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里山について
里山ってどんなところ?
里山とは、一般的に人里に近い集落周辺の低山地域を指し、雑木林や竹林、ため池、水路、田畑や鎮守の森などで構成されたところをいいます。そして、人が生活を営むうえで、食糧や生活材料、資材、燃料を供給してくれる大切な場所でした。
最近は「里山」が山だけを指す言葉ではないので、「里地里山」という呼び方をすることも多くなりました。
里山と人とのかかわり
現在はあまり目が向けられなくなってしまった里山も、むかしは人の生活と深くかかわっていました。むかしは、農耕で土地がやせてしまうのを防ぐために、集落の近くにある山や森林から落ち葉などを集めて、堆肥として田や畑に使っていました。また、山に落ちている枝などはたき木として使われ、かまどやいろりで燃やされたあとにできた灰も、肥料として田んぼや畑にまかれていました。このように、里山は人の生活に不可欠なものとして、人の手が加わりつづけてきたことで成り立ってきた山なのです。また、この関わりが人と自然のおりなすふるさとの風景を育ててきた、とも言えます。
里山の今
しかし近年になり、
- 電気やガス、石油などの供給がすすんだこと
- 化学肥料などが使われるようになったこと
- 木材、竹などにかわって、プラスチックや金属でできたものが使われるようになったこと
などにより、むかしあった里山と人のつながりはとだえてしまいました。そして、人も山に入らなくなったため管理が行き届かず、だんだんと荒れてくるようになってしまいました。
里山の管理が行きとどかなくなると、つる性の植物が生い茂ったり、ササが繁茂したりし、人の入ることができないような状態になっていしまいます。また、タケノコ生産のためにあった竹林もその生産がされなくなってきているために放置され、密生した竹やぶになってきています。
このように里山がつる性植物におおわれ、放置された竹やぶの拡大が進んでいくと、景観面からみて山の自然美が失われるだけでなく、暗く動植物の種類も単調な山になる場合が多くなります。
たとえば・・・
・つる性植物が増える
⇒つるが樹木をおおい、もともとある木が枯れたり、元気がなくなったりする。
・ササが繁茂する
⇒森林の地面に日がささなくなり、草花や背の低い木が育たなくなる。
・竹林の拡大・密生
⇒周辺地へ四方八方に広がり、竹だけの林になってしまう。
暗く植物の種類が単調な山になると、そこにすむ生きものの種類も単調になってしまいます。これは、人が自然から受ける恩恵の減少につながってしまう心配があります。
密生した竹
里山を考えよう
里山はむかし、燃料や材料、肥料などを得るために人の生活と密接に結びついていました。しかし、それらをあまり必要としなくなった今、里山の荒廃を食い止め、蘇らせることに何の意味があるのか、という疑問を持つ人もいるかもしれません。
しかし、私たちはしらずしらずのうちに、里山からいろんな恩恵をうけています。里山がなければ普段の生活に困ってしまう可能性があるのです。
生きものの玉手箱
里山には、多種多様な動植物がいて、土壌動物や微生物などを含め豊かな生態系をつくっています。これらの生きものを育む環境は人工的にはつくり難いものです。
また、レッドデータブックに記載されている多くの希少な動植物は、里山的環境がなければ生きていけないと言われています。
⇒野生の動植物は食や薬品、資材、燃料、文化など、多方面で私たちの良きパートナーとして無くてはならないものです。(これは生物多様性保全の面から見てもも大切なことです。)
たくさんの環境保全能力
健全な里山は、温室効果ガス(二酸化炭素)の吸収、大気や水の浄化、高温化する都市気候の調節、保水力の向上、草や木の根株で土砂崩れの防止など、いろいろな力をもっています。
⇒里山は目に見えないところで、私たちの生活を守ってくれていると言えます。
大きな可能性を秘めた生産機能
化石燃料の消費などによる地球温暖化の問題が顕在化している中で、里山の森林は、伐採しても再生能力があるため、持続的な利用ができる資源となります。
⇒木材や燃料の安定的な供給の場として潜在的な力を秘めています。
文化の伝承
里山は、人の生活と密着してきたことにより、多くの知恵(炭・食材・ものづくり)を育んできた場所でもあります。自然とともに生きてきた先人の知恵と文化を伝承していく場としても重要です。
⇒里山の自然とともに培ってきた地域の文化を知り、伝えることにより、伝統を守ることができます。
レクリエーション・学習・交流の場
里山は、身近にある生きものとのふれあい、自然を通じた人と人の交流など、現代社会にある精神的なストレスなどを解消する一つの場となります。また、年齢を問わず自然環境を学ぶことにより、豊かな心を育むことができます。
⇒里山の保全は、人々の憩いの場所や自然を学ぶ場の創造とともに、地域づくり・人づくりにつながります。