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岸和田城庭園(八陣の庭)整備計画
岸和田城庭園(八陣の庭)整備計画を策定しました。
本計画は、国指定名勝岸和田城庭園(八陣の庭)が有する価値を確実に継承していくために、基本的な整備の方向性と保存・活用の方針を示したものです。
本庭園は、庭園研究家であり作庭家であった重森三玲(しげもりみれい)氏によって昭和28年に作庭された枯山水庭園で、石組のテーマとなっている「八陣法」には、平和を念願とする意味が込められています。また、360度どの方向からも鑑賞できること、さらに昭和29年に建築された岸和田城天守閣からも俯瞰的に鑑賞ができ、さらに庭園の景色として天守閣を位置付けていることから、庭園と天守閣は強い関係性があることがわかり、日本の庭園史上類をみない独創的な庭園であると言えます。
本計画により、城下町である岸和田のもつ歴史・文化等を守り、郷土への愛着を育むことで、岸和田城庭園(八陣の庭)と岸和田城をよりよい形で後世へ伝えていくことをめざします。
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岸和田城庭園(八陣の庭)整備計画 [PDFファイル/49.42MB]
本書内容 はじめにより引用
岸和田城庭園(八陣の庭)が作庭されて 70 年になります。この庭園は、先の
大戦後、児童公園を設置する計画がだされた岸和田城跡をまもるため、市長が、
当時の代表的な作庭家である重森三玲氏に設計施工を依頼し“高度に傑出した
名庭園”を造ることにより城跡を永遠に保護する目的がありました。この庭園
の存在が、岸和田城 400 年の歴史に現代までの連続性をもたらし、その歴史的
重層性がこれまでとこれからの岸和田城と庭園の価値となるのです。
庭園は名勝指定後、『岸和田城庭園(八陣の庭)保存活用計画』が策定され
ています。その策定過程で、庭園の枢要な構成要素である石組を構成する景石
の劣化が進んでいることがわかりました。そのような状況下、八陣の庭を“永
遠に”保存し、後世に確実に引き継ぐための補修等に取り組んできました。
このように八陣の庭を補修し、作庭意図を含め調査研究をすすめる過程にお
いて、景石、庭園だけではなく天守閣、城跡を含めて整備検討することが、
庭園を維持管理する中でも重要であることがわかり、この岸和田城庭園(八陣の
庭)の整備計画をまとめることとなりました。本整備計画の主旨は、ハード的
なものを新たに加える整備は少なく、むしろ減らしていく計画です。それは作
庭後 70 年を経て、徐々に変容した庭園を、重森三玲の意図した世界観へと戻す
ための計画であるためです。
こうした文化遺産をよりよい形で後世に引き継ぐことは、現代に生きる者の
責務です。文化財の継承は、地域の核となり、観光や岸和田の周知に必須なも
のです。