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令和元年度工事監査の結果((仮称)岸和田市営上松・山下住宅建替工事)

記事ID:[[open_page_id]] 更新日:2020年1月9日掲載

第1 監査の対象

1 対象工事

(仮称)岸和田市営上松・山下住宅建替工事(建築)

2 対象部課

予算所管部課      まちづくり推進部住宅政策課

契約担当部課      総務部契約検査課

設計・工事担当部課  建設部公共建築マネジメント課

第2 監査の目的

岸和田市では、平成11年3月に「岸和田市営住宅再生マスタープラン」、平成16年3月に「岸和田市営住宅ストック総合活用計画」、平成24年3月に「岸和田市営住宅ストック総合活用計画(公営住宅等長寿命化計画)」を策定し、老朽化の著しい木造住宅の建て替えや諸改善事業による良質な市営住宅ストックの形成に取り組んでいる。

令和元年10月現在、市で管理している市営住宅は、木造住宅が8か所158戸、鉄筋住宅が10か所568戸の合計726戸である。昭和62年から計画的に建て替えを行っており、平成15年度の4団地目(あけぼの住宅)に続き、平成27年度には5団地目(桜台住宅)の工事を完了し、建て替えにより良質な住宅の供給、住環境の整備を行っている。

今回、監査対象とした(仮称)岸和田市営上松・山下住宅建替工事(建築)は、平成27年に、旧耐震基準で建設された上松住宅等の3団地の耐震診断を行った結果、上松住宅については、耐震改修を行うと住戸として使用できなくなるものがあること、ライフサイクルコストや工事に対する費用対効果も含め評価すると事業の効率化が図られないことが判明し、平成23年度に策定した「岸和田市営住宅ストック総合活用計画(公営住宅等長寿命化計画)」を平成27年度に一部見直し、上松、山下、神須屋住宅の3団地を含め、山下住宅の敷地の一部に住戸数65戸の住宅に集約して6団地目の建て替えを行うこととしたものであることから、公営住宅として計画の趣旨に基づき、設計、積算及び施工が法令等に準拠しているか、工事が適切かつ効率的、経済的に実施されているかについて調査し、必要な是正・改善を図るとともに関係職員の能力向上に資することを目的とする。

第3 監査の着眼点

岸和田市監査等の基準及び事務処理に関する規程に基づき策定した令和元年度工事監査実施計画に定める監査の着眼点について、実査、立会、確認、証憑突合、帳簿突合、質問、閲覧により行った。

第4 監査の主な実施内容

令和元年度に施工している工事のうち、設計金額が2,000万円以上の中から内容等を勘案のうえ、監査対象を抽出し、設計図書、関係図書等の書類調査と現場調査を関係職員等立会いのもと説明聴取を受け実施した。

なお、監査の実施にあたっては、専門的な知識を必要とするため、公益社団法人大阪技術振興協会に工事技術調査業務を委託し、派遣された技術士による工事技術調査結果報告を参考に、総合的に判断する方法で実施した。

第5 監査の実施場所及び日程

1 実施場所

書類調査 第1委員会室

現場調査 岸和田市土生町地内

2 日程

(1) 調査期間  令和元年9月30日から令和元年10月31日まで

(2) 監査実施日 令和元年10月31日

第6 工事の概要

1 工事場所 

岸和田市土生町地内

2 工事請負業者

岩出建設株式会社

3 設計委託業者

共同設計株式会社

4 工事請負金額

837,273,240円(設計金額 930,304,440円)

5 落札率(工事請負金額/設計金額)

90.00%

6 工事期間

平成30年12月17日から令和2年5月29日まで

7 工事監督員

公共建築マネジメント課 西出 明矩

8 工事の内容

(1) 規模

敷地面積 6,200.98平方メートル

建築面積 1,169.31平方メートル

延べ面積 4,120.53平方メートル

 (2) 構造

鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造) 

地上6階建、2棟

(3)住戸数

65戸

内訳 1DKタイプ 11戸、2DKタイプ 30戸、2DK身障タイプ 2戸、3DKタイプ 22戸 

(4) 附属建物

集会所、倉庫                  

(5) 駐車場等

駐車場40台(うち身体障害者用2台、介護事業者用3台)

駐輪場95台(うち80台上屋根あり)

バイク置場30台(うち15台上屋根あり)

9 工事進捗状況

実施出来高 35%(令和元年10月31日現在) 

第7 監査結果

当工事は、「岸和田市営住宅ストック総合活用計画(公営住宅等長寿命化計画)」に基づき、上松、山下、神須屋住宅の3団地を山下住宅の敷地の一部に住戸を集約して建て替えを行うものである。

工事監査を行った段階では、南棟6階屋根梁鉄筋工事中、北棟6階壁鉄筋工事中であった。北棟、南棟ともコンクリートは5階まで打ち込みが終わり、1階から3階にかけて順次、型枠支保工撤去、躯体仕上げ下地調整、金属製建具の取り付け、断熱材吹き付け、ユニットバス据付、給排水配管など、仕上げ工事を始めている。足場は最上階まで組みあがり、足場外側にネットで養生していた。今夏の猛暑の中で躯体工事をするため、シート類で養生をすると風が通らず熱中症対策上不利なのでネットにしており、外装仕上げ塗装時には、シート養生を検討しているとのことであった。

工事の進捗は当初計画よりやや早く進んでいる。現在の建設業の活況による労務事情を考慮すると進捗状況は非常によい。

技術士による書類調査及び現場調査に立ち会って確認をしたところ、書類調査では、設計図書、工事請負契約、建設計画全般、施工監理及び施工管理について、総括的に問題はないと判断した。

現場調査では、整理整頓状況、作業状況ともに良好で、品質書類については、作成整理がされていた。コンクリートの打ち込み状況や打ち込み後の支保工も保持期間など適正に管理され、型枠撤去後のコンクリート面の状況も問題はなかった。

なお、以下の調査内容に関して、技術士から口頭にて提言のあった事項については、今後の技術水準向上に役立てられたい。

第8 調査の内容

技術士による工事技術調査結果報告書の主な内容は、以下のとおりである。

1 施設概要及び工事目的について

岸和田市が管理している市営住宅は、鉄筋住宅568戸、木造住宅158戸の総数726戸であるが、このうち既に建て替えにより新しくなったものや耐震改修が完了したものを除くと、耐震改修をして長く使うもの、耐震改修をすると機能が果たせなくなるか、寿命がきていて改修しても長く使えないので建て替えを必要とするもの、使われなくなれば撤去するものに分類される。

岸和田市では、平成30年度に「岸和田市営住宅ストック総合活用計画」を見直し、現在16か所のそれぞれの市営住宅をストックとしてライフサイクルコストを考慮しながら管理していく見直し計画に基づき上記を実行していくこととしている。

岸和田市の総人口は約19万人であり、廉価な家賃で入居できる市営住宅などを必要とする住民の想定数を質問したところ、約12,000弱の世帯数が見込まれ、府営住宅の現在の戸数5,466戸を併せた公営住宅による引き受けは50%程度であった。公営住宅の比率としては、全国平均と大きく離れたものではない。

今後の人口減少傾向も見据え、2040年度までの5年毎の必要供給戸数をもとに管理戸数も計画されていた。

当工事での上松・山下住宅でも、上松住宅の既存鉄筋住宅30戸のうちに、耐震補強を行うと使用できなくなる住戸があり、残存寿命年数も20年程度であること及び木造住宅が23戸あるほか、山下住宅の11戸、神須屋住宅の4戸の木造住宅を併せて今後の新しい住宅ストックを確保するため建て替えることとしていた。妥当な判断と思われる。

なお、今回の工事費用は、国庫補助金が50%、地方債50%としている。ただし、賃貸住宅としての収入があるので起債に対する交付税措置はない。

2 書類調査について

(1) 設計図書、特記仕様書等に関して

ア 構造計画について

基本的に鉄筋コンクリート造6階建のラーメン構造であり、1フロアについて北棟で6住戸、南棟で5住戸の矩形平面であり、渡り廊下部分と屋外鉄骨階段部分をエキスパンションジョイントで接続する配置である。梁間方向は間仕切り壁が耐震壁となっており、桁行方向が純ラーメン構造の中層鉄筋コンクリート住宅である。構造計算においては梁間方向ルート1、桁行方向ルート3により、地震時の重要度係数は1.0で算定している。

イ 杭について

敷地内4か所のボーリング調査から支持力及び摩擦力による既成杭の採用としている。地震時に引き抜き力が発生する箇所があるので、妥当である。

ウ シックハウス対策について

計画通知時の仕上げ表により建築材料を確認しており、使用材料の承認にあたりカタログ等により性能、化学物質、アスベストの有無を確認していく予定という。VOC(揮発性有機化合物)については、工事完了後に1フロアにつき1住戸計6住戸の測定を予定している。塗料、接着剤については、屋外の施錠できるプレハブ物置に保管する予定であり、工事中の換気についても問題はない。

(2) 積算等に関して

ア 数量積算者は委託設計者の共同設計株式会社により行われた。

(設計事務所の決定はプロポーザルに応募した9者から選定された)

イ 積算の基準は下記の通りであることを確認した。

積算は、公共住宅建築工事積算基準、公共建築工事積算基準・同解説、建築数量積算基準・同解説に準じてされていた。

ウ 値入れは委託設計事務所が行い、公共建築マネジメント課担当者が見直しをしていた。「単価」や「歩掛」は原則、市販の刊行物の平均値を採用し、刊行物に単価のないものについては、改訂20版工事歩掛要覧や公共住宅建築工事積算基準によることとしていた。歩掛のないもの及び刊行物に単価のないものについては、業者見積りをとり、最低のものに低減率をかけたものを採用しているとのことであった。

積算書は設計書としてまとめられ、担当者、主幹、課長の照査後、決裁印が押印されていた。

上記により、積算について問題はないと判断した。

(3) 入札及び契約関係等に関して

ア 入札参加業者の見積り期間について

設計図書配布日平成30年9月20日の翌日から入札日平成30年11月9日の前日まで49日間(うち土日祝16日間)であった。

イ 質疑状況及び落札者について

質疑は2社から13件出されていた。なお、入札では市内業者2社が応札し、岩出建設株式会社が落札者となった。

ウ 監理技術者と主任技術者の資格について

監理技術者資格者証、1級建築施工管理技士の免許証の有資格者であった。

エ コリンズの登録内容確認書の提出について

写しが保管され、適正であることを確認した。

オ 前払金保証及び工事の履行保証について

前払金保証については、西日本建設業保証株式会社の保証証券を、履行保証については、損害保険ジャパン日本興亜株式会社の証券を確認した。

カ 建設業退職金共済について

工事請負者が購入していた建設業退職金共済証紙の領収書を確認した。

キ 設計変更について

解体工事、杭工事などを含めて設計変更は発生していない。

上記により、入札、契約に問題はないと判断した。

(4) 施工管理・品質管理・施工監理等に関して

ア 施工計画書について

仕様書に章として記述されている工事種類に関する施工計画書を作成することとしており、総合仮設計画、基礎工事からボード工事など各種工事に関する個別施工計画書が作成されていた。基礎杭工事について、杭の支持力確認方法について質問したところ、ボーリングデータによる掘削深さ、杭打機のドリルの音や電流値について監督職員が全数立会い確認することとしていた。鉄筋工事における定着や鉄筋位置の確認方法、開口補強筋の施工方法なども計画書により整備されていた。

その他の計画書も「内容確認」及び「審査済」の手続きは適正に行われていた。

イ 使用材料について

躯体工事使用材料及び仕上げ工事材料の確認は、カタログ試験成績表等により行うほか、材料承認手続きも適正に行われていた。

ウ 実施工程表について

ネットワーク手法による実施工程表にはクリティカルパスは表示されていなかった。直営で工事監理を行う担当者にどの工程がクリティカルパスであるかを質問したところ、躯体の上棟から上部階への仕上げ、足場撤去、外部工事であることが把握されていたので、当面工程管理に問題はない。

仕上げ材などの外注製作物の作図、承認、製作の期間も工程表に表示されており、現状予定通りに進捗しているので、問題はない。

エ 建設副産物の扱いについて

工事着工前に行う「運搬収集・中間処理・最終処分」の契約、再生資源利用計画書の作成が行われ、これまでの解体工事における「マニフェスト」の記録もされていた。

オ 施工体制台帳について

請負業者所定のファイルに元請け、下請けの所定の書式が整理されていた。

カ 工事監理・監督について

工事監理は建設部公共建築マネジメント課の直営により行われ、「監理業務分掌区分」は、建築工事、機械設備工事、電気設備工事で明確に区分されていた。

施工業者から、「月間工程表」及び「週間工程表」などの提出を受け、「工程監理」を行っていた。毎週木曜日9時30分から各施工業者、工事関係者、市担当者が出席した工程会議が行われ、議事録も整備されていた。会議には市監督職員、工事関係者、施工者が毎回出席し、記録にはすべて担当監督員の押印がされていた。施工業者への指示・連絡、試験・検査などにおける指摘事項についても定例会議記録に保管されていた。

キ 特記仕様書に記述されている個別の工種工事の監理について

(ア) 仮設工事

官庁提出書類を確認したが問題はなかった。労働安全衛生法第88条第1項の届出について、足場、工事用エレベーターの設置届が滞りなく提出されていた。総合仮設計画図において、進入路、誘導員の配置、仮囲い、仮設建物、足場、揚重設備など所要の計画が記述されていた。熱中症対策としての水分補給や休憩も計画していた。

(イ) 土・土留工事

掘削土は、阪南2区公共処分地に場外搬出するものであったので、重金属等16項目、揮発性有機化合物13項目、農薬5項目、有機塩素化合物、ダイオキシン類及び油分それぞれ1項目の合計37項目について土壌調査が行われ、いずれも基準値以下であることを確認していた。掘削深さは2.5m程度で、山留め工事についても、オープンカットであり土留工事の該当はない。

(ウ) 地業工事

杭専門業者「ジャパンパイル」の施工による既成コンクリート杭を利用し、先端支持力及び摩擦力により上部荷重を支持するものである。支持力確認方法として、支持層への杭先端の到達は、ボーリングデータによる掘削深さ、電流計の値記録を確認することにより行っており、監督員が施工時に全数立ち会っていた。先端固定方法については、固定液(セメントミルク)製造記録や使用セメント量の確認がされていた。施工計画書、報告書、帳票、立会確認記録、写真も適正に整備されていた。掘削、床付け後の杭芯や杭頭高さの誤差記録も実施され、すべて基準値内であった。杭頭補強の鉄筋溶接記録も適正にされていた。

(エ) 鉄筋工事

鉄筋材料証明書、入荷札及びロールマーク確認写真より材料が適正であることを確認した。

主筋継手部溶接部の抜き取りによる引張試験結果より溶接継手部の品質が適正であることを確認していた。

配筋検査は、施工業者自主検査の後、監督員の検査が行われ、検査記録・是正記録、写真ともに整備されていた。

梁の開口補強は既成リング筋によるものとしていたが、部位・孔径別の補強方法が事前に整理され、補強方法が適正であることを監督員が確認していた。

(オ) コンクリート工事

生コンは4プラントを使用すべく配合報告書が整理されていたが、実際に使用されたのは株式会社西野建材店、株式会社国土一の2者で、いずれもJISマーク表示工場であった。運搬所要時間は15分から30分である。骨材のアルカリ骨材反応無害の証明や生コンの塩分含有量のカンタブ試験記録も整備されていた。

当工事では、事前に岸和田市所定のコンクリート打設計画書、打ち込み後のコンクリート打設報告書を整備することとされており、施工日、棟別、部位別にトレーサビリティーが確認できるようになっていた。フレッシュコンクリート試験結果、固まったコンクリートの1週、4週強度が施工日付順に記録されていた。

型枠撤去後豆板やコールドジョイント補修の方法や記録について質問したが、これまでに発生していないとのことであった。

 (カ) 鉄骨工事

鉄骨工事は屋外階段のみであるが、まだ業者が決定していないとのことであり、今回はアンカーボルトにスーパーハイベースを基礎躯体に打ち込んだ状態であった。施工記録写真など整備されていた。

今後、製作する上で、ダイヤフラム部分でのSN490C材(板厚方向の強度を保証した鋼板)の使用が確認できるように工場での品質管理記録、納品書、ミルシート、材料検収写真を整理していくことを依頼した。

(キ) メーソンリ工事

当工事では該当はない。

(ク) 防水工事

住戸部の屋根、庇は切妻型の勾配屋根で鋼板瓦棒葺きであり、屋根防水などのメンブレン防水は、階段屋根、集会室屋根、住戸溝部などとなる。このほか、エレベーターピットの塗膜防水も含まれる。

シール防水として建具廻りのシールや打継目地のシールが今後施工されることとなる。

コンクリート系の共同住宅では、一般にコンクリートで水を止めるという意識をもち、躯体からの漏水がない状態で防水されることが望ましいところ、本建物は屋根がコンクリート切妻であり、附属建物もシンプルな屋根形状であるから、上記が実現できる可能性が高い。近日中に躯体が上棟し、型枠支保工の撤去後、断熱材発泡ウレタン吹き付け前に漏水が起きていないことを確認されることをお願いする。

また、防水施工後水張り試験をおこなってドレイン周りの漏水がないことも確認しておけば心配はないだろう。アスファルト防水、塗膜防水ともに10年の保証書が提出されるとのことである。シール防水についても接着性試験を行い、保証書も提出されるとのことである。

(ケ) 石工事

当工事では該当はない。

(コ) タイル工事

調査時点では、施工されておらず、特に確認する事項はない。

(サ) 木工事

現状未施工ではあるが住戸部は木製パネル間仕切りによる施工であり、躯体コンクリートとの固定方法について質問した。本工法では最近でも躯体に木レンガを打ち込む事例があるが、接着剤塗布のうえ、コンクリート釘を機械で打ち込み固定する方法をとっているとのことであった。床根太が躯体コンクリートに接する部分の防腐剤処理についても、「コシマックスBF20乳剤」を塗布することとしており、材料の証明書も確認していた。

(シ) 屋根・外壁及び樋工事

コンクリート勾配屋根下地に左官補修を今後行ってから施工予定である。一般的なガルバリウム鋼板厚0.4mm瓦棒葺き、下地ペフ敷設のもので実績のある工法であり、問題はない。

(ス) 金属工事

外部の手すりにはアルミ製を予定していて、錆止め塗装などの維持費は不要である。取り付け部の強度確認方法について質問したところ、市担当者が体重をかけて確認することにしているとのことであった。屋上丸環も、大屋根の棟部に設置することとしていた。

(セ) 左官工事

書類調査上での特筆事項はない。

(ソ) 建具工事

アルミ製建具の耐風圧性、気密性、水密性及び鋼製建具の耐風圧性、気密性についても仕様書指定を満たしていることを確認していた。

(タ) ガラス工事

建具ガラスの止め方について質問したが、すべてシール固定であり、ビードやガスケットは使っていない。

(チ) 塗装工事

VOC放散量が少ない、F☆☆☆☆(エフ・フォースター)の塗料を選定予定である。塗料は屋外のプレハブの施錠できる物置に保管又は持ち帰り予定であり、シンナーの使用後は、持ち帰り予定である。

(ツ) 内装工事

内装材・接着剤について、F☆☆☆☆のものであり、アスベストを含有していないことをカタログで確認のうえ選定予定である。

外壁コンクリート内側には発泡ウレタン断熱材吹付となっているので、吹付厚の確認方法を質問したが、ゲージ等を用いて確認予定ということであった。最上階屋根裏では柱梁ともポリスチレンフォーム板(スタイロフォーム)であるのを、請負者の要望により発泡ウレタン吹付に変更していた。躯体工事の容易さや、断熱性能が同等以上であることを考慮して、問題ない変更である。

(テ) 雑工事

浴室、台所、洗面の住宅機器にはBL(ベターリビング)認定品を使用することとしており、仕様として問題ない。別途設備工事との配管類接続についてもスリーヴ位置、径など着手前に順次確認している。

(ト) その他

設計時点で、ランニングコストの削減について、屋外鉄骨階段は溶融亜鉛メッキとして鉄部塗装をやめ、共用パイプスペースのオープン化、受水槽を使用しない給水システム採用やLEDを利用した照明などの維持費削減策を立案していた。機械設備、電気設備の各工事についての建築工事との関連部分の調整は毎週実施する工程会議で調整を行い記録していた。排水工事での管径、勾配、容量についても、「建築設備設計基準」に準じて計画していた。

昇降機設備工事について、積載600kg、定員9人のエレベーターが1台設計されている。大阪府福祉のまちづくり条例に適合し、耐震基準に基づき地震感知や最寄り階への誘導停止開扉システムがインストールされたものとなっている。維持管理方法として、製造者である日立とメンテナンス契約を予定している。

書類調査において、問題はないと判断した。

3 現場調査について

10月末の実施出来高は35%であり、当初の工程計画より進んでいる。最近の建設業の好況な状況、作業員不足が言われるなか、非常に良いことである。

現場は、最上階の躯体コンクリート工事について、北棟の型枠工事が完了し、梁鉄筋組立中、南棟の柱鉄筋が組みあがり、壁鉄筋組立中であった。躯体上棟の日程は問題なく守れると思われる。現場事務所前から見た妻面外壁や手すり端部などの通りもよくできていた。1階から順次仕上げ工事が始まって3階まで仕上げ工事を着手している。

現場の通路整備や、整理整頓状況は良好であり、日々の安全書類は整備されており、施工体系図の掲示、安全掲示板や朝礼広場も整備されていた。現場での技術調査で気づいたことを以下に述べる。

(1) 品質事項

ア 作業環境や作業員の姿勢をみても、整理整頓、通路の整備、服装、挨拶など好ましいものがあった。トイレの清掃も清潔に行われており、場内がきれいであった。

イ 車両進入路の敷き鉄板やトラッククレーンの足元鉄板なども隙間や段差がないきれいな状態になっていた。

ウ 書類審査で質問した杭工事の電流計、固定液用のセメント納品書を確認したほか、鉄筋工事での指摘、是正の記録も確認した。鉄筋検査での被りや梁底の清掃及び是正の記録が残されていた。

エ 住棟の躯体はボーダー部の化粧打ち放し部や、出隅の目地棒仕上げなど、丁寧に型枠工事がされており、仕上げ墨が壁面に打たれていたが、躯体の精度も良好であった。

オ 1階の壁開口部の角から収縮ひび割れが発生している箇所があったが、仕上げ塗装まで時間があるので、様子をみて所要の処置をするとのことなので、経過観察されたい。集会室の柱面に小さな豆板があったので、所定の是正方法を行い、記録しておくことを依頼した。

カ 1階身障者用住戸2戸ではバルコニー床において一般住戸よりも100mm程度高く嵩上げコンクリートを施工するが、一般住戸と同じくモルタルとするのではなくコンクリートを施工し、ワイヤメッシュ又は鉄筋を配置することを提言した。

(2) 安全設備ほか

ア 場内の安全設備はおおむね問題はない。北棟と南棟との間ではエキスパンションジョイントがあるが、人が通る範囲には合板による通路が設置されていたが、両側で15cm程度の隙間があり、この間から鋼管や金物などを落としたときには1階まで落下到達する恐れがある。また、住戸躯体と昇降機設備躯体の入隅で1か所落下養生施工中の箇所があった。今後10m以上の高さでの作業が多数発生するが、墜落防止や落下物、飛散物には入念な注意をすることをお願いした。

イ 安全日誌には、統括安全衛生責任者が毎日2回巡視し、安全指摘事項を記述し、現場担当者による是正報告が記録されていた。日々の安全管理状況が良好である証となっていた。別途工事業者にも統括安全衛生責任者の指導権限はあるので、遠慮せずにダメを出して指導していくようお願いした。

4 技術士による総括

東西に長さがある岸和田市のほぼ中央部で新設された消防本部前の既存市営住宅の解体建替工事であり、JR阪和線東岸和田駅東側に徒歩10分という立地である。計画について、必要性、妥当性、仕様、資金について問題なく、工事について、積算、契約なども問題はなかった。

工事書類、現場の管理状況も当初の計画通り実施、進捗していると判断した。

ここまでの工事を進めてこられた関係者の努力をたたえるとともに、仕上げ工事、外部工事など共同住宅建築工事で発生し得るトラブルをこれまでの経験などを参考にして予見し、対策をたてて問題を回避して良好な住宅ストックとなることを願う。  

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