(7) 工事監督員
建築住宅課 仲井隆之
(8) 工事の内容
ア 規模
敷地面積 2,823.23平方メートル
建築面積 1,361.93平方メートル
延べ床面積 2,771.95平方メートル
イ 用途
集会室、図書館、会議室、多目的室、和室、実習室、事務室
ウ 構造
鉄骨造3階建
(9) 工事進捗状況
計画出来高 77% 実施出来高 77%(平成25年8月8日現在)
4 監査結果及び調査内容
(1) 施設概要及び工事目的について
施設概要及び工事概要は(仮称)久米田地区市民センターとほぼ同じである。
利用対象者については、地区の人口や年齢構成、現在の公民館の年間利用者数48,783人、60才以上が80%を占めることを設計では考慮しているとのことである。市民センターは全年齢を対象とし、図書館は中部地区では大人向けと子ども向けとの比率は5対5の蔵書予定とし、(仮称)久米田地区市民センターに比べて子どもにやや特化している。運営方針、今後の利用状況予測も(仮称)久米田地区市民センターと同じである。
(2) 工事概要について
工事について設計図に従って説明がなされた。上記の条件により、設計プロポーザルにより施設レイアウトが決定され、防災拠点としての機能、障害者に配慮した設計、耐震性、ランニングコストの削減などを工夫している。具体的には集会室などの避難所スペースを単独換気、空調を可能とし、大阪府告示「劇場等に関する技術基準」に基づく避難計画に合致した設計や、階段を廊下の両端に配置したわかりやすい避難経路の採用、自家発電設備(72時間対応)、マンホールトイレを設置、重要度係数1.25による耐震設計、身障者トイレやオストメイト設備のほか「大阪府福祉のまちづくり条例」に基づいた設計を行い、LED照明や換気ファンなどの高効率機器の採用や超節水型便器、自動水栓の採用などで節電・節水対策を行っている。
LCCについては想定はしていないが、予算の中で維持保全する方針としている。
外装仕上材の台風などの強風時の飛散防止についても計算しているとのことである。
(3) 設計図書、特記仕様書等に関して
基本設計の前提として、現状の利用者の年次変化や居住地域の統計、図書館蔵書の選定などの運営方針と施設・設備の関連についても調査が行われていた。吹き抜け空間や、外部ガラス窓などからの空調負荷についても床吹き出し空調や、吹き抜けのある2階集会室のように、3階床高さの壁からの低い位置からの空調吹き出しとするなどの工夫をしていた。
一昨年の東日本大震災でも経験した津波の危険性については、大阪府指導による津波高さ6.8mの想定に対して、当施設敷地はO.P.+9.8m以上であるので、問題ないとのことであった。
シックハウス対策について、計画通知時の仕上表により建築材料を確認しているほか、使用材もF☆☆☆☆であることを、施工中も監督職員により確認していた。換気もすべて24時間換気とし、VOCについても内装工事完了後引渡し前に測定を予定している。塗料についても、屋外の仮設倉庫での保管を予定しているとのことであった。
設計図面の意匠図、構造図、特記仕様書とも必要枚数、記載内容とも問題なく、詳細についても、質疑回答や打ち合わせ記録の照合により、問題はないと判断した。
(4) 積算等に関して
ア 数量積算者は、設計者の株式会社安井建築設計事務所であった。
イ 積算の基準は、下記のとおりであることを確認した。
建築積算研究会制定「建築数量積算基準・同解説」(平成22年版)
ウ 値入れは委託設計事務所が行い、建築住宅課担当者が見直しをしていた。単価や分掛は、公共建築工事積算基準及び市販の刊行物である「建築コスト情報」、「施工単価資料」、「建設物価」、「積算資料」によっていた。上記での資料に「単価」が記述されていないものについては業者見積りをとり、最低のものに低減率をかけたものを採用しているとのことであった。
上記の調査により、積算について問題はないと判断した。
(5) 入札、契約関係等に関して
以下の事項について質問調査を行った。
ア 入札参加業者の見積り期間について
平成24年7月27日から平成24年8月9日までの14日間(うち土日4日間)
イ 質疑状況及び件数について
質疑は1社から4件出されていた。なお、入札では市内AB1クラスの5社が応札し、 岩出建設株式会社が落札者となった。
ウ 監理技術者と主任技術者の資格について
監理技術者資格者証、1級建築施工管理技士の免状の写しを確認した。
エ CORINSの提出について
写しが保管され、適正であることを確認した。
オ 前払金保証について
西日本建設業保証株式会社による前払金保証証書を確認した。
カ 工事の履行保証について
西日本建設業保証株式会社による契約保証証書を確認した。
キ 設計変更について
設計変更はその都度書面で確認されており、打ち合わせ議事録にも確認されていた。変更契約予定とのことであった。
上記により、入札、契約に関する問題はないと判断した。
(6) 施工管理・品質管理・施工監理等に関して
ア 施工計画書について
総合施工計画書、各種工事に関する個別施工計画書が作成されていた。
内容確認及び審査済の手続きは、適正に行われていた。
(仮称)久米田地区市民センター同様、施工計画書のデジタルデータの利用が行われる結果、当該工事に特有の施工管理上のポイントとなる事項や注意点が記載されない傾向が若干観察された。総合仮設計画図においても受電容量や仮設電気経路、仮設給水用水道管径や排水計画などの記述をしていくことを提言した。
イ 使用材料について
躯体工事、鉄骨工事使用材料及び仕上げ工事材料の確認は、使用資材審査願により適正に行われていた。
ウ 実施工程表について
施工者作成のネットワーク工程表に、コンクリート打ち込みなどのイベントの日を記入しており、実施日との差異を照合することにより工程を管理していた。クリティカルパスは表現されていなかったが、工程上のクリティカルパスはどれかについては掌握していた。外注製作物の承認工程も実施工程に整合していた。
エ 建設副産物の扱いについて
運搬収集・中間処理・最終処分の契約書の写し、再生資源利用計画書の作成がされていた。マニフェストも整備されており、適切であると判断した。
オ 建設業退職金共済組合への加入について
元請業者が建設業退職金共済の証紙を購入した領収書を確認した。
カ 施工体系図について
適切に掲示されていた。
キ 工事監理・監督について
工事監理は建築住宅課の直営により行われ、監理業務分掌区分は、建築工事、設備工事で明確に区分されていた。
共通仕様書は、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「公共建築工事標準仕様書 平成22年版」、監理指針は、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「建築工事監理指針 平成22年版」としていた。
施工業者から、月間工程表及び週間工程表などの提出を受け、工程監理を行っていた。工事打合せ会として、毎週1回定時に各施工業者、工事関係者、市担当者が出席した工程会議が行われ、議事録も整備されていた。
施工業者への指示書・連絡書、試験・検査などの段階確認の立会い記録・写真などが、良好に保管・整備されているのを確認した。
ク 特記仕様書に記述されている個別の工種工事の監理について(書類調査)
(ア) 仮設
官庁提出書類(労働安全衛生法第88条第2項など)を確認したが、問題はなかった。
建物位置、設計Glの確認状況の写真を確認したが、問題はなかった。
総合仮設計画図が作成されていたが、工事用電力の引き込み容量(電灯23KVA、動力15KVA)、仮設給水の水道管径(φ25既存利用)が記入されていなかったので、記入することを提言した。
(イ) 土
掘削土は場外搬出であり、立会い確認をしていた。埋め戻しは掘削土を使用するものであった。埋め戻し土の転圧状況の写真を確認したが、問題はなかった。
山留め工事については、計算書による確認がなされていた。
土壌調査の有無については、実施記録が保存され、問題はなかった。
(ウ) 地業
杭工事専門業者の杭工事施工報告書及び写真より、支持層の確認を適正に行なっていたと判断した。施工後の杭芯誤差数値も記録され、補強必要なものはなかった。
(エ) 鉄筋
鉄筋材料証明書、入荷札及びロールマーク記録写真より、材料が適正であることを確認した。
圧接作業者の技量証明書、圧接部の超音波探傷報告書より圧接部の品質が適正であると判断した。
配筋検査は、施工者の自主検査後、監理者検査がなされ、検査記録・写真ともに整備されていた。
柱、梁断面での最小鉄筋比については、主筋の0.8%、せん断補強筋の0.2%を断面より確認しておくことを提言した。
(オ) コンクリート
配合報告書と設計図書を照合し、適正であることを確認した。設計基準強度と調合強度との補正値における強度割り増しS値の扱いについて、適切に管理されていた。単位水量は185kg/㎥以下であった。単位水量、生コンの試験書類及び立会い記録写真、打ち込み状況の写真、強度試験結果などは適正に保管整備されていた。圧縮強度はすべて満足していた。
実際に納入された生コンの単位水量を現場で実測すると、納入書類に比べてのバラつきがあることが知られているので、今後、現場測定することを仕様書に表現することを提言した。
(カ) 鉄骨
建物は鉄骨構造であり、製作工場はHグレードと特記されていた。材料確認、工場製作、現場組立・接合、耐火被覆などについての書類も整備されていた。
錆止め塗装の膜厚についても(仮称)久米田地区市民センター同様、塗料使用量を空缶により確認しているとのことであるが、塗装面積の計算書からの塗料必要量を確認し、それに対する実使用量を写真で確認しておくことを提言した。
(キ) ALCパネル、押し出し成形セメント板など
地震による揺れを考慮し、取付けにはロッキング工法を採用していた。シール材についても、仕様として問題はなかった。
(ク) 防水
材料の確認方法について、納品書、入材及び使用後の風袋の記録写真も整備するとともに、使用数量を把握するために、部位別の所要数量と使用数量を表にしておくことを提言した。
屋上アスファルト防水についても、特にドレイン廻りからの漏水が多いことを考慮した水張り試験方法について排水口をゴムまりで塞いでの試験を予定しているとのことである。
アスファルト防水、塗膜防水ともに10年の保証書が提出されるとのことである。
シーリングの品質証明書も提出されていた。
(ケ) 石
今回の技術調査では、該当はない。
(コ) タイル
アプローチ周辺の壁に乾式接着工法があるが、軽微であり報告を省略する。
(サ) 木工事
材料搬入時に市担当者による確認を行うこととしていた。根太など木材が土間コンクリートに直接あたるところはなく、合成樹脂製下地(プラ束)使用していたので、コンクリートに接する面での防腐剤塗布は問題なかった。
(シ) 屋根及び樋
屋根アスファルト防水の上の押さえコンクリートの伸縮目地には既製品が使用され、防水層の上から縁切りされていた。屋根はステンレスシーム溶接により、軒樋にはステンレスを使用していたが、長尺樋にエキスパンションが計画され伸縮に対応しているとのことであった。
(ス) 金属
軒天井下地は外部仕様としており、天井ふところも大きくない計画であるので地震による落下についても特別な処置は必要ないと判断した。
(セ) 左官
書類調査上での特記事項はない。
(ソ) 建具工事
外部に面する建具についての耐風圧性、気密性、水密性の確認はできていた。重量シャッターには障害物感知装置がつけられていた。
防火区画や排煙区画となる部分でのドアの隠蔽部の施工記録について質問したが、記録をとっているということであった。
(タ) カーテンウォール
今回の技術調査では、該当はない。
(チ) 塗装
VOC放散量が少ない、F☆☆☆☆の塗料を選定する予定である。塗料・シンナーの保管状況については、使用後場内から持ち帰ることにしていた。
使用量のデータについても、部位別使用量の表と、風袋の記録を提言した。
(ツ) 内装工事
内装材・接着剤について、VOC放散量が少ない、F☆☆☆☆のものを選定し、納入時及び出荷証明で確認予定とのことであった。
使用材料審査時にカタログにより、アスベストが使用されていないことを確認しているということであった。
床材でのスリップ事故防止については、廊下、階段、お茶の間ホールで検討しているとのことであった。
(テ) その他
折板屋根のメンテナンスのために、点検用フックを設置しているということであった。
照明器具の球替えが困難な箇所については、吹き抜け部の照明器具の取替えには足場を組むか、高所作業車が必要になるとのことであったが、LED器具を用いており、耐用年数が長いのでメンテナンス間隔を長くとれるので費用的には心配はないとのことであった。点検口も適宜配置しているとのことであった。
別途工事である機械設備、電気設備、備品設置の各工事についての建築工事との関連部分の調整は、毎週実施する工程会議で調整を行い、記録していた。
(7) 現場調査における所見(施工状況、安全対策等)
ア 書類事項
屋根、外装工事はほぼ完了し、屋上設備工事を施工中であった。外部足場は概ね解体撤去が行われ、当日中に完了する状況であった。
1、2、3階とも、間仕切りLGS工事、金属製建具の取り付け、天井内設備工事、壁ボード貼り及び仕上げ、天井ボード貼り及び仕上げがほぼ完了し、床仕上及び吹き抜け部の壁仕上げを実施中であった。
特定建設作業の届、日々の安全書類は整備されており、施工体系図の掲示、安全掲示板や朝礼広場も整備されていた。
労働安全衛生法第88条により労働基準監督署に届ける、足場、支保工の届出も行われていた。
現場での技術調査では以下の事項について提言を行った。
イ 品質事項
(ア) 鉄骨造で、屋根外装工事は主として乾式工事となるが、異種材料の取り合うところをシール防水のみに頼ると、外気温による伸縮が大きく、線膨張係数が異なるアルミ製金属板とセメント版などの目地シール部は数年でシールが切れて雨漏りを発生させる事例が多い。本工事でも屋上テラスのコーナー部分で金属板を現場実測して製作するために未施工となっている部位があったが、必ず板金工事による水仕舞を行い、完成後散水により漏水がないことを確認しておくことを提言した。
(イ) お茶の間ホールに楕円形の回り階段が設計されているが、階段踊り場裏と天井、壁の仕上げが残っていた。一般的にこのような箇所は設計図面には表現し難く、現場での打ち合わせにより仕上げが行われる例が多いが、この場所は見せ場でもあるので、よく検討して仕上げを行うことを提言した。
(ウ) 内部で鋼製建具の下塗りを行っていたが、鉄部油性塗料塗りは最近はほとんどがローラーを用いて施工されるところ、建具枠や、カーテンボックスの正面から見て幅25mmほどの部分(見付)のような細幅部分は刷毛塗りとしなければならない。この部分の刷毛塗りが丁寧でない場合は仕上がりがよく見えないので注意して確認することを提言した。
ウ 安全設備他
外部足場撤去をほぼ完了し、内部吹抜部に足場が一部残っている。場内の整理整頓も問題なく実施されていた。仮囲い、事務所などの仮設建物、安全掲示板などの整備もされていた。内部足場や脚立などは高さがそれほどないが、墜落により重大事故につながることがあるので、最後まで油断のないように施工されることを望む。
(8) 結び
曲線や斜面を利用した設計であり、鉄骨造での施工は、水仕舞や仕上げ詳細の納まりなど相当手数がかかったものと思われる。また、外構工事、設備工事、電気工事などの器具取付け調整がこれから実施されるところである。完成引渡しまでに、漏水、結露、設備との調整不足がないか、外部への排水が滞りないかなどの建設物としての基本性能が満足されるように、今後の工程で細かくチェックされることを望む。