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定期監査の結果(平成30年5月実施分 福祉部・魅力創造部・農業委員会事務局)
第1 監査の対象
1 対象事務
平成29年度事務事業(平成29年4月1日から平成30年2月28日まで)。ただし、必要に応じて平成28年度を含む。
2 対象部課
(1) 福祉部(福祉政策課、障害者支援課、広域事業者指導課、生活福祉課)
(2) 魅力創造部(産業政策課、農林水産課、観光課、文化国際課)
(3) 農業委員会事務局
第2 監査の主な実施内容及び着眼点
監査対象部課等における財務に関する事務(収入事務・支出事務・契約事務・補助金交付事務・財産管理事務等)が、法令等に従い適正に執行されるとともに、公正で合理的かつ効率的な事務運営を行っているかどうかに留意し、岸和田市監査等の基準及び事務処理に関する規程に基づき策定した平成30年度一般会計・特別会計に係る定期監査実施計画に定める監査の着眼点について、実査、証憑突合、帳簿突合、計算突合、質問、閲覧により行った。
第3 監査の実施場所及び日程
1 実施場所
監査委員室
2 日程
(1) 調査期間 平成30年4月11日から平成30年5月22日まで
(2) 監査実施日 平成30年5月22日
第4 監査の結果
各部の事務事業の執行は、おおむね適正に処理されているものと認められたが、一部、指摘事項又は注意を要する事項が認められた。また、前回の定期監査における指摘事項及び注意を要する事項については、一部改善されていないものが認められたため、下記の判断基準(11)により、指摘事項とした。
指摘事項については、是正・改善の必要があるため、適切な措置を講じられたい。なお、措置を講じたときは、遅滞なく通知されたい。また、各課において指摘された事項については、部内においても確認し、再び誤りが生じないよう適切な事務処理に努めるとともに、注意を要する事項についても、部課内の管理点検体制を確認し、今後の事務執行に十分留意されたい。
指摘事項及びその他部内における注意を要する事項と判断した基準は、次のとおりである。
指摘事項 (1) 市に損害を与えている、又は損害を与える恐れがあるもの (2) 収入確保に適切な措置を要するもの (3) 予算を目的外に支出しているもの (4) 不必要な予算執行をしているもの又は損害を生じているもの (5) 法令や条例、通達等に違反しているもの (6) 契約や協定等に反しているもの (7) 機関の意思決定が適切になされていないもの (8) 書類の隠匿や改ざんその他の故意による違反行為があるもの (9) 重大な過失又は著しい怠慢によって誤りを生じているもの (10) 正確性、経済性、効率性又は有効性の観点から改善を要するもの (11) 前回、指摘事項又は注意を要する事項とした事項のうち、是正・改善されていないもの (12) その他、不当又は適正を欠く事項で指摘が適当であると認められるもの |
その他部内における注意を要する事項 (1) 不当又は違法ではないが適切でないもの (2) 執行機関等に改善・検討などを促し、又は注意を喚起することが必要と認められるもの (3) 上記の指摘事項以外で、金額、手続、処理、方法等から見て比較的軽微な誤りと認められるもの |
1 福祉部
(1) 福祉政策課
老人保護措置費負担金等の収入事務、岸和田市高齢者緊急通報機設置業務委託契約等の契約事務、社会福祉事業団体運営助成金等の補助金交付事務等について、関係書類等により調査した結果、次のとおりである。
ア 指摘事項
岸和田市立福祉総合センターに移管された備品について、確認した複数に備品ラベルが貼付されていなかった。また、備品台帳に記載されている取得金額に一部誤りがあった。(判断基準 (5))
(2) 障害者支援課
特別障害者手当等負担金等の収入事務、身体障害者相談支援事業委託契約等の契約事務、社会福祉事業団体運営助成金等の補助金交付事務等について、関係書類等により調査した結果、次のとおりである。
ア 指摘事項
(ア) 平成29年5月支給決定分の鍼灸・マッサージ療養費の支払いにおいて、振込額に一部誤りがあった。(判断基準 (5))
(イ) 公費医療助成(障害者医療・老人医療)の費用負担額の算定については、障害者支援課と健康保険課との間で費用負担額を協議・調整し、決定することとなっているが、一部被保険者に高額療養費の多数回該当が適用されていない計算がされていたため、それぞれの費用負担額の算定に誤りがあった。(判断基準 (5))
(3) 広域事業者指導課
広域福祉共同処理事務費負担金等の収入事務、旅費等の支出事務、指定事業者台帳管理システム改修業務委託契約等の契約事務等について、関係書類等により調査した結果、次のとおりである。
ア 指摘事項
(ア) 社会福祉法人会計監査員については、特別職の職員で非常勤の者の報酬及び費用弁償に関する条例第5条、別表第3号の表で、旅費の額は職員旅費条例に定める旅費相当額と規定されており、職員旅費条例施行規則第4条第1項第1号の規定により、居住地等の起点から他の都道府県へ出張する際には、その日数に応じ、1日当たりの定額により日当を支給することとなっているが、支給されていなかった。(判断基準 (5))
(イ) 時間外勤務命令事務において、人事異動した職員が異動前の課の業務に従事したものについて、給与システムへの予算科目等に入力誤りがあったもの、また、超過勤務命令簿への出力漏れを確認できていなかったもの、時間外勤務(計画書・命令書・実績報告書)の実績報告欄の実施日に誤りがあるものがあった。(判断基準 (5)(11))
(4) 生活福祉課
生活保護費返還金等の収入事務、生活保護システムマイナンバー保守業務委託契約等の契約事務、社会福祉事業団体運営助成金等の補助金交付事務等について、関係書類等により調査した結果、次のとおりである。
ア 指摘事項
(ア) 岸和田市財務規則において、生活福祉課の出納員に委任されている事務は行旅死亡人等の取扱いに要した費用に充てるための現金及び有価証券の収納と規定されているが、委任されていない生活保護費の返納金を現金で取り扱っていた。(判断基準 (5)(11))
(イ) 生活保護費の返納金について、窓口で現金の授受を行う際の領収書が、岸和田市福祉事務所長名で交付されており、その領収書には通し番号が振られておらず、書損じ分も保管されていなかった。また、平成29年9月20日に領収書を1,000枚作成しているが、平成30年5月17日現在で作成日以降に交付した領収書控と未使用分とを合わせて948枚は確認できたものの、残りの52枚は確認できなかった。(判断基準 (5))
(ウ) 消耗品費の支出をする際に、請求書の相手方の確認が不十分であったため、誤って違う相手方に支出したものがあった。(判断基準 (5))
(エ) 在庫管理を適切に行い、計画的に購入すべき消耗品の購入について、立替払で支出していたものがあった。(判断基準 (5))
(オ) 平成26年度から平成28年度に福祉事務所に届いていた生活保護費の請求書複数件について、平成29年度に支払っていたものがあった。(判断基準 (5))
(カ) 生活保護決定の遡及変更に伴う生活保護費の過支給分について、支給年度内に返納されたものは歳出予算に戻入し、支給年度の翌年度以降に返納されたものは、返納された年度の歳入とするところ、全て歳出予算に戻入していた。(判断基準 (5))
(キ) 時間外勤務命令事務において、給与システムへの入力に誤りがあるもの、時間外勤務(計画書・命令書・実績報告書)の命令欄に記載のないもの、課長押印のないもの、承認欄に課長押印のないもの、超過勤務命令簿に課長押印のないものが複数件あった。(判断基準 (5)(11))
(5) その他部内における注意を要する事項
ア 取得価格5,000円以上の備品については、備品台帳に記載しなければならないが、記載のないものがあった。備品は適切に管理されたい。(判断基準 (3))
イ 契約事務において、契約保証金免除の引用条項の誤り、支払遅延利息の利率が不適切なものがあった。また、随意契約の根拠法令や理由の記載のないものがあった。契約事務を行う際には、契約内容を十分に確認し、根拠法令等を明確にして適切に事務を行われたい。(判断基準 (1))
2 魅力創造部
(1) 産業政策課
産業会館使用料等の収入事務、岸和田市異業種交流会コーディネート業務委託契約等の契約事務、岸和田市産業集積促進助成金等の補助金交付事務、岸和田市立産業会館の指定管理業務等について、関係書類等により調査した結果、次のとおりである。
ア 指摘事項
(ア) 岸和田市立産業会館の管理については、岸和田商工会議所が指定管理者として業務を行い、使用料の徴収についても委託契約に基づき指定管理者が行っている。使用料については、岸和田市立産業会館条例に定められているが、誤って過少に徴収され、市へ納付されたものがあった。また、基本協定書において、指定管理者は、使用料として徴収した現金を当日もしくは翌日に岸和田市指定金融機関に納付することになっているが、平成29年3月31日に徴収した使用料を平成30年4月23日に納付していた。基本協定書に基づき、指定管理者から毎月終了後、業務報告書や使用許可申請書が提出されているが、それについて適切に把握がなされず、必要な措置がとられていなかった。(判断基準 (5)(6))
(イ) 岸和田市立産業会館の平成29年9月使用分として、平成29年3月に使用を許可し、平成28年度の歳入として使用料を徴収したものについて、平成29年8月に使用許可取消しの申出があり、岸和田市立産業会館条例第8条及び同施行規則第8条の規定に基づき還付をしているが、過年度分として歳出予算から還付すべきところを歳入から還付していた。(判断基準 (5))
(2) 農林水産課
農業用施設敷地使用料等の収入事務、岸和田丘陵地区計画変更資料作成業務(29)委託契約等の契約事務、岸和田市耕地事業補助金等の補助金交付事務等について、関係書類等により調査した結果、次のとおりである。
ア 指摘事項
(ア) 領収書を無効とした場合は、破棄せず控えと領収書の原本を一緒に保管することになっているが、農地等証明手数料の領収書について、無効とした領収書の原本が保管されていなかった。(判断基準 (5))
(イ) 職員旅費条例では、実費を超えることとなる部分の旅費を支給しないことができるとされており、通勤手当が支給されている区間については旅費を支給しないこととしているが、減額する区間を誤ったため、旅費の支給額に不足が生じていた。(判断基準 (5))
(3) 観光課
岸和田だんじり会館入場料等の収入事務、岸和田駅前観光案内所機械警備業務委託契約等の契約事務、岸和田地車祭保存会助成金等の補助金交付事務等について、関係書類等により調査した結果、次のとおりである。
ア 指摘事項
(ア) 岸和田城条例施行規則、岸和田だんじり会館条例施行規則では、市長が指定した証票の提示があったときは、入場料を減免するものとされており、市長が証票を指定したときは、市ホームページで公表することになっているが、岸和田城について、公表されていなかった。また、岸和田だんじり会館について、公表されていないものがあった。(判断基準 (5))
(イ) 岸和田市観光振興計画推進事業助成金交付要綱では、実績報告書には、事業の実績を記載した書類を添付することとなっているが、岸和田市観光振興計画推進事業(まち歩き観光推進事業)助成金の実績報告書に添付されていなかった。(判断基準 (5))
(4) 文化国際課
文化会館使用料等の収入事務、岸和田市立文化会館空調設備保守管理業務委託契約等の契約事務、岸和田市国際親善協会補助金等の補助金交付事務等について、関係書類等により調査した結果、次のとおりである。
ア 指摘事項
(ア) 平成30年2月3日分の文化会館使用料について、23万8,420円の調定を行うべきところ、誤って2万3,842円の調定を行っていた。(判断基準 (5))
(イ) 岸和田市市展委員会の委員報酬については、特別職の職員で非常勤の者の報酬及び費用弁償に関する条例第4条第3項で、報酬はその都度支給するとなっているが、平成29年8月25日に開催された岸和田市市展委員会の委員報酬を平成30年1月26日に支給していた。(判断基準 (5))
(5) その他部内における注意を要する事項
契約事務において、契約保証金を免除しているが、根拠法令の記載のないものや引用に誤りがあるものがあった。また、随意契約の根拠法令の記載のないものがあった。契約事務を行う際には、根拠法令等を十分確認し、適切に事務を行われたい。(判断基準 (1))
3 農業委員会事務局
農地等証明手数料等の収入事務、農地基本台帳システム保守業務委託契約の契約事務、委員報酬等の支出事務等について、関係書類等により調査した結果、おおむね適正に処理されているものと認められた。
第5 意見
福祉政策課の業務のうち、高齢者の生きがいと健康づくり推進事業、高齢者趣味の作品展事業について、既に介護保険課が地域支援事業交付金を大阪府から受けているにもかかわらず、在宅高齢者福祉対策補助金としても6年にわたり重複して補助金を受領していた件について、合計973万2千円を大阪府へ返還するとして平成30年2月2日に報道発表がなされた。市役所内の機構再編による事務の役割分担について、担当部署間での情報共有不足が原因ということであるが、岸和田市行財政再建プランにおいても示されているように、今後、財政推計が厳しい状況が見込まれている中、今回の返金の影響は大きい。今回の事例を踏まえ、他課においても歳出事業における充当財源の確認を行い、庁内の連携を密にすることで、市として再び同じ誤りを起こさないよう管理点検体制の整備を行われたい。
また、生活福祉課においては、生活保護費の返納金について、窓口での現金の授受があったことが今回判明した。前回の定期監査において、岸和田市財務規則に出納員が設置されていないにもかかわらず、行旅死亡人遺留金の収入事務を行っていたことから、指摘事項とし、当該事務について出納員を設置した旨の措置通知が当職になされている。しかし、実態はそれだけではなく、生活保護費の返納金も取り扱っていたことから、当然同時に規則改正がなされるべきものであった。さらに、生活保護費の返納金については、現金の授受を証明する領収書の使用について、管理が適正になされていない状態であった。領収書の取扱いについては、不正防止の観点から、これまでも他課において、再三指摘事項とし、注意を促してきたところである。生活福祉課については、早急に課内業務の実態を把握し、現状に危機感を持って、直ちに事務改善を図ることを強く要望する。