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風物百選 20 大漁旗

印刷用ページを表示する 2009年3月3日掲載

大漁旗の油彩油彩 三田 肇

 元旦に、岸和田旧港に足を向けると、大漁旗がたくさん雄々しくはためいている。そして、今なお漁民に受け継がれている乗り初めの習俗に出会う。旗をよく見ると、地方のどこにでも見られるそれに交じって、「武者人形」や「八幡大菩薩」などと染めぬいたのぼりが目につく。城下町岸和田の漁村だった故であろうか。
 昔、大漁の時、大漁旗を揚げて船が浜へ帰ってくるのは、満載しきれなくなった魚類を他の船に転載してもらうための合図だったとか。昨今は、ほとんど見られなくなった風景である。今日、大漁旗を揚げるのは、新造船の船おろしと、正月の乗り初めくらいであろう。
 乗り初めの準備は、まず青々としたササ竹を手に入れることから始められる。そのササに大漁旗やのぼりをたてる。年の瀬も押し迫った寒い日、生ダイ二匹をわらに通して懸(かけ)の魚(いお)をつくる。この懸ダイを一年中、家の神棚に供え、航海と大漁の守り神とするのである。同時にしめ飾りとすわりダイも用意しておく。
 元旦の早朝、家族で雑煮を祝う前に、漁師たちはまず先に自分の漁船で、乗り初めの儀式を行う。父と子は、御膳箱に入れて持って来た洗い米・雑煮・すわりダイを船霊(ふなたま)さん(中央の帆柱)に供える。父は舷(とりかじ)にお神酒をあげる。子は父のすることをじっと見ている。それらが済むと、二人して船霊(ふなたま)さんの前に座り、手を合わせて新年の航海安全と大漁とを祈願する。海の荒くれ男が見せてくれる敬けんな一瞬である。
 海原を飛翔(ひしょう)するカモメの白い群れ。ササの青。冬空に舞う色とりどりの大漁旗とのぼり。それらは、荒れくるう海にいどむ勇ましい漁師の姿にも似て、大漁を願う人々の心に大きな夢と希望を持たせてくれる。漁船が動力化され、漁具が機械化されても、漁民の心に受け継がれている素朴な信仰や習俗をいつまでも伝承したいものだ。

文  小藤 政子

資料

 漁港の魚船溜りに、出漁・荷揚げの忙しい一ときがすぎる。船おろしや、紋日、大漁のとき、満艦飾の大漁旗を潮風にはためかせてもやう漁船が見られる。

交通

 南海岸和田駅から北西900メートル


 この「岸和田風物百選」は、岸和田市の市制60周年記念事業の一つとして昭和58年(1983年)に制作されました。

 そのため、内容が古くなっている部分もありますが、交通手段を除いて、原本に忠実に再現しています。これは、実際に現地を訪れた際に、この間の時の移り変わりを感じていただければとの考えからです。