岸和田市市制施行100周年記念誌
岸和田のいまむかし26-27ページ

岸和田の漁業がすごい!

府内№1の漁獲量!

大阪湾は古くから好漁場で、なかでも岸和田市は大阪府内でトップの漁獲量を誇ります。ここでは岸和田市の漁業のすごさとともに、未来を見据えた取組みもお伝えします。

  • 昭和20年代 地びき網漁の様子 網船が網を仕掛け、浜辺から大人数で引き寄せる。砂浜が埋め立てられ、岸和田では昭和40年頃に消滅した漁法
  • 打瀬網漁の漁船 複数の網を海底に沈め、帆を立て風力で引っ張る。江戸初期~昭和初期の漁法と伝わり、泉州地域でも盛んであった

小魚を肥料にするほど魚がとれた好漁場

大阪が「なにわ」と呼ばれるのも、「魚庭(魚の豊かな庭)」が由来という説もあるほど、大阪湾は瀬戸内海でも有数の好漁場。複数の河川により山から運ばれてくる栄養分が魚を育て、春先になると紀州沖からイワシシラス(イワシ類の仔魚)が北上。さらにそれらを餌にする魚たちが無数に集まります。岸和田の 漁は歴史が古く、弥生時代には漁が行われ、江戸末期には130隻以上の漁船があったと伝えられています。また、堺から泉南まで続いていた砂浜には、昭和30年頃までイワシ類がびっしり干され、同時代に盛んであった綿花栽培の肥料「干鰯」になるほどでした。

競争で魚の品質が向上!革命的なシステムを実現

お正月に大漁旗を掲げ船出する、巾着網漁の漁船

現在、岸和田には、大船団でイワシ類やイワシシラスなどの大群の漁獲を行う大阪府鰮巾着網漁協と、複数の漁法で多種類の魚介を漁獲する春木漁協、岸和田市漁協の計3つの漁業協同組合があります。
平成26年(2014)、鰮巾着網漁協が大阪の漁師がとったイワシシラスとイカナゴの水揚げ場所を一つにまとめ、そこにセリを行う入札場を開設しました。それまで漁師と加工業者が個別に交渉して取引きされていましたが、セリによって競争が生まれ、それぞれが水や氷を変えるなど工夫を凝らし始めたことで魚の品質が向上、売上げは3割増に。漁師の給料もアップしてより魅力的な職業になったためか、現在鰮巾着網漁協では20〜30代の漁師が全体の4割を占めるそうです。
3漁協の課題は、大阪湾の魚の価値をもっと高めること。よく太ったマイワシが「金太郎鰯」と呼ばれ、高値がつくように、魚のブランド化も進んでいます。また、朝どれの魚を関西国際空港から空輸し、夕方には東京や名古屋などの飲食店で出すことも可能。他都市へのアピールとともに、府民に大阪湾の魚を知ってもらう取組みも始められています。

大阪府 市町村別漁獲量平成30年(2018)岸和田市で大阪府の漁獲量の7割を水揚げ!

  • イワシシラスやイカナゴは船びき網の網船から小型の運搬船に移し替え、入札場へ 下/到着5分後にはセリが終わるというスピーディーさで鮮度を守る
  • 左・上/イワシ類やアジなどをとる巾着網漁法。魚の群れを長さ約1㎞の網で囲み、すそを巾着のように絞る。5隻の船で行う、規模が大きな漁法。写真提供(上):大阪府

次世代を見据え、〝育てる漁業〞を開始

 よい漁場の近くには、海に栄養源を流す広葉樹の森がある、といわれています。大阪府では未来へ向けた取組みとして、府内24漁協の若手漁業者が集い、植林や間伐、下草刈り、竹林伐採などを行う「魚庭の森づくり活動」を20年前から開始。現在も年に数回、おもに神於山地区で活動しています。ほかにもプ ラスチックなどの海底ごみを拾って海を美しくする活動も行われるなど、漁獲量が減ったといわれる大阪湾を再び豊かな海に戻すために、有志によって地道な活動が続けられています。

急斜面の山に分け入って下草を刈る漁師たち

Check
開かれた漁港をめざして

大阪府鰮巾着網漁協では「大阪湾の魚をもっと知ってほしい」と、地蔵浜地区に食事処を常設しているほか、いろいろなイベントも開催しています。

  • 泉州海鮮きんちゃく家 目の前の漁港で水揚げされたイワシシラスのほか、新鮮な海鮮が格安に味わえる通年営業の食事処
  • 地蔵浜みなとマルシェ 毎週日曜に開催。朝どれの魚や泉州の特産品が買えるほか、BBQコーナー、ステージイベントなども

大漁! 親子まつり 年に1回、毎年10月に開催。マイワシのふるまいやセリの模擬体験、漁業見学クルージングなどが人気