風物百選 50 土生の鼓踊り

印刷用ページを表示する 2009年3月3日掲載

土生の鼓踊りの油彩油彩 奥野晃史

 土生町は、昔、土生郷村と呼ばれていた。土生の南部(塔原岸城線の土生バス停から北へ約100メートル入った所)に、西向寺と正光寺が隣り合って建っている。以前は、土生のほとんどの人びとが、門徒と浄土宗の二寺のどちらかの、檀家であった。
 西向寺は、荒れ寺であった。初代の住職が元禄の中期に再興したという。境内に5、600年はたっているだろう、といわれる「いぶき」の大樹がある。初めての人は、「古い木ですなあ」とこずえを見上げていう。枝は四方八方に伸びて、お寺の広場の空を占め、太い幹は縄のようにねじれている。夏は、この「いぶき」にたくさんのセミがとまり、子供たちには格好の遊び場となる。お盆にはその周りで盆踊りが催される。明治二十九年生まれのおじいさんは「小さいころはこの木のまたを通って踊ったもんや」と話していた。今は、股間も通れないほど幹が太い。
 盆踊りの太鼓のたたき方も変わっている。沈み込み、立ち上がり、跳ねたり飛んだり、くるりと回りながら撥(ばち)を打つ。鼓踊りと呼ばれる撥さばきは、だれもができるものではない。
 現在は、土生の村も町になり、あちこちに新興住宅が建って、人口も増加した。それでも、伝統精神というか継承文化というか、夏の一夜、土生の盆踊りは、西向寺の境内にそびえる「いぶき」の周りに輪となってひろがり、勇壮華麗な鼓踊りの太鼓の響きは、町内を突き抜けていくのである。

文 縣元子

資料

 毎年、盆の夜に西向寺境内で踊られる。衣装をこらし、樽と太鼓を打つバチ捌(さば)きの身ぶり手ぶりが面白く、市の天然記念物のいぶきの大樹のまわりで踊られる。

交通

 バス停土生から北150メートル


 この「岸和田風物百選」は、岸和田市の市制60周年記念事業の一つとして昭和58年(1983年)に制作されました。

 そのため、内容が古くなっている部分もありますが、交通手段を除いて、原本に忠実に再現しています。これは、実際に現地を訪れた際に、この間の時の移り変わりを感じていただければとの考えからです。