風物百選 86 新池付近

印刷用ページを表示する 2009年3月3日掲載

新池の油彩油彩 吉川栄一

 私たちの住んでいる小さな村、相川町。ここから一キロほど離れた高い所に、緑に包まれたすばらしい神秘的なため池―新池があります。
 春は、山桜がこの池のまわりを飾ります。松林の間からはツツジがのぞき、スミレやタンポポもかわいらしい花を咲かせます。そして、ウグイスの声があちこちに、ひびきわたります。奥に入ると本当にまれですが、カッコーの声も聞けます。初夏には、このあたりにしか育たないササユリが咲き、雨のあいまに、ホトトギスの声が山中にさえわたります。夏には、青々とした木々。そして日中は、騒がしいほどのミンミンゼミ。夜明けと夕方に鳴くヒグラシゼミ。これらは街にはいないセミで、河合より山手にすんでいます。
 秋は一斉に模様替えです。紅葉が真っ赤に染まり、山道には、ヤマグリの実が落ち、食欲をさそいます。
 そして夕方、夏とはちがって、静かでちょっと寂しい感じの、スズムシ・コオロギなど、秋の虫の合唱です。秋は落ち着いた和やかさに満ちます。私はこんな秋がいちばん好きです。
 そして、冬は風が山々に鳴り、いちだんと冷え込みます。街ではすぐ消えてしまう雪も、一度降ると、2、3日は雪化粧です。
 でも、父の子どものころに比べると、だんだんとササユリも少なくなり、松枯れで山が荒れ、ホトトギスや、カッコーの声もまれになったそうです。川からは、かわいいエビの姿が消え、ドジョウやゲンゴロウも見かけなくなったようです。こんな話を聞いているので、数少ないホタルを街の人に捕まえられ、連れて行かれるのを見ると、胸が苦しくなります。岸和田の「陸の孤島」ともいわれるこの地からも、「自然」がだんだん少なくなっていきます。けれども、まだまだ多く残された自然の中で生まれ、育っていることを、私は幸せに思っています。そして、いつまでもこの自然が残ってほしいと思うのです。

文 伊藤麻里子

資料

 西山の谷の水を集めて、上釜に高い堰堤をきずいた新池の付近は、いまだに数少い自然環境が保たれている所である。水面のムジナ藻、湿地の植物群。貴重な動植物の生活相が見られる。

交通

 バス停相川から西600メートル


 この「岸和田風物百選」は、岸和田市の市制60周年記念事業の一つとして昭和58年(1983年)に制作されました。

 そのため、内容が古くなっている部分もありますが、交通手段を除いて、原本に忠実に再現しています。これは、実際に現地を訪れた際に、この間の時の移り変わりを感じていただければとの考えからです。