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広報きしわだ 令和4年(2022年)7月号8・9面

記事ID:[[open_page_id]] 更新日:2022年7月1日掲載

特集 救える命を救うために
応急手当の知識と方法を身につけよう

病気や事故などで心肺停止になった人を救うには、
救急車が到着するまでの間に、
その場に居合わせた人が心肺蘇生などの応急手当を行うことが最も重要です。
いざという時のために、応急手当の知識と方法を身につけましょう。
問合せ 消防本部警備課救急係 電話:072-426-8305 ファクス:072-426-0880

口頭指導のイメージ写真
口頭指導のイメージ。
(右)電子メトロノームを用い、胸骨圧迫の規則正しいリズムを指導します。
​(左)スマートフォンのスピーカー機能を使い、指導を受けます。

目の前で倒れた人があなたの大切な人だったら…

 外出先で人が突然倒れ、心肺蘇生法などの応急手当が必要な場面に遭遇したことはありませんか。
 遭遇したことがある人は、その時、応急手当をすることができましたか。遭遇したことがない人は、もし目の前で人が突然倒れたら、応急手当をすることができますか。応急手当の知識がある人でも、「親切のつもりがもし助けられなかったら…」となかなか行動に移せないかもしれません。
 しかし、もし倒れた人があなたの親だったら、子どもだったら、大切な誰かだったらどうでしょう。あなたは躊躇なく、持っている知識で何とかしようとするのではないでしょうか。119番通報をして、救急隊員から応急手当の指導があれば、知識や経験がなくても、きっと迷いなくすぐに行動に移すでしょう。

119番通報してから、救急車が到着するまでの間に

 119番通報があってから救急車が現場に駆け付けるまで、全国平均で約8.9分かかります。その間に救急車を待っているだけでは助かる命も助かりません。
 救急車が到着するまでの間に、その場に居合わせた人が応急手当をすれば、何もしなかった場合と比べ、救命の可能性は約2倍に増加します(グラフ参照)。

救命の可能性と時間経過
救命の可能性と時間経過のグラフ

※ グラフは、Holmberg M:Effect of bystander cardiopulmonary resuscitation in out-of-hospital cardiac arrest patients in Sweden. Resuscitation 2000:47(1):59−70. より一部改変して引用。


 事故や病気などで心肺停止になった時、その人の命を救い、社会復帰に導くためには、救急車が到着するまでの間に、その場に居合わせた人が応急手当を行うことが何より大切です。

応急手当をサポートする「口頭指導」

 消防の通信指令員や救急隊員が119番通報をしてきた人に対して、通報内容から傷病者の状態を判断し、救急車が到着するまでの間になんらかの対応が必要であると判断した場合、その状況に即した具体的な応急手当の方法を口頭で指示し、助言、協力を要請することを「口頭指導」と言います。
 電話口で意識や呼吸の確認、胸骨圧迫(心臓マッサージ)の方法などを指導します。電話機の「スピーカー機能」を活用すれば、両手が使えるため、指導を受けながら胸骨圧迫などを行うことができ、より効果的です。自宅の固定電話や携帯電話の「スピーカー機能」への切り替え方法を日頃から確認しておきましょう。

「誰かがやる」ではなく、「自分がやる」

 目の前で倒れている人がいたら、尊い命を救うため、すぐにあなたができる行動をとってください。救急隊員に指示を仰ぎ、その場でできる限りのことをしましょう。応急手当をするのに資格はいりません。しかし、いざという時に知識があるのとないのとでは、ある方がより確実に、より自信を持って応急手当に臨めるでしょう。日頃から応急手当に関する知識と技術を身につけておくことがやはり大切です。
 今号では、応急手当の方法について紹介していますが、消防署では、救命講習会を随時開催しています。講習会に行く時間がないという人のためにWEB講習も用意しています。インターネット環境があれば、パソコンやタブレット、スマートフォンで、誰でも好きな時間に応急手当の基礎知識を学ぶことができます。ぜひご利用ください。
講習のQRコード
詳しくはこちらから

救急蘇生と法律

 わが国では、民法第698条の「緊急事務管理」の規定により、悪意または重大な過失がない限り、善意の救助者が傷病者などから損害賠償責任を問われることはないと考えられています。また刑法第37条の「緊急避難」の規定では、害が生じても、避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り罰しないとされています。善意に基づいて、注意義務を尽くし救急蘇生を実施した場合には、民事上、刑事上の責任を問われることはないとされています。
 また医師法第17条では、「医師でなければ医業をなしてはならない」と定められていますが、救命の現場にたまたま居合わせた市民が救急蘇生法を行うことは医業にはあたりません。厚生労働省は、市民によるAEDの使用は反復継続する意図がないものと認められるため、医師法違反にはならないとの見解を示しています。

グループで、団体で、
応急手当講習を受けましょう

 消防署では、市内在住・在勤者を対象に、随時、応急手当講習を行っています。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、下記の条件を満たす場合に限り実施させていただきます。同意していただけるグループ・団体のみお申し込みください 。また、申し込み受け付け後でも、実施が困難であると判断した場合は講習を中止させていただきますので、あらかじめご了承ください。
【講習種別】
・普通救命講習1・普通救命講習3・救命入門コース
【実施条件】
受講者数 5~20人程度(人数が多い場合は複数回に分けて受講)
実施場所 受講者同士が約2mの間隔をあけて実施できる広さを確保でき、講習実施中に継続的な換気が可能(2カ所以上の開口部がある)なところ
その他 必ず受講者全員マスク着用、受講前に検温(37 度以上の発熱がある人は受講できません)、手指消毒剤の設置、受講前後・休憩後の手指消毒の徹底、受講前後の手洗いうがいの徹底
申込・問合せ 電話で消防署救急係へ 電話:072-426-0999 ファクス:072-426-0880 受講日程確定後、市ホームページから申請書をダウンロードし、必要事項を記入のうえ、直接、消防署救急係(上松町3丁目)までご持参ください。

身につけておきたい応急手当

心肺蘇生法(胸骨圧迫)

心肺蘇生法の流れとAEDの使い方を知っておきましょう。職場や学校のどこにAEDがあるか日頃から確認しておきましょう。

心肺蘇生法の説明写真(意識の確認をしているところ)
​周囲の安全を確認してから傷病者に近づき、肩を叩いて意識を確認する。
※ 感染症対策のため、顔をあまり近づけすぎない。

心肺蘇生法の説明写真(助けを求めているところ)
反応がなければ、大声で助けを求め、119番通報とAED搬送を依頼する。

心肺蘇生法の説明写真(呼吸を確認しているところ)
胸と腹部の動きを見て、普段通りの呼吸をしているか確認する。

呼吸ありの場合
心肺蘇生法の説明写真(回復体位)
​呼吸していれば、体を横に向け、回復体位をとる(下あごを前に出して気道を確保。上側の手の甲を顔の下に入れる。上側の膝を90度に曲げ、後ろに倒れないようにする。)。救急隊が到着するまで様子を見る。

呼吸なしの場合
【呼吸なしの判断】口をパクパクし、あごをしゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸(死戦期呼吸)や、呼吸しているかどうか迷う場合は、「呼吸なし」と判断します。​

心肺蘇生法の説明写真(胸骨圧迫)
呼吸をしていない場合、心肺停止と考え心肺蘇生を胸骨圧迫から開始。成人は、胸骨圧迫のみ行い、人工呼吸は行わない。小児は、人工呼吸のやり方を知っている場合は、人工呼吸を行う。​
point
心肺蘇生法の説明写真(胸骨圧迫のやり方)

垂直に体重が加わるように腕を真っすぐに伸ばし、胸の真ん中に重ねた手を置きます。傷病者の胸が約5cm沈み込むように圧迫します。​

point
心肺蘇生法の説明写真(胸骨圧迫の手の重ね方)
写真のように手を重ね、手のひら基部(手首に近い部分)だけで力を加えます。​

心肺蘇生法の説明写真(AEDを使用しているところ)
電気ショックが必要な場合は、AEDの音声メッセージ通りに操作する。放電中は傷病者に触れない。

AEDの写真
AED

心肺蘇生法の説明写真(胸骨圧迫を再開しているところ)
電気ショック実施後は、直ちに胸骨圧迫から心肺蘇生を再開。心肺蘇生とAEDの手順は、救急隊が到着するまで諦めずに繰り返す。

小児の場合
心肺蘇生法の説明写真(胸骨圧迫、小児の場合)

乳児の場合
心肺蘇生法の説明写真(胸骨圧迫、乳児の場合)

小児の場合、体が小さいため両手で強すぎる場合は片手で行います。乳児の場合は指2本で行います。胸の厚さの約3分の1沈み込む程度に圧迫します。

point
1分間に100~120回のテンポで、強く、速く、可能な限り中断せずに絶え間なく行います。圧迫の強さが足りないと十分な効果が得られないので、しっかり圧迫することが重要です。成人でも小児でも、怖々と圧迫したのでは深さが足りずに十分な効果が得られません。強く、速く圧迫し続けるように心掛けましょう。

背部叩打法、腹部突き上げ法

気道異物除去の応急手当です。餅やパン、バナナ、豆、ミニトマト、ゼリーなどの食べ物のほかに、子どもではビー玉やおもちゃを詰まらせる事故も多く見られます。

窒息のチョークサイン
窒息のチョークサイン
完全に気道が詰まり声が出せなくなると、写真のように喉をつかみ「チョークサイン」を見せます。

背部叩打法

背部叩打法の写真

背部叩打法(乳児の場合)の写真

手のひら基部で、肩甲骨の間を強く連続で叩きます。傷病者がぐったりして反応がなくなった場合は、心肺蘇生を開始します。小児・乳児の場合も同様です。乳児の場合は右写真のように膝の上に抱えて行います。

腹部突き上げ法

腹部突き上げ法の写真
後ろから腰付近に手を回します。

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腹部突き上げ法の手の当て方の写真
一方の手でへその位置を確認し、もう一方の手で握りこぶしを作り親指側を傷病者のへその上方(みぞおちより下方)に当てます。へそを確認した手で握りこぶしを握り、すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げます。

腹部突き上げ法(小児の場合)の写真
小児の場合はひざまずくと、腰付近に手を回しやすくなります。妊婦、乳児には行わないでください。

胸部突き上げ法の写真
乳児には胸部突き上げ法を行います。胸骨圧迫と同じ要領で行います。

「なんとかせなあかん! その一心でした」
―実際に市民の皆さんが応急手当を行い、尊い命を救った事例を紹介します―

 昨年2月20日、地蔵浜町のテニスコートでテニスをしていた59才の男性が突然倒れ、心肺停止状態となりました。同じコートでテニスをしていた西出雅史さん(写真左)がすぐさま心肺蘇生を実施、散歩中の女性と施設職員の松谷年起さん(写真右)も連携してAEDを持ち出し、119番通報。西出さんがAEDで電気ショックを与え、引き続き心肺蘇生を行い、救急隊に引き継ぎました。迅速な救命処置の結果、倒れた男性は一命をとりとめ、後遺症を残すことなく普段通りの生活を送られています。その時の様子を西出さん、松谷さんにお聞きしました。
 「講習は何度か受けましたが、実際に心肺蘇生をしたのは初めてでした。なんとかせなあかん!その一心で、勝手に体が動いていました。講習を受けていたので、どれぐらい押したらいいかというイメージはあったので、やはり講習を受けていてよかったと思いました。男性が無事とわかった時は本当にホッとしました。」と西出さん。このことがきっかけで、外出先でAEDの場所を確認するようになったそうです。松谷さんは「日頃から、学校や職場のどこにAEDが置いているかを把握していることも大事だし、テニスコートなどでは、AEDの設置場所を示す看板がもっと目立つところにあればいいと思います。」と話してくれました。最後に、「どの職場でも必ず応急手当講習を受けるようにして、それが定期的にできればなおいいですね。」と、お二人とも経験者だからこその立場で講習の重要性を話してくれました。

胸骨圧迫したときの様子を身振り手振りを交えて話す西出さん
西出雅史さん(下野町在住)

インタビューに応じる松谷さんの写真
松谷年起さん(紙屋町在住)

※ 写真撮影時のみマスクを外しています。


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