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自治基本条例逐条解説 第6章 協働及び参画(第16条ー第20条)

記事ID:[[open_page_id]] 更新日:2018年6月22日掲載

条文

(協働)
第16条 市民、事業者及び市は、相互理解と信頼関係のもとにまちづくりを進めるため、協働するよう努める。
2 市は、前項に規定する協働を推進するに当たり、市民及び事業者の自発的な活動を支援するよう努める。この場合において、市の支援は、市民及び事業者の自主性を損なうものであってはならない。

解説

 経済成長の鈍化や本格的な少子高齢化社会の到来など、行政を取り巻く環境が一段と厳しさを増す中で、公共サービスのあり方を改めて問い直さなければならない状況が生まれてきています。行政サービスに対する住民の要求が複雑多岐になり、それらに応えるため、限られた資源をいかに公正かつ公平に配分するかが行政にとって大きな課題になってきているのです。こうした中で「協働」が注目されています。

 「協働」というのは、第2条第4号に定義していますが、異なる主体が、それぞれの責任と役割分担に基づいて、お互いの立場や特性を尊重しながら、情報や資源を共有し、地域の課題や社会的な課題を解決するために協力し合うことをいいます。

 第16条には市民、事業者、市(市民と市であったり、市民同士であったり)、それぞれが協働することを規定します。市民と事業者と市は、相互理解と信頼関係のもとにまちづくりを進めるため、協働するよう努めます。

 協働という言葉は積極的な内容であり、市民、事業者及び市が一丸となって、「みんなで、一緒に、できるだけ共通の課題や目標に向かって行動していこう」ということをこの条文の原則とし、その手段として協働するよう努めるというものです。

 協働を推進するに当たっては、市は市民や事業者の自発的な活動を支援するよう努めるとします。ただ、支援する場合でも、支援することを理由に、市民や事業者の自主性を損なうことがあってはならないというものです。市は市民の自発的活動に過干渉になってはいけないことと、市民に主導権があるということを明記するものです。

条文

(参画)
第17条 市は、意見聴取その他の多様な制度を設け、又は施策を講じることで、市民が参画する機会を保障しなければならない。
2 市は、市民が参画できないことによって不利益を受けることのないよう配慮しなければならない。

解説

 「参画」の意味は第2条第3号に定義を置いています。このあとの条文で、参画の方法の例示として意見聴取制度、審議会等、住民投票が規定されていますが、市民が参画できるのはそれだけではなく、それ以外にもいろいろな方法、制度を設けて参画の機会を保障しなければならないとしました。

 ここでは、総論として、市民参画の原則を規定し、保障しています。
「参画」は、すべてについて必要となるものではなく、市が独断で決め、それが住民に影響を与え、住民のニーズに合わない、住民が被害を受けてしまう、ということが起こらないように、住民がその運営に一定のチェック又はコントロールを必要とするために認められるものです。

 第2項では、市政に参画しようという意思はあるのですが、身体が不自由であったり、障害をもっていたり、時間が自由にならないなど、いろいろな理由によって、参画したくても参画できない人たちに対しては、参画しないことを理由に決して不利益をこうむることのないよう、施策や運用として何らかの形できめ細かくカバーするなどの配慮をしなければならないとしています。

条文

 (意見聴取制度)
第18条 市長及び他の執行機関は、次の各号に掲げる事項のうち市民生活に重要な影響を及ぼすものについては、市民に当該事項に関する情報を提供し、意見を求めなければならない。
(1) 計画の策定、変更又は廃止
(2) 条例の制定、改正又は廃止
(3) 施策の実施、変更又は廃止
2 市長及び他の執行機関は、前項の規定により意見を求めるときは、適切な方法を選択し、市民から提示された意見に対して回答し、これを公表しなければならない。
3 前2項に規定する意見の聴取に関する手続その他必要な事項については、別に条例で定める。

解説

 一般的に、市民に意見を求める代表的な手法がパブリックコメントですが、ここではパブリックコメントだけにとどまらず、説明会や公聴会、その他いろいろな意見を聴く機会等、多様な方法で市民の意見を聴取する制度としました。

 ここは、「市民生活に重要な影響を及ぼす」ということがキーワードになり、以下のすべての事項にこの要件がかかってきます。市長及び他の執行機関が、計画を策定したり、変更したり、廃止したり、また、条例を制定したり、改正したり、廃止したり、さらに、施策を実施したり、変更したり、廃止したりする場合のうち、市民生活に重要な影響を及ぼすものについては、市民に情報を提供し、それについての意見を求めるという制度です。
 その際は、いろいろな方法の中から適切な方法を選択して行うというものです。
 しかしながら、それぞれの事案ごとに効率的な運用が必要であり、決して進捗の停滞を招かないようその事案の特色を生かし、柔軟かつ効率よく進めなければならないことはいうまでもありません。

 また、意見が出されたときは、これに対して回答を行い、公表しなければなりません。
 さらに、意見聴取制度に関する具体的な手続、その他必要な事項については、別に条例で定めるとしています。意見を求める手法についても、会議形式、計画の縦覧方式等、案件により柔軟かつ効果的に対応することが重要であって、これらも別に条例に定めることになります。

条文

(審議会等の運営)
第19条 市長及び他の執行機関は、市の執行機関に設置する審議会等の委員を選任する場合は、委員構成における中立性の保持に留意するとともに、原則としてその一部を市民からの公募により行わなければならない。
2 市長及び他の執行機関は、審議会等の会議及び会議録を原則として公開しなければならない。
3 前2項に規定する審議会等の委員の公募並びに会議及び会議録の公開に関する手続その他必要な事項については、別に条例で定める。

解説

 市長及び他の執行機関が審議会や協議会などの委員を選任する場合は、委員構成において中立性ということを十分配慮しながら、原則としてその一部を市民から公募しなければならないとします。
 また、審議会等は、その会議や会議録は原則として公開しなければならないことを規定し、その手続や公募の手続、その他必要な事項については、別に条例で定める、という旨の規定です。

条文

(住民投票)
第20条 市長は、岸和田市が直面する将来にかかわる重要課題について、定住外国人を含む住民のうち18歳以上の者が、その総数の4分の1以上の者の連署をもって住民投票を市長に請求したときは、直接住民の意思を問うため住民投票を実施しなければならない。
2 住民投票の投票権を有する者は、定住外国人を含む住民のうち18歳以上の者とする。
3 市は、住民投票の結果を尊重しなければならない。
4 住民投票の実施に関する手続その他必要な事項については、別に条例で定める。

解説

 まず、住民投票を行うことができるのは「岸和田市が直面する将来にかかわる重要課題」についてであることを明記し、定住外国人を含む住民のうち18歳以上の者が、その総数の4分の1以上の署名を集め、住民投票を市長に請求したときは、市長は、直接住民の意思を問うため、必ず住民投票を実施しなければならないとします。
 投票権を有する者は、定住外国人を含む住民のうち18歳以上の者とします。
住民投票の結果については、市は尊重しなければならないとし、住民投票の実施に関する手続やその他必要な事項については、別に条例で定める、とします。

1 本条例における住民投票制度の位置付け

 まちづくりは、情報共有と市民の参画の実践が大切であり、住民投票に至らなくても解決できるケースが多いと考えています。住民投票については賛否両論あり、住民間に感情的な溝ができたり、軋轢を生む恐れがありますので、本来的には、住民投票に至ることなく重要課題を解決できることが望ましいと考えます。
 本市にとって住民投票は、住民の意思確認のためのあくまで最終手段としての位置付けと考えていて、制度として担保しているものです。
 住民投票については、直接請求に膨大な住民エネルギーを消耗することを避けるため、制度として確立し、市民の権利として明確に位置付けることが重要だと考えます。

(1) 住民投票は、間接民主主義を補完するための制度

 「住民投票」は、現行の地方自治制度を補完するものであり、間接民主主義を基本としながら、直接民主主義でこれを補完するものとして位置付けるものです。

 双方が互いに制度の十分でないところを補完しながら、その時々の社会情勢に則し住民の意思をより的確に反映することが重要なのであって、制度の柔軟な運用が必要です。

 住民投票といっても、すべてのことについて住民投票を行うわけではありません。岸和田市が直面する重要課題、岸和田市の根幹に関わるような課題、将来に決定的な影響を及ぼすような課題に限って住民投票をすることは、むしろ、間接民主主義の十分でないところを補う意味を持つものです。

(2) 住民自治や市民の市政への参画を達成するために必要な制度

 住民から一定の要件を満たした請求があれば住民投票を行うことで、直接住民の意思をより的確に反映させることができます。住民にとってのセーフティーネット(安全網)との位置付けでもあるのです。

 この条文で重要なことは、あくまで住民から一定の署名が集まれば、直接住民の意思を問わなければならないという住民投票制度をここに明記することにあります。

 前文に規定しているように、市民が自治の主体、市政の主権者であるという認識が高まり、市民が自らの地域は自らの手で築いていこうという意思を明確にして、自ら考え、行動することで市民自治都市の実現を目指していくとき、市長や議会と市民の考えが対立しているか否かを問わず、岸和田市にとって重要な課題については住民投票にかけるという選択肢がでてくると考えます。
 住民が主権者の責任において住民の意思をはっきり示して、市長や議会の政治判断の方向性を示唆し、決定する意味は大きいのです。

2 住民投票の性格

(1) 常設型の住民投票であること

 ここに規定する住民投票は、「常設型住民投票」といって、個別案件ごとに住民投票条例を設けるのではなく、一度住民投票条例を制定しておきますと、事案ごとに要件を満たせば住民投票を行うというものです。個別案件型では、問題ごとに条例を設けられなければならず、安定性・迅速性に欠けることになり、住民の意思を問うことが難しくなってきます。
 自治基本条例の中にこの規定を置いているのは、岸和田市の自治基本条例の大きな特徴ともなっています。

(2) 諮問型の住民投票であること

 住民投票には、拘束型と諮問型の2つの種類があります。
「拘束型住民投票」では、住民投票の結果が出た場合、市長や議会がその結果に法的に拘束され、その結果に従わなければならなくなります。
 これに対して、「諮問型住民投票」では、市長や議会の選択や判断は完全に縛られるものではなく、その結果を尊重しなければならないことになります。
 岸和田市の場合は、第3項で「市は、住民投票の結果を尊重しなければならない」と規定しているとおり、後者の「諮問型住民投票」を指します。

3 住民投票の要件

(1) 「岸和田市が直面する将来にかかわる重要問題」という要件

 ここでは、「岸和田市が直面する将来にかかわる重要課題」について住民投票を行うことができることになりますが、具体的に何について住民投票できるのかです。これについては、別途「岸和田市住民投票条例」で規定することになります。

(2) 「定住外国人」という要件

 他市町の常設型住民投票条例では、「永住外国人」となっています。
 「永住外国人」については、直接法律上の規定はありませんが、一般的に「「出入国管理及び難民認定法」別表第2の上欄の永住者の在留資格をもって在留する者」と「「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」に定める特別永住者」を指します。

 岸和田市では、「定住外国人を含む住民のうち18歳以上の者」となっており、「定住外国人」ということばを使っています。岸和田市議会では、平成5年9月9日に全国に先駆けて「定住外国人に対する地方選挙への参政権など人権保障の確立に関する要望決議」を行っており、そこでは「定住外国人」を使用しています。この趣旨に鑑み、自治基本条例でも、「定住外国人」を用い、「永住外国人」よりも、さらに対象を広げようとしています。

 住民投票は、「岸和田市が直面する将来にかかわる重要課題」、つまり、岸和田市と岸和田市の住民全体に将来的に直接関わってくる問題について、岸和田市の住民にその意思を問うというものです。当然、現在岸和田市に住んでいて、しかも、将来的にも岸和田市の住民であり続けるであろう人たちにその意思を問いかけるものです。
 また、自治基本条例では「市民が自ら考え、行動することで、常に安心していつまでも住み続けることができる、個性豊かな持続性のある地域社会「市民自治都市」を目指す」と規定されています。

 これらのことを考えるとき、現在において、そして将来的にも岸和田市にかかわりのある定住外国人も、「住民」である限りまちづくりに加わる権利があると考えます。そのまちづくりをまさに制度的に保障する住民投票に、岸和田市の住民である定住外国人は投票できるようにすべきだと考えます。
 具体的に定住外国人の範囲をどこまで広げるのかについては、別途定める条例に規定します。

(3) 「18歳以上の者」という要件

 現在、選挙権は、公職選挙法で年齢が満18歳以上の者に与えられていますが、自治基本条例制定当時は、満20歳以上の者に与えられていました。当時、住民投票の請求権、投票権を18歳以上の者にまで広げたのは、以下の理由によります。

 将来の岸和田を担うことになる若者が、住民投票を通して社会参加をすることで、大人としての権利と責任を自覚していくと考えられます。また、18歳という年齢は、政治的な判断や経済的な自立も可能な年齢だと考えられます。

 現実的には、普通自動車運転免許の取得であったり、また、深夜労働や、危険な業務、安全・衛生・福祉に有害な場所における業務等については、18歳になると可能となります。

 以上のように、18歳以上の者には、社会生活の中で成人としての取扱いを受けることになってきます。また、児童の権利に関する条約第1条において18歳未満の者を“児童”と定義づけています。当時すでに、18歳以上に選挙権を保障している国は世界173か国中149か国にのぼっており、18歳選挙権は世界の潮流になっていました(国立国会図書館調査及び立法考査局2008年12月資料より)。

(4) 「その総数の4分の1以上の者の連署」という要件

 地方自治法第76条(議会の解散請求)、第80条(議員の解職請求)、第81条(長の解職請求)では、原則として「その総数の3分の1以上」のものの連署で、選挙管理委員会にそれぞれ請求することができ、請求があれば住民投票をしなければならないとあります。法律の規定上、市民からの直接請求の要件で、これが最も高いハードルといえます。

 一方で、市町村の合併の特例等に関する法律第4条では、「その総数の50分の1以上」のものの連署で合併協議会の設置を請求することができますが、その請求を議会で否決され、しかも長が選挙管理委員会に住民投票を請求しなかった場合、今度は、「その総数の6分の1以上」のものの連署で住民投票を請求した場合、必ず住民投票をしなければならないことになります。
 これは、法律上、最も低いハードルとなっています。

 岸和田市が規定しようとする住民投票は、諮問型の住民投票であり、決定型、諮問型の違いはありますが、上記の事例から軽重を判断しますと、解散したり、職を失うことになる「3分の1」の要件よりはハードルを低くすべきと考えます。
 ただし、協議を始める協議会の設置にとどまる「6分の1」の要件よりは、実質的に課題の是か否かを問う住民投票については、それよりハードルを高くすべきと考えられ、これらのことから、軽重を判断すれば「その総数の4分の1以上」が妥当であると判断しました。


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