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風物百選 12 岸和田市役所

印刷用ページを表示する 2009年3月3日掲載

岸和田市役所の油彩油彩 辻 常次郎

――ミュージックサイレン――
 夕方の六時。私は大抵、台所に立っている。換気扇や水道の音の中で時折オルゴールの音を聞く。市役所が時報がわりに流している「荒城の月」だと気づいたのは、いつのころだったろうか。
 ある日の正午、市役所にいた。突然、ウウッーというけたたましい音が鼓膜を突き刺す。そのあと「くつが鳴る」のメロディー。我が家で聞くかそけき音の流れとはまるで違う。毎日、耳のそばで聞かされる人は、たまったものではないなと思った。
 ところが、正午になっても、6時になっても、オルゴールが聞こえない日が続いた。風向きのせいかなと気にもとめないでいたが、ある朝、新聞を広げると『名物ミュージックサイレン、5カ月ぶりに修理終わり復活』とのことである。うるさいと迷惑がられることもあるが、やはり復活を喜ぶ人が多いという記事であった。
 この地で生まれ育った友人は、子供のころの話を聞かせてくれた。かくれんぼで玉ねぎ小屋のわらの中に隠れていても、6時のオルゴールが聞こえると、はい出してきて家に帰った。鬼はもちろん、探すことをやめて家へ帰る。あの音は「また、明日ね」という合図だった……。そういうふうに育ってきたからこそ、毎日、耳のそばで聞かされても騒音苦情にはならず、府下でただひとつ28年間も鳴り続き、故障が続くと復活を望む声が出てくるのだろう。サイレンを日常生活の節として、すっかり根を張らせてしまっている岸和田の人々なのである。
 家の周りにまだまだ田畑が残っていても、我が家の子供たちはもうわらの中では遊ばない。この子たちは、あのオルゴールをどんな思いで聞いているのだろう。大きくなった時、騒音だ、うるさいと思うのではなく、岸和田の人々の細やかな人情とともに、体の中に溶けこませていてほしいと願う。

文 白野小由利

資料

 大正11年11月1日、府下3番目、全国87番目の市として誕生。大手町の一倉庫を仮庁舎とする。人口2万673人。翌12年市庁舎が完成、昭和16年に現在地の泉南郡役所跡に移転。現在の庁舎は旧庁舎を取りこわして昭和30年に新築される。

交通

 南海本線蛸地蔵駅から北400メートル


 この「岸和田風物百選」は、岸和田市の市制60周年記念事業の一つとして昭和58年(1983年)に制作されました。

 そのため、内容が古くなっている部分もありますが、交通手段を除いて、原本に忠実に再現しています。これは、実際に現地を訪れた際に、この間の時の移り変わりを感じていただければとの考えからです。