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泉州ゆかりコレクション第11弾「物語の中の泉州~一休和尚と地獄大夫~」展を開催しています【図書館発】
図書館(本館)2階 郷土展示コーナーにて開催中です。
室町時代を生きた一休和尚が堺高須の遊女「地獄太夫」を久米田寺に葬ったという話をご存じでしょうか。江戸の町民文化華やかかりし頃、活躍した著名な戯作者である山東京伝が描いた『本朝酔菩提全伝』の中に納められた話です。
主人公の一人である一休和尚は南北朝の戦乱から応仁の乱という不安定な時代を生き、京都で修業を積んだ後に堺や住吉を中心に泉州一帯に足跡を残しています。風狂の僧と呼ばれるように仏教の枠に収まらない日頃の言動から権威を重んずる向きには嫌われた反面、堺の民衆には人気があったようで、多くの豪商の帰依を受け応仁の乱で荒廃した大徳寺を復興させるという事業をやり遂げるなど仏教界にも大きな足跡を残しています。
そんな一休和尚も、いつからか「とんちの一休さん」としてアニメなどの影響が大きく小坊主の一休さんとしてのイメージが定着しています。その前段階として江戸時代には大人の一休さんが主人公になった「一休はなし」や「一休諸国物語圖會」「一休蜷川 狂歌問答」など数多くの類書が作られ好評を博します。大正・昭和の時代の人気芸能であった講談の演目にとりあげられより民衆に親しまれる存在となります。そんな背景があるなかで絵本やアニメに「小坊主姿の一休さん」が登場しそのイメージが一気に広がっていきました。今回の展示では、最初に一休和尚の実像を紹介し、次に多くの逸話を集めた噺集が創作され「とんちの一休さん」像が形成されていく過程を資料で紹介したいと思います。
最後は「地獄太夫」との逸話です。山東京伝が創作した『本朝酔菩提全伝』の内「地獄太夫」に関わる部分を一陽斎(歌川)豊国が描いた挿絵を中心に紹介いたします。一休和尚と地獄太夫の話は江戸末期から明治にかけて人気となり、歌舞伎や講談の演目にも取り上げられます。その人気を反映して多くの画家が浮世絵の画題に取り上げました。ほんの一部ではありますが今回は10点展示いたします。歌舞伎の場面を描いた役者絵も数多く描かれていますが特に坂東彦三郎の地獄太夫は当たり役だったようで多くの絵が残されていますが今回も2点展示しています。
山田風太郎の初期短編集には『本朝酔菩提全伝』を下敷きにした「地獄太夫」が納められています。一休和尚が先導を務め「地獄太夫」を久米田寺に葬る場面も『本朝酔菩提全伝』と同じように描かれています。
江戸時代のお話の舞台として岸和田ゆかりの地が出てくる数少ない事例だと思います。『本朝酔菩提全伝』を読む機会は少ないと思いますが「山東京伝全集」全20巻が1994年から刊行されようやく本年全巻完結いたしました。山田風太郎の作品や和泉名所図会、堺鑑など今回の展示に繋がる書籍に接する機会には今回の展示を思い出していただければ幸いです。
展示期間
令和7年4月6日(日曜日)までの午前10時~午後6時 ※水曜日のみ午後7時まで
【休館日:月曜日・祝日・年末年始・1/14(火曜日)・図書整理期(2/4(火曜日)~2/11(火曜日)】
場所
岸和田市立図書館(本館)2階 郷土展示コーナー
所蔵・監修
万代 博史 氏(郷土史研究家)
主催・問合せ
岸和田市立図書館 電話(072-422-2142)