岸和田市市制施行100周年記念誌
SPECIAL INTERVIEW43ページ

岸和田を代表するアスリートのひとり 原田 海さん

「やりたいことをやればいい」
そう教えてくれた母にいつも感謝しています。

原田海さんの画像 撮影ロケ地:B-PUMP荻窪店

岸和田の皆さん、そして何よりも母に感謝してます

小さいころの思い出はだんじり(藤井町)、陸上、サッカー、それだけでなく、遊び場はカンカン、中央公園、ラパーク…。総じて活発な方でしたね。スポーツクライミングは小学5年生のある日、いつもアクティブな活動を最優先ですすめてくれる母が、八阪町のクライミングジムを見つけてきました。初めての体験で課題(目の前にある壁)を自身の身体でクリアする喜びを知ったんです。「やりたいことをやれ」と、僕は母に言われ育ちました。
そのジムのお兄さん、お父さん世代の岸和田の人たちからは「やる気がある子だ」と大切に、優しくサポートをしてもらいました。高校ぐらいから海外遠征を始めるんですけど、すごくお金が必要でした。母ひとり、子ひとりの家庭です。だから全面的に支えてくれた母に心から感謝しています。
東京2020オリンピック以降、メディア露出も増え、スポーツクライミングの知名度が上がり施設も増えたけれど、欧米に比べるとまだまだ足りないように感じます。身近に挑戦できるスポーツなのですが…。一番うれしいのは、スポンサー収入を得られたこと。すべてお金は母へ送金して、自分の暮らしは、アルバイトで何とかやっていけています。

スポーツクライミングでの得意種目はボルダリング。リードと同じく選手同士の計画を知ることがカギになってくる

クライミングでは国籍の異なる選手同士が攻略法を共有する

野外でのフリークライミングも楽しいけれど、スポーツクライミングは少し違うんです。規制(レギュレーション)があるから。その課題ともいえる「壁」が、いきなり眼前にそびえ立ちます。こんな人造的な非日常はほかにありません。
選手たちは想像力と体力すべてを総動員して、限られた時間内で課題にかかります。ボルダリング、リード、スピードと3種目あるなかでスピード以外はスタート直前に「壁」を見せられる。国籍、言語、世代の異なる選手がその攻略法を短時間で考え、共有する。スポーツクライミングのおもしろさのひとつにはこういう側面もありますね。スケートボード、BMXなどと同じようにパフォーマンスを見せて、個人競技として結果的に得点は付くけど、ライバルと競い合っているのではないんです。
世界の選手たちのテクニックがYouTubeなどで公開・共有される今、こういった情報発信は選手の義務だと思う。競技の認知度を高め、ファンが増えるように自分も動画配信をしています。将来的には、そういったネットメディアの仕事に就ければと希望しています。この先も日本代表として活躍して、多くの人に見ていただいて、スポーツをきっかけに未来を活気あふれるものにしたい。若い世代の人たちには「何も考えるな、やりたいことをやればいい」と伝えたいです。

Profile

原田 海さん (はらだ かい)
平成11年(1999)生まれ。岸和田市出身。平成30年(2018)に19歳でIFSCクライミング世界選手権ボルダリング部門優勝。令和2年(2020)にはボルダリングジャパンカップ優勝。東京2020オリンピックのフリークライミング日本代表。現在は東京でひとり暮らし。栄養補給には人一倍気を配っている…つもりとか。