風物百選 91 大沢の杉山

印刷用ページを表示する 2009年3月3日掲載

大沢の杉山の油彩油彩 室谷十舞

 牛滝のもみじの山近く、大沢町の高い丘の上に寺がある。浄土宗知恩院派、高座山転法輪寺がそれである。
 住持は旧知の人。かつては大沢分校に教べんをとり、"分校の主"ともいわれた熱心な教育家、高見篤良氏である。恐る恐る声をかけると、案の定、彼は書類の山の中で寺務遂行の最中であった。「大沢の山を見にきた」と本意を告げると、彼は繁忙の一刻を割いて私のためにいろいろ話をしてくださった。
 境内に出立つと、前面に大沢の山並みが見渡せるのでありがたい。牛滝の流れを隔てた向こう側に、高い急な斜面、黒々とした冬の森が目に飛びこんでくる。また、山の方に古風な白壁の家やわらぶきの家も見える。「あの山の頂きに、大沢城の砦(とりで)があったそうである」と彼は指した。「きれいだなあ、この辺は」冷たい清澄な空気の中に、しばし恍惚(こうこつ)として見とれていた私である。
 彼は振り返って、後方の峰を指した。山頂に切り立った岩が見える。
 「あれが高座山といって、役の行者が修行したと伝えられる」
 「道理で、貴殿の寺の山号は、高座山というのですね」
 大沢神社、大杉(文化財)、分校の話など尽きないが、名残りを惜しみつつ帰途についた。

文 水尾清凉

資料

 大沢から牛滝の谷にかけては杉の美林が多い。杉はどちらかというと湿地を好むので、谷の深い大沢付近には、昔から杉山が発達している。よく成長した大沢神社の杉が市の天然記念物になっているのもその例である。

交通

 バス停堂脇から南東300メートル


 この「岸和田風物百選」は、岸和田市の市制60周年記念事業の一つとして昭和58年(1983年)に制作されました。

 そのため、内容が古くなっている部分もありますが、交通手段を除いて、原本に忠実に再現しています。これは、実際に現地を訪れた際に、この間の時の移り変わりを感じていただければとの考えからです。