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内野安彦氏講演会とパネルディスカッションが行われました

印刷用ページを表示する 2015年5月11日掲載

4月11日(土曜日)、内野安彦氏(元塩尻市立図書館長)による講演会とパネルディスカッションが行われました。その一部を紹介します。

 内野氏講演様子 講演会参加者様子

第1部 講演会「ボーダレスな図書館を」

図書館と図書館について

国立国会図書館が全国の図書館が受けたレファレンス(相談)をまとめ、日本中、世界中の人が見れるようにレファレンス共同データベースを作っている。図書館界はすでにボーダレスである。

図書館と出版界について

毎年新刊本は約8万冊出ている。図書館は「借りられるか借りられないか」ではなく、「残しておくべきかどうか」を基準にしないと書店と限りなく同じになってしまう。売れなくても出版点数が少なくても著者や出版社がどうしてもこれだけは伝えたいと作られた良書はたくさんある。このような本にどうやって出会うのか?それは小さな書店では無理である。図書館は出版文化を守る役割がある。

図書館と市民について

アメリカの図書館協会で「図書館権利宣言」が2013年に出された。例として、

「家族の絆を深める図書館」

居心地の良いアットホームな空間と豊富な情報源を通して家族ぐるみで学び、成長して遊ぶ場を市民に提供する。

「地域を創る図書館」

地域住民のコミュニケーションを促進することで、利用者がお互いから学び合いお互いを助け合う場を提供する。

「文化資産の保全に貢献する図書館」

現在過去未来をより深く理解するために、必要な原本の資料を収集し、デジタル化し、保存していく場所であると宣言している。俗にいう地域資料である。そういうものを徹底して図書館が保存をしていくことで新たな歴史からの学びというものを作っていくというところでもある。

図書館の役割はアメリカも日本も同じである。いい図書館を作るには、自治体だけではなく、市民も利用することで責任を果たす必要がある。

第1部の締めくくりとして、「大事なことは、市民の皆さんがどれだけ図書館サービスを知っているかです。図書館は人で決まるとはどういうことか?職員と市民(利用者)のタッグマッチでこれがうまくいけば図書館はものすごくよくなります。施設が古くても予算がつかなくてもできることはたくさんあります。」という先生のお話に、元気をいただきました。

第2部「図書館を便利に使おう~でも、どうやって?」

パネルディスカッション 写真

内野安彦氏とライブラリーアドバイザーの高野一枝氏をパネリストに、和歌山大学名誉教授の堀内秀雄氏をコーディネーターにお招きして、パネルディスカッションが行われました。

内野先生の塩尻図書館館長の時のお話を中心にお話いただきました。

塩尻市立図書館での取り組みは?

塩尻図書館に招聘され、市長にどんな図書館を作りたいか聞かれ、「貸出冊数を伸ばすのではなく、図書館の利用者を増やしたい。」と伝えました。実践として隣の松本市と塩尻市の資料の差別化を実践。松本市にない本を購入するようにしました。結果、新規登録者の4割が市外の利用者でした。なぜか?自分の市にない本が塩尻にあるからです。本屋さんにない本が図書館にあった方がいい。あと、休館日の工夫をしました。たとえば、松本市が月曜に休みなら、塩尻市は水曜日を休みにしました。

職員と市民、図書館は人で決まるという話だったが、エピソードもあればお話ください。

自著「塩尻図書館をつくった人たち」に、この方に図書館を助けてもらった、この人のおかげで今の塩尻図書館があるということを書きました。一例として、塩尻図書館でフランスのシトロエン車しか描かない今村幸次郎の個展をすることになりました。それを聞いたある市民が「シトロエンのミニカーをいっぱい持っているが、個展の時に飾ろうか?」と言ってくれました。それまでは図書館の中にあるものを展示するものだと思っていましたが、「図書館って市民のものなんだ。」そう考えると問題ない。展示した結果、ミニカー好きの人も来館しました。そのコレクションを見た市民が次々にいろいろな展示の提案をしてくれ展示しました。その結果、これまで図書館に来たことのない人が来るようになりました。

さらに、図書館職員より市民の方がすごいものがある。それは地域に関する知識です。職員より市民の方がはるかに上です。関係ができてると次々と新しい情報が入ってきます。今まで悩んでいたことを、どんどん情報として教えてくれる。協調して歩んでいくことで新しい利用者もどんどんやってくる。最初に市長に言った「新規の人を取り入れたい」というところに繋がってくる。それをしたのは私ではなく、実は市民の方だったということです。

だからどうではなく、何かをやるかやらないかで感覚的に違ってきます。一歩踏み出して図書館から握手を求めるという行為を行っていくことで、市民の目線も変わってくるということがいくらでもあると思います。一歩外に踏み込む勇気さえあれば出来ます。力のある館長がその町の館長を退かれるとその図書館の力が弱まることがよくあるんです。これは一番よくないケースです。やらなければならないのは自分が偉くなることではなく、職員を育てることです。マインドだけが続けばいいんですから。少しずつボーダーを取り除いていく。そんな感じです。

当日、市民、図書館利用者、図書館関係者、行政職員などいろいろな立場の人が参加しましたが、決して図書館だけではないすべてに通じることがあるお話に、「書店と図書館の違いがよくわかった」「図書館の役割がわかった」「発想の転換ができた」などの感想をいただきました。