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岸和田のむかし話7 牛滝川周辺の話・(6)雷石(稲葉)

印刷用ページを表示する 2009年3月3日掲載

 稲葉(いなば)の菅原(すがわら)神社に、えらい力持ちの神主(かんぬし)さんがおった。誰と相撲(すもう)とっても負けたことがない。口惜(くや)しがった若い者(もん)が3人、いっぺんにかかっていったけど、てんで歯ぁもたたん。3人とも目ぇまわしてしもた。
 うちらの神主さんはノミノスクネの生まれ変わりや、いうて、もう誰も相手になる者(もん)はおらんかったそうな。
 夏のある日。
 急に天地が暗(くろ)なったと思うと、ものすごい夕立がきた。ドロロドロロと雷が鳴り、稲妻(いなづま)光り、桶(おけ)ひっくり返したような大雨や。
 神主さん、傘(かさ)もささずに庭へ降りると、目ぇむいて天をにらんだ。
 「雷のやつ、今年はほんまによう暴(あば)れよる。木は倒れるわ、大水はでるわ、村ん中はもうむちゃくちゃや。いっぺん、とっ捕(つか)まえてヤイトすえたらな」
 その神主さんの目の前へ
 ガラガラドッシーン!
 雷が落ちた。真っ白い砂敷(し)いた境内(けいだい)に大穴(おおあな)あけて、めり込んだ。
 「しめた」
 神主さん、庭の大石えいとばかりに持ち上げて、穴の口を塞(ふさ)いでしもた。
 びっくりしたのは雷や。
 「こらぁ、何するんやぁ。石どけぇ!」
 大暴(あば)れに暴れたけど、大石はぴくりとも動けへん。
 閉口(へいこう)した雷は、おんおん泣いて謝(あやま)った。
 「よっしゃ。堪忍しちゃるよって出てこい」
 やっと石どけてもろた雷が、べそかきもって神主さんの前に座った。
 「雷よ。ただでは天へ帰らせへんでぇ。お前のこわしたもん、みぃんな元通りに直していけぇ。俺(わし)も手伝(てつと)うちゃるよってなあ。」
 それから神主さんと雷は一生懸命働いた、働いた。神於山(こうのやま)からでっかい木ぃかついできて橋を直した。倒れた塀(へい)や松の木引き起こした。田んぼの畦(あぜ)直した。稲も起こした。そやけど、お宮の石段やら石垣直すのは大変やった。崩(くず)れた大石一つ一つ、きっちりと積み直さんならん。夜になっても働いた。真夜中過ぎても終われへん。
 コケコッコ―
 一番鶏(どり)が鳴き、二番鶏(どり)、三番鶏(どり)が鳴いて、神於の山のてっぺんがぼうっと明るくなった頃、やっと終わった。
 「雷よ、よう働いたなあ。もう済(す)んだよって、天へ帰ってもええでぇ」
 「あかんわぁ・・・」
 雷はくたくたと地べたに座り込んでしもた。
 「腹へって、腹へって、とても天へは帰られへん」
 そらもっともや、と神主さん、いそいでお供(そな)えのお餅(もち)持ってきてやった。大きなお盆(ぼん)に山盛(も)りのお餅や。雷は喜んで、食うたも食うたも100個ぐらいは食うたやろ。
 いざ帰ろとしたら、お腹ぱんぱんで動かれへん。

雷石の挿絵

 「世話のやける雷やなぁ。そんなら、腹ごなしに俺(わし)といっちょ相撲(すもう)とろやないか。さあこいっ」
 神主さんと雷は、どっかぁんとぶつかりあって、よいしょ、よいしょ、はっけよい、ともみあったけど、やっぱり神主さんの方が強かった。虎の皮のしましまふんどしつかまえて、
 「ええい!」
 と空へほり投げた。雷は飛んで飛んで、やっとこさ黒雲の端(はし)にしがみつき、さいならーとも言わずに逃げていってしもた。
 この時、神主さんが雷を閉じ込めた石が雷石(かみなりいし)で、今もお宮の境内にのこってるんやてぇ。


※ この「岸和田のむかし話」は市制70周年を記念して平成4年11月に刊行された本をWeb化したもので、岸和田に伝わる昔話や、発刊時に創作された話を収録しています。
あくまでも昔話ですので、必ずしも史実に基づいているものではありません。

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