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岸和田邸学蔵版『本草綱目啓蒙』(ミニ岸和田再発見第7弾)

記事ID:[[open_page_id]] 更新日:2015年8月4日掲載

 本草学の名著、小野蘭山(おのらんざん)の『本草綱目啓蒙(ほんぞうこうもくけいもう)』が岸和田藩により再刻されたことはよく知られています。この本は、中国の本草学の基本書『本草綱目』についての蘭山の講義録を孫である小野職孝(もとたか)が筆記・整理し、その稿本を蘭山自身が検討したうえで、享和3年(1803) から3ヶ年をかけて48巻・27冊として出版されたものが『本草綱目啓蒙』です。  

 文化3年(1806)の江戸の大火で、初版の版木が焼失したため、再版本が文化8年(1811) ~文政12年(1829) に出版されています。この版木も天保5年(1834)の大火により再び焼失。

 弘化3年(1846)に小野職孝が、岡部長慎(南山公)に同書の初版及び再版の版木が焼失して長らく絶版となっていることを訴え、同書の復刊を願い出ていました。同年12月2日には岸和田藩医師井口望之が職孝を訪問し再刻することを伝え、早くも4日には岡部邸で再刻の相談が始まっています。翌年9月には第四版となる、小野蘭山口授、小野けい畝録、井口楽三重訂「重訂本草綱目啓蒙」48巻20冊が「岸和田邸学蔵版」として出版されました。版権譲渡の費用として二百両が4回に分けて岸和田藩から小野氏に支払われています。

 さらに、南山公は同書に図譜の無いのを惜しみ、井口望之編「本草綱目啓蒙図譜」巻8、巻9、四冊を完成させています。図は、山草部上を藩絵師服部雪斎が、山草部下を同阪本純沢が描いています。両書とも博物画として優れたものですが、山草部上下2巻で終わってしまったのは惜しいことです。この時の版木は、昭和4年に岸和田藩旧蔵品を保管していた岸和田銀行倉庫から発見され、岡部家から東京国立博物館に移り、現在も大切に保管されています。

 活字版としては、「重訂本草綱目啓蒙1~4」東洋文庫(平凡社)、復刻日本古典全集(現代思潮新社)、日本古典全集(日本古典全集刊行会)、等があり、日本古典全集刊行会版の解題の最後には、「本書の板木が先頃発見せられたことが新聞紙に記されてあった。」と記されています。残念なことに活字版には図譜は収録されていません。

 実は、この本は、日本の動植鉱物を研究する人の座右の書であり需要が高かったため、弘化元年(1844) に蘭山の孫弟子にあたる梯南洋によって第三版にあたる『重修本草綱目啓蒙』(全36冊)が出版されています。しかし、これは小野家に無断で出版されたものであり、少部数のみ木活字版で出版されたため広く利用されることはありませんでした。 

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