岸和田市人権施策基本方針

印刷用ページを表示する 2009年3月3日掲載

1.国内外の人権尊重の潮流

 昭和23年(1948年)に国際連合において採択された「世界人権宣言」は人類に多大な犠牲をもたらした二度にわたる世界大戦を反省するなかで、差別撤廃と人権確立こそが恒久平和を築く道であるとし、その後、「国際人権規約」をはじめとする様々な国際人権条約が生まれ、人権を守るための国際的な枠組みが整えられてきました。 
 我が国においては、「基本的人権の尊重」を基本理念に掲げた日本国憲法が制定されるとともに、国際人権規約や人権関連条約などを通じて、国家の枠組みを超えた国際的な人権保障の確立に努めてきました。
 また、平成6年(1994年)の国連総会において平成7年(1995年)から平成16年(2004年)までを「人権教育のための国連10年」とする決議が採択され、国、地方自治体においても人権保障のための積極的な取り組みが進められてきました。さらに、平成9年(1997年)に施行された「人権擁護施策推進法」に基づき、人権擁護推進審議会が設置され、人権擁護施策のあり方についての議論が進められてきました。
 平成11年(1999年)7月には、「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」と題する答申が人権擁護推進審議会から出され、国、地方公共団体等が取り組むべき施策の方向性が示されるとともに、平成12年(2000年)12月には、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が施行され、平成14年(2002年)3月には「人権教育・人権啓発に関する基本計画」が策定されました。
 大阪府が平成14年(2002年)3月の地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の期限切れ後の同和行政・人権行政のあり方を求めて実施した「同和問題解決のための実態等調査(2000年部落問題調査)」によると、教育・労働の課題等が残されているとともに、府民の差別意識の解消が十分に進んでおらず、部落差別事象も跡を絶たない等、同和問題が解決されたとはいえない状況にあります。
 人権侵害への迅速な対応と救済を目的とした人権擁護法案は、平成15年(2003年)11月に廃案となりましたが、人権擁護法案に代わる真の人権侵害救済法の制定にむけての取り組みが人権関係団体により進められています。

2.本市におけるこれまでの取り組み

 本市では、昭和55年(1980年)に「人間尊重と環境保全」を基本理念とした岸和田市総合計画を策定し、人権を大切にする市政の実現に努めるとともに、昭和61年(1986年)、庁内に「人権対策委員会」を設置し、職員一人ひとりの人権意識の高揚を図り、憲法にも保障された基本的人権を市民の誰もが保障される明るいまちづくりに取り組んできました。
 そして、昭和63年(1988年)と平成10年(1998年)に「人権に関する市民意識調査」を実施し、その結果をふまえ、一人ひとりが経済的、政治的、社会的にあらゆる差別を受けることなく基本的人権を保障される社会をめざして人権施策を実施してきました。 
 しかしながら、今なお部落差別事象が起きていることや、府の実態調査により市民の差別意識の解消が十分に進んでいない状況も明らかになっております。
 これからは、これまでの成果を踏まえ、一人ひとりがかけがえのない存在として尊重される差別のない社会の実現をめざし、さまざまな課題を有する人々の行政ニーズを的確に把握し、人権尊重の観点に立った施策を総合的に推進する必要があります。

3.取り組むべき主要課題

(1) 同和問題

 同和問題は、人間の自由と平等に関する重大な問題であり、憲法によって保障された基本的人権にかかわる深刻かつ重要な課題であるという認識のもと、その解決は国民的課題として取り組まれ、生活環境の改善をはじめとする物的基盤整備では着実に成果を上げてきました。
 しかしながら、平成12年(2000年)に実施された大阪府の実態等調査結果によると、進学率、中退問題など教育の課題、失業率の高さ、不安定就労など労働の課題が残されているとともに、結婚問題を中心とした差別意識の解消が十分に進んでおらず、同和地区に対する忌避的態度は解消されていないなど、同和問題は解決されていないのが現状です。

(2)女性の人権

 社会制度や慣行の中には、固定的な性別役割分担の意識や女性に対する差別が再生産される仕組みが今なお存在しています。性によって、役割を固定する考え方は、女性が社会参加し、自分の人生を選んでいく上での妨げとなります。
 また、夫・恋人からの暴力(ドメスティック・バイオレンス)、セクシュアル・ハラスメント、性暴力など女性に対する暴力も重大な問題です。

(3)子どもの人権

 仲間はずしや生徒間での言葉や暴力による「いじめ」によって、時には命にかかわる深刻な状況を生み出しています。また、家庭における子どもの虐待など、子どもの健やかな成長が阻害される問題が顕在化しております。さらに不登校や、さまざまな要因から非行に走る子どもたちも減少していません。大人一人ひとりが子どもの思いを見つめ、子どもにとって最善のものは何かを見つけ出して行動することが必要です。

(4)高齢者の人権

 高齢化が急速に進む中、一人暮らしの高齢者や認知症高齢者、障害や疾病を有する高齢者を中心に、日常生活において財産や金銭を詐取されたり、暴力やいじめにあうといった権利侵害の事例が見受けられます。高齢者が住み慣れた地域で生きがいを持って暮らし、それぞれの豊かな経験や能力をいかして社会参加するための環境づくりが必要です。

(5)障害者の人権

 身近な所で、障害のある人もない人も当たり前に暮らすためにはバリアフリーが必要です。しかし、施設や病院等における不当な処遇など人権侵害にかかわる事例の発生のほか、就労における差別や入店拒否などの問題が存在しています。 また社会福祉施設等の設置に際し、地域住民との摩擦(いわゆる施設コンフリクト)が発生するなどの問題も存在します。すべての人が当たり前に暮らすために、道路の段差等の物理的バリア、手話通訳・点字の不足等の文化・情報面のバリアとともに、一人ひとりの心のバリアも解消していくことが必要です。

(6)外国人の人権

 外国人に関する課題としては、国際化が急速に進む一方で、外国人の文化、習慣、価値観等の相互理解が不十分であることなどから、就労における差別や入居差別などの問題があります。人権尊重の気運が国際的にも高まる中、在日外国人を含むすべての人の人権が尊重され、その個性と能力を発揮できる豊かな社会を実現することが必要です。

(7)エイズをめぐる問題

 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は感染力が弱く、感染経路も限られていることから、正しい予防知識を身につけていれば日常生活で感染することはないにも関わらず、依然として偏見や差別が存在しています。

(8)ハンセン病をめぐる問題

ハンセン病は、らい菌によって引き起こされる病気ですが、らい菌の感染力は非常に弱く、感染することはきわめてまれです。主に皮膚や末梢神経が侵されますが、現在では、すぐれた治療薬が開発され、確実に治せるようになっています。  
 しかし、病気に対する根強い偏見や差別が、ハンセン病療養所入所者の方の地域社会への復帰を妨げる原因の一つとなっています。

(9)犯罪被害者とその家族の人権

犯罪被害者とその家族は、犯罪行為によって受ける直接的な被害だけでなく、その後の捜査や裁判の過程での精神的負担や時間的・経済的負担、さらにはマスコミの取材・報道によるプライバシー侵害など、いわゆる二次被害を受けており、犯罪被害者への人権侵害として社会問題化しています。

(10)労働者をめぐる問題

 労働に関する問題については、就労における様々な差別、職業や就労形態による差別、本人の適正と能力に基づかない不合理な採用選考による差別のほか、職場におけるセクシュアル・ハラスメントなどの問題があります。

(11)個人情報をめぐる問題

 情報管理上の不備等による個人情報の流出が深刻化するとともに、インターネット上で特定個人を誹謗中傷するといった名誉毀損や私生活に関する事柄を暴露されるといったプライバシー侵害に関わる問題が発生しています。
 また、インターネットを悪用した差別表現の流布などといった問題も発生しています。
 その他にも、野宿生活者、精神障害者、性同一性障害者、アイヌの人々、刑期を終えて出所した人などにかかわるさまざまな人権問題が存在しています。

4.基本理念

 人権尊重の社会を実現するための基本理念として

  • 一人ひとりがかけがえのない存在として尊重される差別のない社会の実現
  • 誰もが個性や能力をいかして自己実現を図ることのできる豊かな人権文化の創造

 を掲げます。

 人権とは、人々が生存と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利です。すべての人は、人間として皆同じ人権を有しており、一人ひとりがかけがえのない存在であるということを認識し、それぞれの個性や価値観、生き方などの違いを認め会い、多様性を尊重することが必要です。
 このため、一人ひとりが自分の権利のみならず他人の権利についても深く理解するとともに、権利の行使に伴う責任を自覚し、人権を相互に尊重し合うことが重要です。
 人権文化の創造とは、すべての人が人権尊重の精神を当然のこととして身につけ、日常生活の中で実践することであり、またそのような生き方を可能にする社会的な環境や条件を整備することです。
 社会の人権文化を豊かにするためには、二つのことが必要です。ひとつは、性別、障害の有無、社会的出身、あるいは人種や民族など、本人が選ぶことの出来ない事柄によって、生き方の可能性が不当に制約される状況をなくしていくことです。もうひとつは、すべての人が自分らしさを輝かせ、さまざまな異なりをもった他者との出会いを通じて世界を広げ、社会参加を実現することによって、新たな社会的活力を創り出すことです。
 従来、人権にかかわる施策は、個別課題ごとに推進され、それぞれに相当の成果が蓄積されてきましたが、それらが他の行政分野で十分に活用されてこなかった面があります。このため、全体としての取り組みに不均衡が生じたり、また、複数の要因が絡み合って発生した複雑な人権問題に対し、ともすれば総合的な視点が欠落し、効果的な対応がなされないといった状況も見られました。
 したがって、人権尊重の社会をつくるために、すべての行政分野において前記の基本理念を踏まえ、総合的な施策の推進につとめていきます。

5.人権施策の基本方向

(1)人権意識の高揚を図るための施策

 市民一人ひとりが、人権の意義や価値についての理解を深め、すべての人の人権を尊重する態度や行動を身につけるための施策を推進します。 
 人権啓発は、家庭・学校・職場・地域などあらゆる場や機会をとらえて、推進する必要があります。そのなかで、人権問題を的確にとらえる感性や人権を重視する姿勢をはぐくむことが重要です。
 このため、人権に関する学習の機会を学校・職場・地域などで一層充実させるとともに、従来の知識習得型の学習から、人権に関する知識が態度や行動に結びつくような実践的な学習へと転換を図ります。
 さらに、人権が尊重される社会の実現に深くかかわる立場にある者が、常に人権尊重の意識や態度をもって、職務の遂行に臨むことが重要であり、市職員に対する人権研修を充実します。

(2)人権擁護に資する施策

  1. 市民の主体的な判断・自己実現の支援
     市民が自立や社会参加を通じて、自己実現を図ることができるよう支援するとともに、人権侵害を受け、または受けるおそれのある人に対して、関係機関と連携して、予防・救済を促進・支援します。
     市民が人権侵害を受けたり、人権侵害につながる問題に直面したときに、解決のための手だてを探し出し、助言や援助などの支援を受けながら主体的に判断して解決していくことができるよう、各種の相談機関や公的支援制度、さらにはNPO等が行っている援助活動など、人権擁護に関するさまざまな支援情報を効果的に提供します。
  2. 人権にかかわる相談窓口の整備
     人権侵害にかかわる問題が生じた場合に、一人で悩むのではなく、市民が身近に解決方策について相談できる窓口が必要です。
     人権にかかわる相談には、複数の要因が複雑に絡み合っているものも少なくないことから、相談窓口では、これらの要因を解きほぐして整理し、解決のための手だてを本人が主体的に選択できるよう、きめ細やかな対応を行います。

6.人権施策の推進にあたって

 以上に提示した、人権尊重の基本理念を基礎に据えた行政施策を展開するとともに、前述の基本方向に沿った人権施策を着実に推進するため、具体的な推進計画を策定します。
 また、社会情勢や価値観の変化に伴い、新たな人権問題が生起するものであり、これに的確に対応するため、必要に応じて、基本方針の見直しを行うこととします。