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神於山・神於寺

記事ID:[[open_page_id]] 更新日:2012年7月3日掲載

 神於山(こうのやま)・神於寺(こうのじ) 

 和泉名所図会(神於寺) くまたくんくまたくん

 和泉名所図会

くまたくん、図書館へ行く

今回は、図書館のアイドル「くまたくん」が、岸和田再発見の旅に出かけることになりました。「くまたくん」は、いつもは1階の児童図書コーナーにいますが、今回は2階に上がって、「岸和田再発見コーナー」へ…。旅先は「神於山・神於寺」です。さて、どんな発見に出会うでしょうか。

 【くまた】 こんにちは。おじゃまします。                                         

《図書館》 やあ、くまたくん。2階に来るなんてめずらしいね。どうしたの。

【くまた】 神於山・神於寺について調べにきたんですけど、参考になる本がありますか。

《図書館》 そうだね。神於寺が建てられた由来については、『岸和田市史』第6巻に「神於寺縁起」という資料の全文が掲載されているけど、くまたくんにはむつかしいかな。

【くまた】 うーん、むつかしくてわからない。

《図書館》 それじゃ、岸和田市が市制70周年記念に発行した『岸和田のむかし話』の中に、玉谷哲さんが書かれた「神於寺縁起絵巻」がある。現代語に訳してあるからわかりやすいよ。

和泉の国の神於寺は天武天皇のご願により役行者(えんのぎょうじゃ)がはじめて開かれた寺である。土地のたたずまいも理にかなった、まことにうるわしい山であった・・・。

【くまた】 これなら少しわかる。絵ものっているしね…。天武天皇という昔の天皇が願われて、役行者という人が建てたお寺なんだね。

《図書館》 683年に建てられたという大変古いお寺なんだよ。この「神於寺縁起」にはいろいろと不思議な出来事が書かれているんだよ。例えば、神於寺ができた時に朝鮮半島から宝勝権現(ほうしょうごんげん)という神様が飛来したと書かれている。今も神於寺境内には宝勝権現を祭る社があるんだ。

 宝勝権現宝勝権現(ほうしょうごんげん)社

  【くまた】 「飛来した」って、飛行機に乗ってきたのかな。

《図書館》 そんなわけないだろ。役行者や神々は山々を自由に飛び回ったと伝えられているんだ。

【くまた】 その役行者って、一体何者なの?そうだ、インターネットで調べたらすぐわかるね。

《図書館》 それも一つの方法だけど、図書館だから本で調べようよ。お手軽に得た知識は身につきにくい。

本で調べると、思ってもなかった新たな発見に出会い、新たな疑問も生まれる。そして、また調べる…。世の中、簡単に答えが見つからないことが多いからね。苦労して調べること自体が勉強だ。それには、図書館は絶好の場だと思うよ。あれっ…図書館の宣伝になってしまった。

【くまた】 わかった。わかったから、とりあえず役行者のことを教えてよ。

《図書館》 役小角(えんのおづぬ)のことだよ。この『歴史と人物でわかる仏教』(田中治郎著 日本文芸社) でも、簡単に紹介しているよ。

役小角は、修験道(しゅげんどう)の開祖とされる伝説的な人物である。役行者。役優婆塞(えんのうばそく)、神変大菩薩(じんぺんだいぼさつ)などとも呼ばれる。修験道とは、古代からあった日本の山岳修行が仏教と習合した宗教である。伝説では、文武天皇のころ、役行者は奈良の葛城山で修行を積んでいたという。そのレベルは尋常ではなく、神通力を使って山々を自由に飛びまわるばかりか、山々の神々をも使役するほどだった。

【くまた】 すごい、スーパーマンみたい。超能力者だね。もう少し詳しいのはないの。

《図書館》 『役行者と修験道の歴史』(宮家準著 吉川弘文館)という本もあるよ。

修験道は、日本古来の山岳信仰が外来の仏教・道教や成立神道の影響のもとに平安時代後期に一つの宗教形態をとるにいたったものである。・・・日本では古来山岳や海上の島などは神霊のすまう他界とされていた。

【くまた】 わかる、わかる。「もののけ姫」でも山の神の住む他界が描かれていた。人間界に征服されようとしていたけどね。図書館でビデオを借りて見たよ。

《図書館》 そうだね。「もののけ姫」の時代設定は多分、室町時代くらいだと思うけどね。この本の次のところも読んでみて。

とくに弥生時代以降水田稲作をいとなむようになると、山の神は水を授けてくれる水分の神とされた。・・・その後、中国や朝鮮半島からの渡来人によって、山岳で修行していて仙人となることをめざす道教や山林修行をした僧侶を尊重する仏教が持ち込まれた。                                                                       里人たちは、こうした山林で修行した選任や修行僧を山の神の力を体得した験力を持つ者として崇拝した。とくに大和の葛城山・吉野・熊野などは仙人や山林修行者の居所とされた。                                                            

 《図書館》 その後、修験者の集団が形成されるようになったようだね。

【くまた】 役小角が、その修験道の開祖というわけか…。実在した人物なの?

《図書館》 791年に完成した「続日本記(しょくにほんぎ)」には、699年5月24日に役小角を伊豆に配流したという記述があるんだ。弟子の韓国連広足(からくにのむらじひろたり)が「小角があやしい言葉で人を惑わしている」と悪口を言いふらしたために流罪になったらしいね。でも、役小角は最澄(天台宗)、空海(真言宗)などのように、特定の教えをもとに宗教をつくった宗祖ではないらしいよ。『役行者と修験道の歴史』のこの部分を読んでみて。

彼はむしろ山林修行者たちによって、自分たちの修行や宗教活動の範とするにふさわしい人物として描かれた宗教者なのである。・・・修験霊山の成立や修験道の成立・展開に対応して、そのときどきの集団や教派が必要とした始祖像が役小角の神話として創作されたのである。

【くまた】 つまり、創られた開祖という訳だね。もっと教えてほしいなあ。

《図書館》 大阪市立美術館が「役行者神変大菩薩1300年遠忌記念」の特別展を開催したときの冊子『役行者と修験道の世界』がある。「神於寺縁起絵巻」が表紙に使われているよ。それも見て自分で調べなきゃね。

それより、神於山・神於寺のことを調べるんだったら、『岸和田の土と草と人』(小垣廣次著)の中にもいろんなことが書いてあるよ。

【くまた】 へー、地形、地質、植生、人文に分けて詳しく書いてあるね。地形や地質は苦手で、よくわからないよ。

《図書館》 だったら、「人文」のところを開いてみて。

古代から私たちの祖先の人々にとっては、神様のおられる山という名前のとおり神様が自分の守っている地域をながめる山というので、別名国見やま(現在国見台という名あるところがある)ともよばれ、・・・山そのものが崇拝の対象となっていた。

《図書館》 神於山は神が於わす山、つまり神様が住まう・こもる山らしい。崇拝の対象になっている山でも、神様が降りてきて鎮座するという山もあるらしいけどね。

【くまた】 なぜ、神於山が崇拝の対象になるのかな。神秘的でかっこいい形をしているからかな。

《図書館》 それは生命の根源である水とも深い関係があるよ。弥生時代になって水稲耕作が始まると、水は必要不可欠なものになるだろ。ここを読んでごらん。

岸和田では、弥生遺跡は加守川・天の川流域に多い。このことは当時の土木技術では、神於山に源を発する春木川・天の川が水田耕作に利用できる唯一の流水であり、そのため、その水の源である神於山は命の水の発するところとして大切にされていたのであろう。                                                             行基が久米田池をつくるにあたり、神於山に登り「池は人倫のいのち、国家の宝なり、願わくば霖雨をそそがし給え」と祈願したといわれている。

【くまた】 なるほど、水の信仰に支えられていたのか。行基や久米田池の話ともつながってきたなあ。

《図書館》 この頃になると、仏教の伝来によって山岳信仰と仏教が結びついてくる。そこで、社寺を設け修行の場にした修験道によってさらに信仰が深められたということかな。

【くまた】 神於寺には、今はお堂が建っているけど、昔はもっと立派なお寺があったのかな。

《図書館》 そうらしいよ。ここを読んでみて。

験者のこもる神於山は朝野の尊崇をあつめ、そこにすばらしい寺院の建立を見た。神於寺は、中世百八坊の大伽羅をほこったといわれている・・・。中世には、多くの傭兵をもち南北朝の動乱期には神於寺をふくめて和泉の寺々は河内に挙兵した楠氏の千早・赤坂とともに南朝の拠点となった。※朝野(ちょうや)… 朝廷と民間。全国。世間。

【くまた】 へー、おどろいたな。その頃のことを想像してみると、楽しくなるなあ。もしかして、弁慶のような僧兵もたくさんいたのかな。

《図書館》 そうかもしれないね。他にも興味深いことが書いてあるよ。

775(宝亀6年)7月14日光人上人入寂  ※入寂(にゅうじゃく)…僧侶が亡くなること                          宝勝権現が新羅の神、神於寺再興が百済の僧、これらの神や僧が住み着いたということは、この地域は外国から渡来した文化人が住みつき文化を開けたところであったのではないか。

光忍上人塚光忍上人塚

【くまた】 そういえば、その頃、朝鮮半島から偉いお坊さんが日本にたくさん来ていたという話を歴史の時間に聞いたことがあるよ。そんな昔から岸和田でも深いつながりがあったのか…。

《図書館》 確かなことはよくわかってないけど、その可能性は充分あるね。そうだ。大事なことがあるよ。先ほど言った「水の信仰」のことだけど、ここを読んでみて。

神於山山麓にある積川神社・意賀美神社は雨乞いの神として崇拝され、平安時代には朝廷より「雨乞い」のために奉幣使が遣わされている。   ※奉幣使(ほうへいし)…神社に祈願するため朝廷から派遣された使者

《図書館》 意賀美神社の境内には雨降の滝と呼ばれる滝があって、そこで祈祷すればどんなにひどい日照りの時でもたちまち雨が降ると信じられているんだ。

【くまた】 その滝なら知ってる。去年の夏、行ったよ。

意賀美神社 雨降の滝意賀美神社 雨降の滝

《図書館》 「神於寺縁起」には、宝勝権現に従って来た竜神が鎮座した東の尾根から、雨が降る時には意賀美神社の方に向かって雲がかかると書かれている。確かに平野部の方から見れば、雨が降る前には神於山に雲がかかるよね。それが昔の人々にはいかにも神様が起こす奇跡のように見えたんだろうね。

【くまた】 ちょっと待って。雨が降る前に雲がかかるのは神於山だけじゃないよ。たとえば葛城山にも雲がかかるけど、葛城山もやっぱり神様がすんでいるのかなあ。

《図書館》 くまたくんは鋭いねえ。葛城山の山頂には八大竜王社という神社があって、昔から雨乞いの神様として信じられてきたんだけど、『泉州の寺社縁起』(岸和田市立郷土資料館)には面白いことが書いてあるよ。

葛城山頂に鎮座する八大竜王社には、空海が雨乞の祈祷をすると竜神が脇浜浦(貝塚市脇浜)に現れ、山頂に移したという伝承がある。

【くまた】 何か、どこかで聞いたような…あっそうだ!「神於寺縁起」で役行者との約束で朝鮮半島から飛んで来た宝勝権現が、鱧崎(貝塚市津田)にまず来て、次に神於山に飛んで来たんだ。

《図書館》 その通り。今日は冴えてるね。竜神が脇浜から葛城山へ移ったという八大竜王社の話と、宝勝権現が鱧崎から神於山へ移ったという「神於寺縁起」の話…。とてもよく似た話だね。

脇浜は近木川の河口にある地名、鱧崎は津田川の河口にある地名だけど、近木川を遡れば葛城山につながり、津田川を遡ればその支流は神於山にたどり着くよ。つまり、神於山も葛城山もどちらも雨を降らせる神様がおられる山として信仰されてきたんだ。山に雲がかかって雨が降り、雨水は川を伝って平野部に下り、最後に海に注ぐ。岸和田の自然が「神於寺縁起」のような話や地域の人々の信仰を生み出してきたとも言えるよ。

【くまた】 何かワクワクしてきたよ。牛滝山や葛城山のことも調べようかな。

《図書館》 興味が湧いてきたことはうれしいけど…。それはまたの機会にして、神於山の自然のことも調べてみたらどうかな。神於山は地域の里山としての役割も果たしてきたんだ。

【くまた】 里山って?…なんか聞いたことあるけど…。

《図書館》 自然資料館へ行って聞いておいでよ。本だけでなく、いろんな所に出かけて、いろんな人から話を聞くのも勉強になるよ。その上で、また本で調べたらどうかな。

【くまた】 そうだね。じゃ、行ってくる。また来るからね。

 

くまたくん、自然資料館へ行く

【くまた】 神於山について調べに来たんですけど…。

《自然資料館》 くまたくん、いらっしゃい。じゃ、2階に上がって。

【くまた】 わー、ワニもいる。神於山のコーナーがあった。意賀美神社の鎮守の森のコーナーもあるんだ…。あのー、神於山は地域の里山って聞いたけど、里山って何ですか。

自然資料館(意賀美神社鎮守の森コーナー)自然資料館(意賀美神社鎮守の森コーナー)

《自然資料館》 里山というのはね、人間の生活と結びついた山や森林のことよ。

昔の人は里山で、燃やすための柴(しば)を刈ったり、落ち葉を拾ったり、家を建てるための木を植えたり、タケノコやキノコなどの食べ物を育てたりしながら里山を大切に守ってきたの。でも、ここ何十年かの間に、全国の里山がどんどん荒れてきてね…。

【くまた】 わかった。人間が入りすぎて荒らしてしまったんだね。

《自然資料館》 全く逆なのよ。みんなの生活が便利になって、山に入って手入れをする人が少なくなったからなの。そうね、『森の新聞11 カケスの森』(中村浩志著 フレーベル館)を見てごらん。里山によくすんでいるカケスという鳥のことを書いた本だけど、里山のことがわかりやすく書いてあるよ。

人間は、生活や農業をいとなむため、カケスは食べものを得るため、それぞれミズナラの森を利用していたのです。・・・人間、カケス、ミズナラは知らず知らずのうちに「もちつ、もたれつ」の関係にあったといえます。・・・「もはや、どんぐりの森は、自分たちの生活に必要なくなった。手入れなど、たいへんなだけだ」人びとがそう思うようになったとき、ミズナラの森はあれはじめました。こまったのはカケスです。

【くまた】 なるほどね。自然を守るためには人間ができるだけ手を入れない方が良いと思っていたけど、間違っていたんだね。

《自然資料館》 そうだね。日本にはいろいろな自然があるんだよ。自然というと、人の手が入っていない原生林のようなものを連想するかもしれないけど、それ以外の自然もあって、そこに生息する生き物もたくさんいるのよ。その続きを読んでごらん。

ドングリの森は、カケスばかりでなく、原生林ではくらせなかった、たくさんの動物や植物がすんでいます。野うさぎやタヌキ、キツネもそう。オオタカやフクロウも、ドングリの森がひろがる里山の生きものです。その種類数は、原生林にすむ生き物の種類数よりも、はるかに多いのです。

くまた

【くまた】 人間は自然を壊してばかりだと思っていたけど、やはり、人間も自然界の一部なんだな。どうやって自然と上手につきあっていくか、よく考えないといけないな…。

《自然資料館》 そう、人間だけじゃ生きていけないものね。いろんな生き物とつながりあっているということをしっかり勉強してほしいわ。本当は、多くの生きものが住みやすい所こそ人間にとっても快適な場所じゃないかな。

人間の世界でも、家族や友人、隣近所やいろんな職業の人たち、そして世界の人々とつながりあっているでしょ。仲良く暮らすには、お互いのことをよく理解しあって、助け合い、気遣い合いながら生活することが大切ね。それと同じように、身近にどんな生きものがいるのか、どのような生活をしているのかを知って、仲良く暮らせる方法を考えてほしいわ。

【くまた】 それが住みよいまちづくりにもつながる訳だ。それじゃ、里山にはどんな生きものがいるの?

《自然資料館》 初めて勉強する人には『里山いきもの図鑑』(今森光彦著 童心社)がおすすめよ。今森さんは、里山という言葉があまり知られていなかったときから、地元滋賀県の里山の美しさを写真で紹介したり、保護する活動をしてきたの。生きものの写真だけでなく、里山の楽しみ方についても紹介しているから参考にしてね。

【くまた】 昆虫や動物を特に知りたい場合は、どんな本を見たらいいの?

《自然資料館》 昆虫なら、新開孝さんの『里山昆虫ガイドブック』(Tbsブリタニカ)に、雑木林や小川・田んぼなど、里山のさまざまな場所で生きている昆虫が紹介されている。

哺乳類を特に知りたいなら、熊谷さとしさんの『日本里山探検隊シリーズ1 哺乳類観察ブック』がおすすめよ。ムササビやリスやシカなど、動物園でしか見られない生きものが、案外身近な里山にいるということが良くわかる。観察方法なども書いているよ。里山の生きものについての図鑑は、まだまだあるけど、どれも、美しい写真や絵がたくさんのっていて、見るだけでも楽しいわよ。

【くまた】 本当、楽しいなあ。だけど、あまりに多くて覚えきれないよ。

《自然資料館》 いきなり覚えるのは無理よ。里山にはいろいろな生きものがいる、ということを知ってもらうだけでうれしいわ。でもね、自然資料館としては、興味をもったら神於山などの身近な里山に行って、いろいろなものを自分の目で見てほしいね。この図鑑に載っているもの全部は見られないけど、岸和田にも、こんな生きものがまだ生きていける里山があるということを肌で知ってもらいたいわ。

岸和田は大阪のなかでは、まだまだ里山が残っている地域なの。和泉葛城山の登山口の塔原町や大沢町、かなり変わってしまっているけど蜻蛉池周辺や流木町周辺も、そういう環境が残っているのよ。でも、岸和田を代表する里山といえば、やはり神於山ね。

【くまた】 じゃあ、神於山にもそんな生きものがいるのかな?

《自然資料館》 全部はいないかもしれないけど、神於山にもいろんな生きものがいるのよ。『神於山やまあそびハンドブック』(環境省近畿地方環境事務所、岸和田市環境保全課)を見てごらん。神於山のことがわかりやすく書いてある。めずらしい生きものや絶滅が心配されている生きものも紹介されているよ。

【くまた】 すごいなあ、「神於山豆知識」の蘭には、植物だけで610種類、昆虫は269種類、鳥類は71種類、両生類・は虫類は12種類いると書いてある。魚類(6種)、哺乳類(5種)もいるのか…。

《自然資料館》 鳥は、オオルリやカワセミなど、大阪府のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されているものもいるのよ。カジカガエルやイシガメ、ニホントカゲなどもいると書いているね。そうだ、みんなが大好きなミヤマクワガタなんかもいるよ。

【くまた】 植物について、詳しく紹介している本はないかな?

《自然資料館》 そうね、『岸和田の土と草と人』(小垣廣次著)には、神於山にはどんな植物があるか、いろいろのっているわ。

【くまた】 図書館で紹介してもらった本だ。かなり詳しく書いてあるね。

《自然資料館》 意賀美神社の森のことも書いてあるわよ。

神社は式内社で、境内の西側には峡谷状の津田川が流れ、さらに、この川に流れ落ちる支谷が境内を横切り豊富な水源があるので林内はたえず湿潤な状態をたもっている。そのため植物の生育もよく岸和田市に於ける代表的な暖帯常緑広葉樹の極相林の様相をそなえている。市は、昭和43年この森を天然記念物として指定している。

【くまた】 天然記念物になっているとは知らなかったなあ。

《自然資料館》 意賀美神社の森は、岸和田の本来の植生も残されている貴重な森なのよ。植物の生育環境に恵まれていたし、神社には人の手が入らなかったからね。

『大阪の理科ものがたり』(大阪府小学校理科教育研究会編)でも「岸和田市土生滝町にある意賀美神社は、その境内が自然の森の形が残されている大変貴重なところである」と、ホルトノキなども紹介している。自然資料館の中の意賀美神社のコーナーもじっくり見てね。

【くまた】 すごいなあ。そういえば、各地の社寺林は大切な自然だと聞いたことがある。

《自然資料館》 少しむつかしい本だけど、『きしわだ自然資料館研究報告』第1号のトップに載っている「岸和田市神於山における林床性シダ植物の種多様度,種組成に影響する要因」(村上健太郎著)も見てごらん。

【くまた】 うへえ、すごーく長い題名!むつかしそうだな。

《自然資料館》 この論文の「結果」のところには、神於山には73種類のシダ植物が見られたと書いてあるよ。どんなシダか知りたい人は、自然資料館で出している図鑑ポスター「身近なシダ植物」で確認してね。

【くまた】 シダ植物が73種類もあるのか…。じゃあ昆虫は?

《自然資料館》 『きしわだ自然資料館研究報告』第3号の、平田慎一郎さんの論文「神於山(大阪府岸和田市)のチョウ類群集」を見てごらん。神於山で46種類のチョウのなかまが確認されたと書いてあるよ。大阪府内で確認されているチョウのなかまが102種類だから、その半分が神於山にいるということになるね。

きしわだ自然友の会が出している機関誌「メランジェ」の通巻8号に掲載されている平田慎一郎さんの「神於山の昆虫」には、チョウ以外にもどんな昆虫が見られるかが書かれているよ。図書館にもあるから、ぜひ見てね。

【くまた】 へえ、すごいなあ!神於山っていろいろないきものがいるんだ!ますます行きたくなっちゃったよ!

《自然資料館》 それはよかった!山に入るときは、『神於山やまあそびハンドブック』にのっている、山のこころえに書いていることをよく守ってね。ちなみに、多くの人が使うコースでも歩きにくい場所があったり、石や岩が多くて転びやすいことがあるんだよ。特に下りはけがをしやすいので、慎重に歩こうね。また、斜面の山道では山側から落石があったり、谷側に滑って落ちる危険性もあるからね。十分に注意して歩こうね。

【くまた】 わかった。十分注意するよ。ありがとう。すっごく勉強になったよ。

 くまたくん、再び図書館へ

【くまた】 楽しかった。いっぱい勉強になったよ。小学生や中学・高校生もこのように自由研究をしたら、いい勉強になると思うなあ。

《図書館》 夏休みになると、そのような子も結構来るよ。でも、夏休みが終わる頃に「先生に岸和田のことを調べなさいって言われたから、何かないですか」と言われると困るんだ。じっくり調べる楽しさも味わってほしいから、早めに来てほしいね。だけど、郷土資料関係は、子ども向けの本が少ないからなあ…。

【くまた】 もっと子ども向けの本が出たらいいね。でも、お父さんやお母さんに読んで教えてもらって、それを子どもなりにまとめるというのも良いと思うよ。

《図書館》 そうだね。それで家族や親子の会話がはずめばいいね。さらに、調べたことを確かめるために、家族そろって自然資料館や神於山のハイキングに行って、新たに発見したことや感想をまとめると、立派な研究報告書ができあがる…。おもしろいかもね。

【くまた】 図書館のことも、もっと知らなきゃいけないな。どんな仕事をしているの?

《図書館》 みんなが利用しやすいように、新しい本や資料を収集・分類・登録・整理して本棚に並べ、貸出している。古くて利用されない本は、書庫に移したり処分したりするけど、大切な資料はきちんと保存しないとね。その見極めも大事だよ。特に岸和田や泉州地域の資料は他の図書館にはないから、郷土資料を収集・分類・保存するのも大事な仕事なんだ。

【くまた】 こうした仕事を通じて市民の人たちの生活や学習を支援し、地域文化の向上や人づくり、まちづくりに貢献しているというわけだね。

《図書館》 「図書館は地域の文化のバロメーター」と言う人もいるんだよ。図書館を見たらその地域の文化の程度がわかるという意味だね。

【くまた】 なるほどね…。ところで、「岸和田再発見コーナー」は、貴重な郷土資料をもっと市民に活用してもらおう、というのも目的の一つだったと聞いているけど…。

《図書館》 郷土資料の貸出冊数は、その前の年より1.6倍以上に増えたんだよ。

【くまた】 うれしいなあ。もっと聞きたいけど、またの機会にするよ。ところで、図書館には本がいっぱい並んでいて、読みたい本が見つからないことがあるけど。教えてくれるのかな。いろいろ聞きたいこともあるけど、忙しそうだし…。仕事のじゃまにならないかなあ。

《図書館》 遠慮せずに聞けばいいよ。レファレンスといって、それも図書館の大事な仕事の一つなんだ。答えられないこともあるけど、それを機会に調べるから職員の人の勉強にもなるんだよ。もちろん、本に書いてある内容まではわからないけど、どのような本がどこに置いてあるのかは教えてくれる。岸和田の図書館になければ、市外の図書館からも取り寄せてくれるよ。

【くまた】 また、岸和田再発見の旅に行きたいな。今度は地場産業のことを調べようかな。

《図書館》 そうだね。岸和田は繊維産業とともに発展してきた町だから、繊維がいいかな。メガネレンズも、かつて岸和田は全国有数の産地だったけど…。

【くまた】 ありがとう。じゃあ、今後もよろしく。