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報道発表 濱田青陵賞受賞者の決定

印刷用ページを表示する 2017年7月26日掲載

概要

 平成29年7月12日、朝日新聞大阪本社で行われた濱田青陵賞運営協議会並びに選考委員会において、第30回濱田青陵賞の受賞者が、外村 中(そとむら あたる)氏に決定した。

 授賞式式典は9月24日(日曜日)午後1時00分より岸和田市立文化会館(マドカホール)で開催予定。

 ※同日開催の記念シンポジウムの内容については未定です。

詳細

受賞者プロフィール

受賞者氏名

外村 中(そとむら あたる)

外村中氏

経歴

1986年 京都大学大学院農学研究科林学専攻修士課程修了

1988年 英国ニューカッスル・アポン・タイン大学大学院修士課程修了

1990年 ドイツ・ヴュルツブルク大学漢学系専任講師

1994年 京都大学大学院農学研究科林学専攻博士後期課程修了(農学博士)

1998年 東京国立文化財研究所客員研究員

2003年 ドイツ・ハイデルベルク大学ハビリタツィオーンス・エクィヴァレント認定

2005年 京都大学人文科学研究所招へい外国人学者

2007年 京都大学人文科学研究所客員教授

2013年 国際日本文化研究センター外国人研究員

2016年 JSPSフェロー・京都大学人文科学研究所招へい外国人学者

現在  ヴュルツブルク大学東方文化研究所漢学系上級講師(2015年-)

主な論著

 「キジル石窟に描かれた大乗の神変仏について」(『東方学報』2016)

「『華厳経』の宇宙論と東大寺大仏の意匠について」(『日本研究』2015)

「東大寺大仏蓮弁毛彫図について」(『南都仏教』2014)

「正倉院琵琶源流攷」(『人文学報』2013)

「魏晋洛陽都城制度攷」(『人文学報』2010)

「唐の長安の西内と東内および日本の平城宮について」(『仏教芸術』2011)

「古代インドの絃楽器「ヴィーナー」「ヴァッラキー」「トゥナヴァ」」(『古代文化』2010)

『中国古代造園史料集成』(共著:中央公論美術出版 2003)

 受賞理由

東洋古代の芸術文化の解明に大きく寄与した

受賞理由詳細

「東洋古代の芸術文化の解明に大きく寄与した」

 外村中氏は京都大学農学部で造園学を専攻し、博士論文「東アジアの古庭園に関する基礎的研究」で学位を取得、その後、京都大学の田中淡教授やドイツ・ハイデルベルグ大学のレダローゼ(Lothar Ledderose)教授に師事して研鑽を積み、文物考古資料の透徹した観察と綿密な文献考証にもとづく特色あるシノロジー(Sinologie)の学統を継承してきた。現在、ドイツ・ヴュルツブルク大学で教鞭をとる外村氏は、以下のような多分野にわたる研究成果を日本語・英語・ドイツ語で発信し、世界レベルで研究をリードしている。

 第一に、庭園史の研究である。奈良・平城宮東院など8世紀にさかのぼる枯山水の起源について中国の古文献や朝鮮半島の遺跡発掘例をもとに探り、平泉・毛越寺など日本独自とされる浄土庭園をめぐって平安時代後期の『作庭記』や唐・道宣の『祇園図経』など漢文史料の精密な考証を行った。また『中国古代造園史料集成』(中央公論美術出版、2003)を田中淡らと編集し、近年は庭園デザインの背景にある思想を分析しつつ、インド仏教の「方池を中心とする庭園」と東アジア古代の「池と島の園林」「池と築山の園林」とを比較している。

 第二に、東アジア古代都城制の研究である。庭園史研究の延長として中国古代の都市と園林との空間構造を分析し、両漢代には都城の西外側に「上林苑」が位置していたが、魏の明帝が修造した洛陽城では宮城の北に「華林園」が位置していること、洛陽城ではさらに「太極殿」や「閶闔門」など宇宙になぞらえた都市デザインが創出されたことを克明に復元している。また、唐の長安城に対しても皇帝の生活空間に関する分析を行い、奈良の平城宮と比較している。外村氏の提言を受けて今後の活発な議論が期待できる。

 第三に、仏教美術史の研究である。近年、外村氏が注力している研究テーマは、仏教の宇宙観において世界の中央にそびえる須弥山世界、大乗仏教の代表的な経典のひとつである『華厳経』とその造像の分析である。宇宙に花咲く蓮の花托に坐す仏をあらわした奈良・東大寺大仏について、大仏は7世紀に漢訳された『八十華厳』ではなく5世紀に漢訳された『六十華厳』による華厳教主の盧舎那像とし、台座の蓮弁に陰刻された図像は『探玄記』や北魏撰述の『梵網経』の宇宙論に符合するとした。一方、中央アジアのキジル石窟第17窟には全身に須弥山世界を描き込んだ仏陀の壁画があり、宇宙仏としての釈迦とみる説に対して、外村氏は盧舎那仏が奇跡をあらわした図像と解釈する。仏教造像と『華厳経』をはじめとする諸経典とを精確に対照する図像学の手法を取りつつ、国内外で提起された諸学説が手際よく整理され、今後の議論への指針が示された意義は大きい。 

 第四に、東西交渉史の研究である。中国起源とされてきた「阮咸」をはじめ、「曲項」や「五絃」と呼ばれる正倉院伝来の琵琶の源流を、外村氏はローマ・エジプト・中央アジア・インドに求め、中国から日本への流入を詳細に考究している。これは東西ユーラシアの文化交流を解明した研究であり、外村氏の面目躍如たるところがある。

 以上、東洋古代の芸術文化を多角的に分析した外村中氏の業績は、考古学はもとより世界の学術界において傑出したものがあり、ここに第30回濱田青陵賞の受賞者として選考した。

 濱田青陵賞選考委員長 九州大学名誉教授 西谷正

岸和田市文化賞「濱田青陵賞」とは

 濱田青陵賞は、岸和田市にゆかりが深く、我が国考古学の先駆者として偉大な功績を残され、多くの後進を育成された濱田耕作(号 青陵)博士没後50年にあたる1988年に、「岸和田市文化賞条例」に基づき、岸和田市と朝日新聞社が創設しました。

 博士の業績を称えるとともに、我が国考古学の振興に寄与する目的で、業績のあった新進の研究者や団体を広く選考し表彰するもので、今回で30回目を迎える。

本件に関する問合せ先

郷土文化室(電話:072-423-9689)