岸和田市市制施行100周年記念誌
岸和田のいまむかし30-31ページ
岸和田で創業から100年以上。この店、あの会社
創業から100年以上を経た今も、岸和田で活躍し続ける人々の暮らしに寄り添うものを提供し続けるお店や企業があります。
それぞれの代表に、昔から代々受け継ぎ大切にしていることや岸和田で店を構え続ける思いについて伺いました。
井坂酒造場 〈稲葉町〉
十代目蔵主井坂佳嗣さん
創業は江戸時代の文政元年(1818)なので、200年以上、技術と体力が必要な「 かん づく 寒造り」という昔ながらの製法でのじょう醸ぞう 造を続けています。昔、岸和田は米がよくとれて、その米を使った酒造りが盛んでした。平成の中頃までは毎年秋になると、兵庫県の たじま 但馬などから とうじ 杜氏(=酒造りの職人)の皆さんが集団で岸和田を訪れて春まで住み込みで酒造りを行っていたんです。しかし、高齢化や継承者問題などから、その形は消え、岸和田に多数あった酒蔵がへいぞう閉蔵してしまいました。うちでは息子や地元の若者たちが、伝統を絶やしたくないという思いや酒造りの技を継承してくれたので、とてもありがたく思っています。
岸和田の地酒は希少です。ぜひ進物用にも使っていただきたいですし、何よりこれからも、地元の方々に大切な日に楽しく飲んでほしいです。
株式会社田中家具製作所〈荒木町〉
三代目 代表取締役社長田中由紀彦さん
当社は岸和田で大正8年(1919)に創業し、以降100年間、材木選び、製材法、組み手加工、蝶番の両掘り、密閉度、強度、精巧な美しさなどにこだわるきり だん す 桐箪笥作りを続けてきました。現在も伝統工芸士5名が所属し製造に従事しています。
日本で最初に桐の箪笥が広まったのは江戸時代中・後期の大阪といわれています。着物を大切に保管できる収納具として重宝され、婚礼家具の代表格になり、より上等の桐箪笥が求められるようになって、この大阪泉州には一大産地が形成されました。今もその品質は全国に知られ、「大阪泉州桐箪笥」は伝統工芸品として国に認定されています。
私は「岸和田といえば桐の箪笥」という文化を守りたい。桐の箪笥は、汚れたり いた 傷んでも伝統の手法で「洗い替え(=修復)」すれば、新品同様に蘇って次世代にも受け継いでいただける家具です。SDGsがうたわれる昨今。モノを大切に使い続けることのすばらしさを伝え続けていきたいです。