岸和田市市制施行100周年記念誌
岸和田のいまむかし24-25ページ

農業王国 岸和田名産のフルーツ&ベジタブル

府内トップの産出額

生産地と消費地との近さを生かした都市農業を展開する、
岸和田市ならではのフレッシュな農作物の魅力に迫ります。

濃厚な甘みと芳醇な香りがたまらない!包近(かねちか)の桃 6月中旬~7月

岸和田市の桃の生産量は大阪府随一。なかでも、栽培の歴史が150年以上あり、「桃と赤鬼」という昔話も伝わる包近地区の桃は、「包近の桃」ブランドとして、近年人気がうなぎ上りです。人気の秘密は糖度の高さ。大阪市という大消費地が近く、樹上でギリギリまで甘さを蓄えられるので、通常でも10~12度、さらにそれを超えるような糖度の果実が出荷できるのです。冬場に肥料を与えて剪定、春には摘蕾・摘果の作業を経て、最終的に実る桃は1枝に1個以下。ひとつずつ丁寧にかけられた袋の中で美しく育つ果実は、ジューシーでスイートなとっておきです。

  • 池田 孝さん 害虫・害獣や病気の対策も必要ですが、農薬などの使用は最小限に留め、一年中手塩にかけて、安全・安心でおいしい桃を育てています。
  • 春に満開になった桃の花。大きく実らせるため、よい花を残して摘み取る
"世界一甘い桃"が包近に!
松本隆弘さん

包近の桃農家・松本さんの育てた桃が、糖度の高さで平成27年(2015)にギネス世界記録®に認定。バクタモンという土壌改良微生物資材を取り入れる栽培法 を長年にわたり研究した成果で、その糖度は、果実全体の平均値がなんと22.2度を記録しました。「世界一甘い桃」として、包近の桃人気を後押ししています。

松本隆弘さん

ギネスになかった「食物の糖度」というカテゴリを生み出しました!

生でも火を通しても万能!泉州たまねぎ 泉州たまねぎ 4 ~6月

  • 近道(こんどう)泰光さん タマネギ栽培歴は子どものころから。「やっぱり泉州たまねぎに限る」って言ってもらえるのがうれしいですね。生で味わって、素材のよさを堪能してください。
  • 葉が倒れてから1週間ほどが収穫時だそう

たっぷりの水分と甘みが魅力の泉州たまねぎ。明治時代に、岸和田で採種・栽培が成功し、その後、稲作の裏作として作付面積を拡大。昭和37年(1962)には606ヘクタールもの土地で栽培され、岸和田のみならず泉州の特産品となりました。現在は当時より生産量は減っているものの、ブランド力の高さは健在。砂地ではなく、土で栽培することでよく締まった実に育つのだそうです。肉厚で軟らかく濃厚な味で、長年愛されています。

完熟した果実は、栄養たっぷりで絶品! イチジク 8月~10月上旬

上田和義さん 暑すぎると実の数が少なくなるなど、気候に左右されやすい果物ですが、完全に熟したイ
チジクの味わいは格別。全体的に黒っぽい色の物を選ぶとよいですよ。若すぎず、熟しすぎず、タイミングよく収穫するのが難しい

岸和田市をはじめとした泉州や南河内で盛んに栽培される、都市近郊の果物の代表格。早朝に収穫すると翌日には販売されるので、完熟の果実が新鮮なまま届くと消費者に好評です。大阪では明治以前から栽培され、水田の転作などで生産量を増やしました。食物繊維や鉄分なども豊富で、女性人気も高いイチジク。漢字で書くと"無花果"ですが、実は私たちがおいしくいただいている果実の中の部分が花なんです。そのままはもちろん、ジャムやワイン煮、サラダなどでもぜひ。

軟らかく風味豊かな最強「軟弱野菜」春菊(きくな)9 ~4月 室町時代に渡来。
江戸時代には大阪など各地での栽培記録が残るそう。野口勝巨(まさなお)さん 種蒔き前に稲わらを漉(す)き込んでしっかりと土作りするのが大事。暑さに弱いので遮光やハウスの換気などに特に気を付けています。一年中出荷されますが、やっぱり旬の寒い時期がうまいですよ。

野口勝巨(まさなお)さん

令和元年(2019)から2年連続で、全国1位の春菊生産地となった大阪府。府内最大の産地は、岸和田市などの泉州地域で、大阪では"きくな"とも呼ばれています。傷みの早い軟弱野菜ですが、栽培されるのは株が横に這う「株張り型」のため、根から引き抜いて鮮度を保つことが可能。新鮮でさわやかな味は、鍋やおひたし、おでんなど関西の食文化に欠かせない葉物野菜として愛されています。アクが少ないので、サラダなど生食もお試しあれ。

みずみずしさ抜群! 泉州でしかとれない極上ナス 泉州水なす 3 ~11月

水はけをよくするため高く盛られたうねに苗が美しく並ぶ

岸和田市の特産としてまず名の挙がる泉州水なすは、泉州特有の品種。室町時代には栽培されていたようで、ほかの地域で育てると品質が変わるというほど、泉州の気候や食生活と深く結びついています。柔らかな果皮は輸送が難しく、かつては地元でのみ消費されていましたが、約30~40年前ごろから品種改良が進み、1990年代にはなにわ特産品に選定されるなど、生産者も行政も需要拡大策に着手。輸送技術も発達し、全国で消費されるようになっていきました。皮が薄く、実の約92%は水分。アクが少なく、糠漬けはもちろん生でも美味。ひと口でトリコにしてしまう味のよさで需要と知名度は拡大中です!

上坂孝博 さん 水やりが少しでも多いと実らなかったり、葉が触れただけで実に傷ができたり、とにかくデリケート。枝の剪定(せんてい)や葉かきなど、とても手がかかりますが、おいしく育てる努力は惜しみません!

鮮やかで誉れ高い「衝撃のニンジン」彩誉(あやほまれ) 12月下旬~3月 若手農家で組織される岸和田4Hクラブなどで情報交換をしながら、冬季にこだわり、生産されている。 南 孝信さん 冬ニンジンは一般的に糖度8度でも甘い方ですが、私の栽培する彩誉®は糖度10度以上になります。甘みが強いので、生で食べるのもおすすめですよ。

その甘さから「衝撃のニンジン」とも呼ばれる彩誉®。岸和田市に農場のある種苗会社が開発した品種で、ニンジン特有の匂いやクセがなく、フルーティーな味わいです。その甘さを生むのは寒さ。9月に種を蒔き、収穫される12~3月まで寒気や強烈な霜に当てることで、甘さが増すのだそう。また、ニンジンは土の養分をたくさん吸収するため、収穫後の土作りが重要で、春には麦を、夏にはソルゴーという植物を栽培し、どちらもそのまま土に漉き込むことで、養分の豊かな土壌を作り上げます。一年中手間暇かけて育てられた、冬季限定の味覚は必食です。