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第28回 濱田青陵賞 受賞者決定

印刷用ページを表示する 2015年9月15日掲載

第28回濱田青陵賞受賞者の決定について

平成27年(2015)度、第28回濱田青陵賞の受賞者は、朝日新聞大阪本社で行われた濱田青陵賞運営協議会並びに選考委員会において、慎重な審議の結果、奈良大学学長千田嘉博(せんだよしひろ)氏に決定しました。  

授賞式式典および記念シンポジウムは9月22日(国民の休日火曜日)午後1時00分より岸和田市立文化会館(マドカホール)で開催いたします。

これまでの受賞者はこちら

受賞者の紹介

受賞者氏名  

 千田嘉博

 千田 嘉博

経   歴   

1963年  愛知県生まれ

      奈良大学文学部文化財学科卒業

1993年  名古屋市教育委員会見晴台考古資料館勤務 

      国立歴史民俗博物館考古研究部助手

      奈良大学文学部文化財学科助教授を経て  

2000年  大阪大学博士号取得(文学)   

現 在  奈良大学学長

主な論著

  • 『十三湊遺跡・福島城跡の研究』共著 国立歴史民俗学博物館研究報告第64集(1995)

  • 『織豊系城郭の形成』東京大学出版会(2000)

  • 『戦国の城を歩く』ちくま書房(2009)

  • 『日本100名城の歩き方』河出書房新社(2010)

  • 「日欧城郭比較論」『武士と騎士』思文閣出版(2010)

  • 『信長の城』岩波新書(2013)

受賞理由

わが国における城郭の考古学的研究を新たに開拓しその確立と発展に寄与した。 

    戦国期までの城郭が平面的な構造をもったのに対し、織田信長・豊臣秀吉の時代には、本丸や天守を頂点とした階層性を備えた近世的な城郭へと急激かつ画期的な転換を遂げた。一般にイメージされる石垣や天守、大規模な御殿を備えた城郭の成立である。そうした城郭の変化は、大名を頂点にした権力構造の変化に伴って出現し、天下統一の過程で全国の諸大名がそれを共有したことで、近世城郭として日本列島に一斉に普及したことを明らかにした。こうして中世城郭から近世城郭への変遷を連続的に理解できるようになり、城下町の成立過程などを、城との関わりで分析することが可能になった。

  従来、城郭の研究は、平面的な設計である縄張りや、本城と支城との関係など、軍事史的な視点によるものか、石組・石垣など部分の構造に着目した研究が中心であった。千田氏の研究は、旧弊を打破する初めての考古学による本格的、総合的な城郭研究モデルが提示されたと言ってよい。

 特に千田氏が『織豊系城郭の形成』で提唱した「織豊系城郭」は、考古学のみならず文献史学や歴史地理学、建築史学などにも影響を与えるものであり、近世城郭を考える共通基盤となっている。やがて、今日の日本列島の主要都市として継承された「徳川の城」への移行を描き出した点は、画期的な研究といえる。

 また古文書や「ルイス・フロイス」の書簡などの文字史料と、絵図・地図資料を駆使しながら、草木に埋もれた城跡を探査して遺構を観察する広義の考古学とともに、発掘調査による考古学の新しい成果を組合せて、不明な点の多い日本各地の城について考察を行った点は、千田考古学の面目躍如たるものである。 

 さらに、国際的な城郭の比較研究による、新たな学術交流の推進も注目される。ヨーロッパ、ニュージーランド、モンゴル、中国、ロシア、韓国など世界各地の城との具体的な比較を進めることで、日本の城がもつ特質を世界的視野で捉え直した。東アジアやヨーロッパで発達した壁を主体にした城郭都市、武器の発達によって促されたヨーロッパの城郭など、一見、世界の城と日本の城とは大きく異なるところがある。しかし堀や城の出入口形態などには、人類史上に現れたさまざまな城に一貫した法則性があり、日本の城も特異なだけではなく、共通性と普遍性を備えたとした。また豊臣秀吉による文禄・慶長の役(壬辰・丁酉倭乱)に際して築かれた韓国の「倭城」を調査し、両国の交流を図るなど国際的な貢献も大きい。

 加えて現在、奈良大学の学長という重責を担いながら、積極的にこれまでの研究成果を出版し、わかりやすく広く社会に還元する活動も行っており高く評価される。

以上のことから濱田青陵賞選考委員会は、千田嘉博氏を第28回濱田青陵賞受賞者として選定するものである。