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第31回 濱田青陵賞 受賞者決定

印刷用ページを表示する 2018年7月26日掲載

第31回濱田青陵賞受賞者の決定について

平成30年(2018)度、第31回濱田青陵賞の受賞者は、朝日新聞大阪本社で行われた濱田青陵賞運営協議会並びに選考委員会において、慎重な審議の結果、弘前大学教授の関根 達人(せきね たつひと)氏に決定しました。  

授賞式式典および記念シンポジウムは9月23日(日曜日)午後1時00分より岸和田市立文化会館(マドカホール)で開催いたします。

これまでの受賞者はこちら

受賞者の紹介

受賞者氏名  

 受賞者写真

関根 達人氏

経   歴   

   1989年 東北大学史学科卒業

   1991年 東北大学大学院国史学博士課程中退

   1992~2001年 東北大学埋蔵文化財調査研究センター助手

   2001年 弘前大学人文学部助教授

   2010年 弘前大学人文社会科学部教授

   現在  弘前大学人文社会科学部教授 

主な論著

・  『北方社会史の視座第1巻』清文堂 共著(2007) 

・  『あおもり歴史モノ語り』無明舎出版 (2008)

・  『松前の墓石から見た近世日本』北海道出版企画センター 共著(2012)

・  『中近世の蝦夷地と北方交易』吉川弘文館 (2014)

・  『モノから見たアイヌ文化史』吉川弘文館 (2016)

・  『墓石が語る江戸時代』吉川弘文館歴史文化ライブラリー464 (2018)

受賞理由

 「独自の視点と 方法により考古学が中世史・近世史に大きく貢献しうることを示した」

 関根氏は文字文化を持たなかった前近代のアイヌの歴史や文化について、考古資料を用いて、北海道・樺太(サハリン)・千島の広範な地域と、日本、中国、ロシアとの交流から解明しようと試みた。日本が中世的世界に移行した12世紀以降、刀剣や漆器をはじめとする多様な日本製品がアイヌ社会に受容され、アイヌ社会が日本経済圏に組み込まれていく様子を描きだした。特に日本産の酒やタバコがアイヌ社会に多大な影響を与え、和人とアイヌとの関係性に大きく作用したことを論証した点は、従来の米、鉄、陶磁器に偏った研究に一石を投じるものとして特筆される。和人の北方進出により戦国期には北海道南西部まではお茶と仏教が浸透する中世的世界に組み込まれたが、その後も津軽海峡周辺域は17世紀まで和人とアイヌが混在するボカシの地域であったことが、考古資料を通して明らかとなった。

 また、これまで歴史資料としてあまり検討されることのなかった墓石などの近世石造物から、江戸時代の人口(死亡)変動、社会構造、地域間交流を導き出した点も重要である。関根氏の研究により、古文書による「紙に書かれた歴史」や考古資料による「大地に埋もれた歴史」とならんで、石造物による「石に刻まれた歴史」の可能性が新たに拓けた。 

 最新著作の『墓石が語る江戸時代-大名・庶民の墓事情-』では、北海道・青森から北前船の重要な寄港地である福井県へと調査地を広げ、墓石数約3万1千基、死者数約6万2千人分ものデ―タに基づき、日本海沿岸域を結ぶ広範な人・物・情報の交流を描き出した。これにより先に述べた蝦夷地の歴史が日本近世史に大きくかかわりを持つことが示された。その研究手法は各地の大学などの協力によって実現した「ちからわざ」ではあるが、江戸時代を中心とする人の生死や移動を「ビッグデ―タ」としてまとめ上げたものであり、携帯電話とGPSを利用した現代のビッグデータ調査に通じる。この著作は刊行直後に朝日新聞の書評欄などでも採り上げられ、一般書としても注目を集め始めている。専門用語に偏らず平昜で明快な著述を心がけており、その点も好感が持てる。

 関根氏の幅広く骨太で実証性に富む地道な研究は、考古学の範囲を時空ともに限定することなく、その無限の可能性を認めた濱田青陵博士の考え方に合致するものである。  

 以上のことから濱田青陵賞選考委員会は、関根達人氏を第31回濱田青陵賞受賞者として選定するものである。