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明治の教育界に足跡を残した土屋弘(つちやひろし)(ミニ岸和田再発見第18弾)

記事ID:[[open_page_id]] 更新日:2015年10月18日掲載

 土屋弘は、天保12年生まれの岸和田藩士、名は弘(ひろし)、字は伯毅(はくき)、号は鳳洲(ほうしゅう)、別号に晩晴楼(ばんせいろう)があります。岸和田藩の藩校講習館で、相馬九方に就いて荻生徂徠の古学を学び、19歳で但馬の池田草庵に就いて朱子学や陽明学を学びます。元治元年(1864年)、海外への渡航を企てますが長州(山口)で外国の艦隊による下関砲撃に遭遇し断念します。のち、師である九方の婿養子となり九方の後を受けて藩校講習館の教授となります。しかし、岸和田藩のお家騒動と幕末の動乱期にあって九方が獄に繋がれ、弘も詮議を受けます。このこともあって土屋姓に戻ります。この頃の顛末は「渦潮の譜(梅谷卓司著)」や「評伝 岡部長職(小川原正道著)」に詳しく書かれています。

 岸和田藩は、明治4年の廃藩置県により岸和田県となりますが、すぐに堺県に編入されます。堺県は大阪の河内・和泉と奈良県を含む広大な県域を持ちましたが明治14年に大阪府に再編されます。維新後は、堺県中属、堺県師範学校長、奈良師範学校長、華族女学校教授、東洋大学教授などを歴任し、教育の振興に尽くします。教育行政に携わるかたわら、堺市戎之町の自宅に晩晴塾(晩晴書院)という私塾を開き、そこで漢籍・詩文、修身を教えました。日本人で初めて鎖国状態のチベットの首都ラサに到達しチベット一切経などの多数の貴重な資料を持ち帰るなどして、チベットとの交流の先鞭をつけた河口慧海(かわぐちえかい)もここで学びました。

  彼の漢詩文はすこぶる多く、出版物の序文や碑文など多岐にわたります。岸和田城の大手門を入った正面にある岸和田城址碑の文章も土屋弘の撰になるものです。それらの詩文を集めた「晩晴楼文鈔(ばんせいろうぶんしょう)」「晩晴楼詩鈔」を始め58巻を著しています。それら著作物も初期は木版・和装本で、活字和装本、さらに洋装版へと変化しています。まさに出版界も明治から大正へと大きな変革期を迎えていた様子が伺えて興味深いものがあります。「文家金丹 (ぶんかきんたん)」を晩晴舎刊として明治13年に、また師である相馬九方の著作「立誠堂詩文存(りっせいどうしぶんそん)を 晩晴書院版として明治18年に刊行しています。「人之基(ひとのもとい)」「書法略解(しょほうりゃっかい)」「人體問答圖解(じんたいもんどうずかい)」など教科書としての著作も多くあります。

 写真はその著作の一部です。多くの墨跡も残されていますが、写真の条幅には、「大正五年一月十四日 詔講尚書於宮中」とあり、宮中の新年の儀式の一つで、天皇はじめ皇族が学者を宮中に召して、御学問所で進講を受ける儀式である講書始(こうしょはじめ)の進講者として参内した頃のものと思われます。

土屋弘著作集の写真         条幅

土屋弘著作など 

乙卯夏期講習会講義略(いつぼうかきこうしゅうかいこうぎりゃく)土屋 弘講/謹講 堺市教育委員会 大正四

運筆法(うんぴつほう)教育 五十川左武郎(いそがわさぶろう)著土屋弘閲 明治十二 一冊 

画用幾何  堺県上等小学課用巻之1(がようきかさかいけんじょうとうしょうがくかよう1) グレイグ著

静間密訳土屋弘閲 明治十二 一冊

邂逅筆語(かいこうひつご)明治十四 文学 一冊

韓非子抄註(かんぴししょうちゅう) 大正六 洋本一冊

漢文教科書備考(かんぶんきょうかしょびこう)教育 秋山四郎(あきやましろう)土屋弘著 明治三十五 五冊

居家必用家之基(きょかひつよういえのもとい)教育 明治八 一冊

近世叢談(きんせいそうだん)漢詩文 土屋弘伯毅著 大正十 一冊

近世大戦紀略(きんせいたいせんきりゃく)戦記 明治三十九 二冊

偶感瑣録(ぐうかんさろく) 随筆 写本 一冊

孝経纂釈(こうきょうさんしゃく) 漢学 明治十六 一冊

皇朝言行録(こうちょうげんこうろく) 伝記 慶応三序<訂正増補・明治十五版> 四冊

皇朝言行録巡黌日記(こうちょうげんこうろくじゅんこうにっき)明治十四 一冊

高等小学作文大全. 後編(こうとうしょうがくさくぶんたいぜん)教育豊田八十代赤松令聞編土屋弘亀山雲平

閲 明治二十四 洋本一冊

純正蒙求箋本(じゅんせいもうぎゅうせんぽん) 別名:評釈純正蒙求箋本(ひょうしゃくじゅんせいもうぎゅうせんぽん)

漢学 藤沢南岳(ふじさわなんがく)著 土屋弘注 明治十六 三冊

科野遊草(しなのあそびぐさ)紀行 明治三十六 一冊

周易輯解(しゅうえきしつかい) 大正四 一冊

書法略解(しょほうりゃっかい)書法 明治九・同十一年刊 二巻二冊

人體問答圖解(じんたいもんどうずかい)教育 土屋弘閲正 生駒東太編輯 明治八 一冊

荘子私纂并講義(そうししさんならびにこうぎ) 鳳州土屋弘著 大正七 洋本一冊

窓灯録(そうとうろく)漢詩 晩晴楼文鈔第2編附載明治三十四

蘇詩選詳解 附詩源(そしせんしょうかい)漢詩 漢文註釈全書第三編 大正六 洋本一冊

〈新訳詳註〉蘇東坡詩選(そとうばしせん)漢詩 付: 蘇子瞻詩序 明治四十四 洋本一冊

〈評註〉唐詩雋(とうししゅん) 明治四十四 洋本一冊

西村泊翁先生年譜 伏見釛之助編刊 松平直亮序 土屋弘「西村泊翁先生伝」明治四十 洋本一冊

日本同人詩選(にほんどうじんしせん) 漢詩 陳曼壽編輯 土屋弘刊 明治十四 四巻四冊

入門一読(にゅうもんいちどく)教育 明治八 一冊

馬関日記 (ばかんにっき) 記録 元治元跋 

晩晴楼文鈔(ばんせいろうぶんしょう) 漢文 明治十五 三巻三冊

晩晴楼文鈔二編 大正二 三冊

晩晴楼文鈔三編 大正六 五巻三冊

晩晴楼詩鈔(ばんせいろうししょう)漢詩 明治十五 二巻二冊

晩晴楼詩鈔 二編 明治四十一 七巻三冊

晩晴楼詩鈔 三編 大正八 四巻一冊

晩晴楼集(ばんせいろうしゅう) 第四編 漢詩文 大正十一 一冊 

晩晴楼集 第五編 漢詩文 大正十一 五巻二冊

人之基(ひとのもとい) 別名:修身人之基(しゅうしんひとのもとい) 教育 明治七 刊本 一冊

〈改正〉人之基字解 全(ひとのもといじかい)教育 鈴木丈夫編輯 土屋弘閲 明治十 一冊

評解唐宋八大家文鈔(ひょうかいとうそうはちたいかぶんしょう) 土屋弘編 

文家金丹(ぶんかきんたん) 漢文 魏禧(ぎき) 著 土屋弘編 晩晴舎刊 明治十三 二巻二冊

文法綱要(ぶんぽうこうよう)国語明治十八 五巻三冊

夢鴎囈語(むおうげいご)漢詩 葉煒(しょうい) 著藤沢南岳(ふじさわなんがく)土屋弘評 明治十四 一冊

幽囚録(ゆうしゅうろく)晩晴楼集第四集附載幽囚録【複】〔活〕泉州史料 岸和田実業新聞社 第十巻大正四

立誠堂詩文存(りっせいどうしぶんそん)相馬逸老(肇) 著晩晴書院版(土屋弘刊)明治十八【複】印影本 

相馬九方 附立誠堂詩文存 昭和五十三 アートビジネスセンター刊