風物百選 99 牛滝明王の滝

印刷用ページを表示する 2009年3月3日掲載

牛滝明王の滝の日本画日本画  望月黎

 牛滝の山は渓谷に裂かれて、二つに分かれている。前方を東滝山、後方を西滝山と呼ぶ。
 西滝山には、古杉(こさん)・老松(ろうしょう)がうっそうとして空を覆い、その間にカエデの木が点綴(てんてつ)する。これに比べて、前方の東滝山のほとんどはカエデである。
 一日千本―。千尋(じん)の懸がいを、ひたすら真っ赤に彩るこの東滝山の紅葉(もみじ)の華麗さは、古くからこう呼ばれて久しい。寺の境内には千両カエデもある。
 牛滝は水がいい……。箕面もそうだが、どんなに紅葉が見事だろうと、水がなければつまらない。牛滝の山々は、またこの瀑布(ばくふ)にも恵まれているのだ。

 明治23年、大沢簡易小学校に赴任した南彦太・準訓導は、こう書いている。
 ―牛滝山中二瀑布(ばくふ)アリ、其ノ潭心(たんしん)ニ巨岩アリテ形状臥牛(がぎゅう)ニ似タリ。故ニ此ノ名アリト謂フ。山麓ニ古刹(こさつ)アリ、大威徳寺是ナリ。往昔(おうせき)四十八坊ノ堂塔伽藍荘厳(どうとうがらんしょうごん)ヲ極メシモ、今ハ只(タダ)二坊ヲ残スノミ―

 詳しい滝の記述はないが、文中のこれは三の滝である。滝は奥から一の滝(二丈四尺)二の滝(一丈二尺)三の滝(三丈六尺)とつづき、この三つが最も大きい。三の滝から一の滝までの間に、小瀑布が四十八ある。
 神於寺の盛衰と同じく、牛滝の大威徳寺もほとんどの伽藍(がらん)を失った。が、白い飛まつをあげる三つの大滝と、う余曲折する渓間(けいかん)に清れつな顔を見せる四十八滝は、今なお淙々(そうそう)と流れてやまない。

文 森下敏一

資料

 牛滝山には、大きな滝が三つあった。叡山の恵亮和尚が、ここで大威徳法をおさめたとき、大威徳尊が三の滝(明王の滝)から牛に乗って出現したと伝えられる。
※ 文中に紹介されている「千両楓」は、現在は枯死しています。

交通

 バス停牛滝山から南350メートル


 この「岸和田風物百選」は、岸和田市の市制60周年記念事業の一つとして昭和58年(1983年)に制作されました。

 そのため、内容が古くなっている部分もありますが、交通手段を除いて、原本に忠実に再現しています。これは、実際に現地を訪れた際に、この間の時の移り変わりを感じていただければとの考えからです。