岸和田のむかし話5 津田川・城下周辺の話・(8)軽業師と山伏と医者(南)
岸和田は欄干橋(らんかんばし)の高橋という医者と、むかし南町にあった高間(たかま)寺の山伏、それに、大阪の寅吉(とらきち)という軽業師(かるわざし)の3人は大の仲良しでしたが、ある年の流行(はや)り病(やまい)で3人そろってぽっくり死んで、地獄は閻魔(えんま)大王の前へ引き出されました。取り調べの結果、3人ともに生前あまりいいことをしていない、とわかり、
「鬼ども、こやつ等を針の山へ追い上げよ!」
ところが、大阪の寅吉はさすがに日本一の軽業師。医者と山伏肩に乗せ、針の先から針の先、ひょいひょい跳(は)ねて飛(と)び越えて、3人揃(そろ)って澄まし顔。
次なる責(せ)め苦(く)は釜(かま)ゆでの刑(けい)。ぐらぐらたぎる熱湯(ねっとう)も、山伏得意の呪(まじな)いで、温泉もどきのいいお湯かげん。
釜の中の3人は、
「ああ、いいお湯や。たまらんわあ」
「地獄も案外ええとこや」
あきれかえった鬼たちの報告聞いて、がんがんに怒った大王が、逃げる3人つかまえて、ぺろりぺろりと呑み込んだ・・・
「わあ、閻魔の胃液で溶かされるう」
「うんこにされてしまうがなあ」
「なあに、心配せんでええ。わしの薬を一口飲めば、便秘(べんぴ)でうんこも出えへんわい」
3人寄れば、閻魔さんなどこわくない。跳(と)んだり、はねたり、踊(おど)ったり、閻魔の腹で大騒ぎ。
大王、うんうん苦しんで、とうとう3人吐(は)き出した。
「お前等みたいな奴等(やつら)の顔は、もうもう2度と見たくない。とっとと何処ぞへ行ってまえぇ!」
医者と山伏、軽業師、それぞれお葬式の最中に息吹き返したということです。

※ この「岸和田のむかし話」は市制70周年を記念して平成4年11月に刊行された本をWeb化したもので、岸和田に伝わる昔話や、発刊時に創作された話を収録しています。
あくまでも昔話ですので、必ずしも史実に基づいているものではありません。
