岸和田市市制施行100周年記念誌
岸和田のいまむかし32-33ページ

岸和田で創業から100年以上。この店、あの会社

創業から183年

御菓子司 小山梅花堂 小山梅花堂 〈本町〉

渋谷幸子さん

創業から183年 岸和田城主が愛した御菓子の味を楽しんでほしいです。岸和田市民の「御用達」ともいえる老舗を支える七代目店主の職人・小山啓一さんとお姉様の渋谷幸子さん。おふたりとも桜の季節の岸和田城が大好きだそう

当店は天保10年(1839)に今と同じ岸和田城近くで創業し、岸和田岡部藩の御用菓子司を務めました。初代の名が板屋藤兵衛だったので、今も名残で「板藤さん」と呼んでくださる方もいます。現在、小山啓一が七代目です。お茶席へのお届けなど、古くからの常連様も多く、岸和田城へ上納していた頃と変わらぬ味と、季節に応じた新しいお菓子の提供に精進する日々です。
実は平成に入って、火災で工房と店の一部が焼失し、閉店を考えたことがありました。でも、工房を貸してくださるなど、とても多くの方々に温かく支えていただき、長い道のりでしたが店と工房を再建することができたんです。皆様への感謝の思いを、この先も御菓子に込めていきたいです。

  • 昭和中頃の小山梅花堂。創業時から現在まで変わらず岸和田城にほど近い紀州街道沿いに店を構える
  • 江戸時代、町奉行所が、小山梅花堂の創業者・藤兵衛とその息子の安之助を「人柄よく、仕事熱心」との理由で表彰、褒美を授ける旨を記した書状が残る

逸品 梅花むらさめ 岸和田銘菓。小豆・米粉・砂糖を合わせ裏ごしし、そぼろにして蒸し上げた棹(さお)菓子。岸和田城主に献上していた頃と変わらない、もちっとした食感と控えめな甘さが特長。

創業から110年

株式会社 留河 〈大町〉

四代目 代表取締役社長留河 昇さん

「桐」の持つすばらしい特性を岸和田から世に広めたいです。幼少期から岸和田で桐に囲まれて過ごした留河さん。開発した「桐糸」で高い吸水性・通気性を持つ帽子・Tシャツなども展開。独自の発想力で多くの業界と連携を図る

創業から110年 昭和50年代初頭、現在と同じ地にあった大阪和泉泉南線沿いの「留河タンス店」の前で撮影された留河さん思い出の一枚

大正元年(1912)に創業し、二代目留河栄が勲六等瑞宝章を受章するなど、岸和田の桐箪笥店の老舗として数々の栄誉にあずかりました。しかし、私が代表になった頃、桐箪笥の市況は大変厳しくなっており、長年つちか培ってきた技術と知識を生かして、時代に即した新しい事業展開はできないかと模索し続けたんです。そして長い企画期間を経て、桐の調湿・防虫性などの特性を生かした「桐製米びつ」や、新素材「桐和紙」「桐糸」を開発しました。さらに近年は、企業や小学校などへの桐の植林活動にも着手しました。桐は二酸化炭素を多く吸収し、成長が早く育つ姿を楽しめます。多くの方々が桐に親しみ、岸和田の桐製品を見直すきっかけになってくれればうれしいです。

桐の端材をパウダー状にして和紙に練り込んだ「桐和紙」や「防虫調湿シート」を開発。その後約9年の期間をかけ「桐糸」へ展開

逸品 泉州留河桐製米びつ 泉州桐箪笥を作ってきた伝統工芸士が作る桐製米びつ。桐以外の素材を使わず、お米一合分を簡単に計量できる独自設計。気密性、防虫効果、調湿機能を持ち、お米のおいしさを守ってくれる。

創業から155年

南宗味噌株式会社 〈今木町〉

五代目 代表取締役南 敦子さん

創業から155年 岸和田唯一の味噌処として心を込めて伝統の味を伝えたい。右から2番目が代表の南さん。インドネシア出身の夫が先代から技を引き継ぎ製造を担当。スタッフの皆さんとともに伝統の味を守っている

初代南 宗七が、慶応3年(1867)に岸和田の筋海町で糀の製造所として創業し、今も伝統の「もろ ぶた 蓋製法」で糀を製造しています。店内には糀・大豆・天然塩を原料とする、昔ながらの素朴な味の味噌・塩糀・醤油糀や、夏季限定の泉州名物水なす漬など〝心と体が喜ぶ発酵食品〞を多く取り揃えています。
私は岸和田で生まれ育ったので、〝大好きな地元の味を広めたい〞という思いで、「手造り味噌キット」を販売したり「味噌造り体験」を開催しています。また、お味噌・糀・地元食材を使った料理を提供するカフェも併設しました。昔から「なんそうさん」と親しみを込めて呼んでいただいているので、そのまま店名は「なんそうさんのCafe」に。これからも伝統の味を守り、 皆様に伝えていきたいです。

  • 味の決め手となる糀。米一粒一粒に美しい
  • 糀・天然塩・大豆も個別に購入可能。自宅で楽しむ「手造り味噌キット」も揃う

逸品 米糀赤味噌・特上白味噌 厳選した国産米、大豆、天然塩を素材に、昔ながらの製法にこだわった無添加の味噌。赤味噌は大豆のコクがしっかり。白味噌は泉州人好みの中甘口。

創業から120年

御菓子司 岸和田風月堂〈本町〉

五代目店主 竹内健治さん

創業から120年 岸和田の方々の日常を彩る温かみのある和菓子店でいたいです。25歳で店を継ぎ現在35歳の
竹内さん。「受け継ぐ和菓子」と「まだ岸和田にない和菓子」を常に考え、SNSなどでの発信にも力を注ぐ

  • 色とりどりの生菓子。季節に合わせて頻繁に内容が変わるそう。代々受け継がれている岸和田市の市章が彫られた生菓子作り用の木型
  • 長年の岸和田市の産業振興への貢献が称えられ、平成24年(2012)岸和田市と岸和田商工会議所より表彰状が贈られた

逸品 玉時雨・白玉時雨 ホロホロとほぐれる食感が雨のようと、岸和田城主が「時雨(しぐれ)」と命名したそう。岸和田では「むらさめ」という名でも呼ばれる菓子。